はやく30歳になりたい
はやく30歳になりたい。
こう言うと、大抵の人は驚き、「女性なら、音楽をするなら、若い方が良くない?」「年齢を重ねるの怖くない?」と、聞く。
何者にもなれないのなら、ずっと子どものままでいたいと思うこともある。
でも、はやく30歳になりたい。
信頼する人に「今も可愛いけど、30歳になったらもっと可愛くなってると思う」と言われたことの、答え合わせをしたい。
忘れないよう、ゾロ目を見る度に思い出すようにしている人のことを、30歳の私は覚えているのか知りたい。
20歳の私を振り返ると、23歳の今の私がとっても豊かなこと、20歳の私も幸せだったことが、よく分かる。
20歳の私には、「自分の全力の範囲で幸せにする」と言った彼の言葉の、本当の意味が分からなかった。
私の理想に当てはめて解釈するしか、受け取る方法がなかった。
でも、今の私には、社会に出て音楽を続けて、仲間や家族を大切にして、成長の為に勉強を欠かさずにして、その上で私を幸せにしようとしていた彼の大きさが、やっと分かる。
20本のバラの花束の、本当の大きさや重みが、今になってやっと分かる。
そして、あの頃に戻りたいと思わなくなるくらい、気持ちや価値観や環境を良い方へ進められる力を、私が持っていることを、認めることができる。
30歳になって、20代のすべてが豊かであったと理解したい。
全うに傷付き、5年近くの月日を経てご褒美のような日々を手に入れている彼女。
日に日に美しくなり、コンプレックスを受け入れ、深く愛され深く愛すことを音楽でも日常でも叶えている彼女。
執着を手放し、拘りを強め、飾らぬ姿が沢山の人に良い影響を与えている彼女。
私の憧れる彼女たちは、30歳を目前にしている。
彼女たちのようになれるのなら、何も怖くない。
内省をして、自分の成長を見つけることが好きな私は、彼女たちのようになれると思う。
彼女たちのようになれなかったとしても、間違いなく、今よりも好きな私になれていると思う。
はやく30歳になりたい。
正直、内省に疲れてしまっている節がある。
自分の直すべきところと向き合うことも、聡明さを探すことも、好きだし、癖だし、私の良さでもあるけれど、本当はもっと、何も考えずにそのまま生きていたい。
内省のきっかけになる出来事や作品を、夜中のうちにインストールして、朝になれば内省後の私にアップデートされているような、そんなシステムがあればいいとまで思う。
ひとつひとつに向き合って、それを糧にするのは、疲れる。
もう十分、傷付いて、自分を嫌いになって、許した。
同じ場所に居続けない為に、自分を好きになる努力をした。
誇れる自分になる為に、磨く方法を探した。
まだまだ未熟だけれど、内省ばかりを重ねるのはもう十分だと、思ってしまう。
目の前の人や出来事に対して、流さず抱えて考える性格だからこそ、出会えた人がいて、見ることができた景色がある。
それを理解した上で、この性格を恨むことがある。
流すことができないなら、時間を飛ばしてしまいたい。
矛盾するけれど、内省をし続けた先の30歳の私へ、タイムスリップしたい。
はやく30歳になりたい。
もしかしたら、ご褒美のような日々が欲しいだけなのかもしれない。
今の私の生き方が、誰かの憧れる姿だとしたら、あと3年くらいは頑張ろうかな。
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