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わたし

坂東眞砂子さんの著者近影を眺めた。高知生まれ、イタリアに行ってる。直木賞を初め数々の賞をとっている。「わたし」を読む前に、「鬼に食われた女」を読んだ。描写が凄い。一気に惹き込まれる。鬼になるということはどういうことなのか?を考え始めた……。
「狗神」を探したが、図書館の本棚には置いてなかった。他のタイトルをみてみるが、あまり興味がない。唯一、「わたし」は読もうと思った。自叙伝に間違いないから。
家に帰って読む気はなかった。図書館の椅子とテーブルで読み始めた。高校時代、生まれた頃の話、家族の話。イタリアでの恋人との会話。卓越した洞察力で自分を描写している。何故、こんな自分なのかは、掘り下げない。淡々と客観的に書いていく。
坂東さんの書き方は、曖昧さがない。
母は死んだ。祖母は死んだ。みーこが、私の母になった。
若干ひとりごちな感じもするが、もっと、母に歩み寄って関係を深めてもいんじゃないかと思うが、坂東さんはひたすらひとりになりたがっている。それもわかるといえばわかる。自分の世界を構築するためには、ひつようなことだ。
坂東さんが母のように思っていた、祖母との話は、私自身の母との関係を思い出させた。私はまだそのことを理解していない。坂東さんのようには言葉にできていない。私が思う、私と母の関係を。
この、「わたし」を、執筆中、坂東さんの祖母が、夢にでてきたそうだ。若い姿で元気そうだったと、それを読んで私は嬉しく思った。
坂東さんの本をこの先、あと一冊くらいは、読もうと思う。あまりにも勇気がいるから。人間の悪を容赦なく書くから。でも、祖母の話がたくさん書かれていたこととか、どこまでも自分を客観視できるところとか、近い未来、坂東さんの世界にも明るい、私が望むような世界が見出されるかもしれない。まずは、「狗神」か、坂東さんの最新作を読んでみよう。

追記 坂東さんが55歳で亡くなっていることを後で知った。ご冥福をお祈りしたい。私は見出そうと思う。これから、坂東さんの本をこの先読もうと思う。坂東さんにしか描けなかった世界がある。それをのぞいてみたい。

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