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仮名と和歌

書道教室に通っていた高校生の頃、小筆で仮名文字を書くようになりました。
最初は、暑中お見舞い申し上げます、といったあいさつ文から。
そして短冊に、古池や 蛙飛びこむ 水の音、といった俳句。
次第に、変体仮名の一覧を見ながら、和歌を書くように。

変体仮名は、「あ」を阿、安、亜などをくずして用いられ、和歌の文脈や前後の文字にあった字を選びます。仮名書道では、変体仮名まじりの和歌を、色紙や短冊にちらして作品にします。
春やくる 人やとふもとも 待たれけり けさ山里の 雪をながめて
赤染衛門~後拾遺集

赤染衛門 春や来る

書道の昇段試験では、古今和歌集高野切や和漢朗詠集の中から課題が出ることも多く、和歌や変体仮名交じりの文献に触れる機会が増えました。

音の勉強をしていた時、和歌を詠む「披講」と出会います。
年初、今でも毎年宮中で行われている「歌会始め」。選ばれた和歌を、節をつけて歌い、披露する作法。
私が1年ほど学んだ星と森披講学習会では、読師という進行役に従い、和歌が書かれた懐紙を、まず講師が読み上げ、発声が一人、初句を歌い上げ、続いて講頌が皆で第二句から合唱します。
一度参加させていただいた歌会では、テーマに沿って、まずお茶席があり、庭園に出て和歌を作り、短冊に書き、講評があり、選ばれた和歌を懐紙に書いて、みんなで披講する。そして直会でお食事という流れでした。
書をやっていると、和歌を筆で書くことはあっても、お手本としてしかみておらず、短歌も作ったことがなく、歌い方があることも知りませんでした。自分が作り書いた和歌を、みんなに歌ってもらえることはとても嬉しく、参加した人とも近しい気持ちになれる貴重な体験でした。

歌会には、茶道、華道、書道、着物、掛け軸、懐石料理、和菓子と、日本文化のすべてが詰まっています。
歌会では、テーマに沿った趣向があり、和歌を作るだけでなくお茶菓子やお花、掛け軸、お料理、着物の柄やすべてに凝られていました。
書道も筆で文字を書くことだけが切り離されてしまっていますが、書いた作品を和歌として歌う、表装して床の間に飾る、その前に活けられた花があり、踊りがあり、歌があり、音楽があり、お料理がある、総合芸術の一部なのだと改めて感じました。

披講では、句の最後を長く伸ばすので、母音の発音が特徴的です。
発声の音に合わせて、和して歌うことは、母音の音が交じり合い、ハーモニーが心地よく感じられます。そして、歌に込められた思いを共有でき、テレビもネットもない時代に、遠くまで伝える力があったようです。

仮名書の専門店には、色も紙も柄も様々な短冊や色紙がたくさんあり、いつもあれこれ買ってしまいます。
気軽な和紙はがきに、オリジナルの和歌をしたため、やりとりするのも、平安時代にタイムスリップしたみたいで素敵かもしれません。

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