遠くから見れば、大抵のものは綺麗に見える。
村上春樹の描く登場人物は、
なんというのだろうか、浮遊していると思う。
日常と素敵な具合で、ほどよく乖離していて、
柔らかな喪失感と、
しんとした鉛のような孤独を抱え、
なんとなく生きている。
別に、日々の暮らしに不満があるわけでもない。
収入もそこそこあるし、
自分を愛してくれる女だっている。
夜の営みだって、きちんとしている。
だけれど、
いっつも自我を探している。
雑踏の中、
自分だけ時が止まり、取り残されたみたいに。
わたしが村上春樹の描く主人公に、ある種のシンパシーを感じるのは、たぶんそういう理由からだろう。
客観的、とよく言われる。
嬉しくもあり、悲しくもある。
いつ誰といても、
どんな楽しいことをしていようとも、
心の中にはもう1人の自分がいて、こう言うんだ、
「おいオマエ、今楽しんでるんだな。」
いつも、遠くから眺めている。
自分、そして他人との関わりを。
もう少し一般的に言うならば、
物思いに耽っている、
という言い方がわかりやすいかもしれない。
だから、
すきになる人はいつも、
きまって思慮深い人だ。
物静かで、柔らかくて、
人知れぬ孤独を抱えていて、
それでいて
芯のある人。
秋がすきだと
もっといい。
オレンジ色のあかりが灯ったキャンドルみたいに、とっても素敵だ。
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