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ご縁を大切にすることについて「月曜日の抹茶カフェ」を読んで考えた4月

青山美智子さんの連作短編が大好き。

今回、手にした「月曜日の抹茶カフェ」
以前読んだ「木曜日にはココアを」の続編。

4月は時間の余裕と、心の余裕がなく、ほぼ読書をすることができなかった。それでも、唯一この小説をバッグに忍ばせて、持ち歩くだけ持ち歩いていた。

お花見で日向ぼっこしながら、少しだけ読んでみたり。朝のほんの少しのスキマ時間に読み進めてみたり。

新年度の癒しの一つとなった1冊。

青山美智子さんの作品は、どれも「人と人との繋がり」について大切に書かれているが、今回読んだ「月曜日の抹茶カフェ」では、その中でも直接的に人との「縁」について書かれている気がした。

新生活がスタートして、出逢いの季節である4月。もう一度、婚活をスタートさせたこのタイミングで読めてよかったなあと感じる。人との「ご縁」についてあらためて考えるきっかけをもらった。

マッチングアプリやSNSなど、人と気軽に出会い、繋がれるようになった一方で、「ブロック」して簡単にその繋がりを切ることもできる現代。この本を読んで、あらためて、自分の足元を見つめて、今ある「人との繋がり」やこれから生まれるかもしれない「ご縁」を大切に育てていきたいな、と思った。

ここからは、自分への忘備録として。
印象に残った言葉たちを書き留めておきたい。

「人でも物でも、一度でも出会ったらご縁があったってことだ。縁っていうのはさ、種みたいなもんなんだよ。小さくても地味でも、育っていくとあでやかな花が咲いたりうまい実がなったりするんだ。種の時は想像もつかないような」

p.16
1 月曜日の抹茶カフェ

また会いたいって思うなら、そうなるように行動すればいい。ここに来られた私はきっとご縁の種を受け取ったのだ。育てられるよう、がんばってみればいい。

p.27
1 月曜日の抹茶カフェ 

「縁って、実はとても脆弱なものだと思うんです。どちらかが一度でもぞんざいな扱いをしたら、あっけなくちぎれてしまうぐらいに。ひとつひとつ交わす言葉や、わずかでも顔を合わせる時間や、相手へのその都度の思いやりや…丹誠込めて手をかけて、続いていくものなんですよ。こんなに遠く離れた、国籍や母国語の違う私たちを長い間繋げてくれているのは、この一枚一枚の膨大な積み重ねなんだと思います。」
「その人に対してちゃんと誇れる自分でいたらまた会えるって、私は信じています。」

p.215・216
12 吉日

もともと「一期一会」や「縁は努力」という言葉が好きで、自分の大切な人たちには誠実でありたいと思っているし、友情関係でも恋愛関係でも、関係を続けていくためには、お互いの思いやりや気遣いなど、一定の努力が必要だと思っている。

今回、この小説を読んで、あらためて人と人とのご縁の尊さや、ご縁の「種」を「どのように育てていくか」の大切に気づかされた。また、青山さんの優しいところは、「一度きりのご縁」や「繋がらなかったご縁」についても、ちゃんと言及してくれる、まるごと肯定してくれているところ。

「でも、せっかく出会っても一回きりで、育たないで終わっちゃうことだってあるじゃないですか」
「それは縁がなかったんじゃなくて、一回会えたっていう縁なんだ。ひまわりの種を食べるみたいにね。それはちゃんと身になってるし、食べたっていう経験が何かしらの形で次に繋がるかもしれないだろ」

p.161 月曜日の抹茶カフェ

ここ数年を振り返ると、失恋や婚活しても上手くいかなかった過去の相手、なんだか心の距離ができて連絡しづらくなってしまった友人関係が頭をよぎる。その出会いも、ちゃんと今の自分を作っていて、次に繋がっているのだと、慰められた気持ちになった。

わたしは人と真っ正面から向き合いすぎるというか、その人の趣味や話していたこと、物事に対する考え方、一緒に行った場所などを事細かに自分にインストールしてしまう性分で。ふとした時に過去のあれこれを思い出してしまうことがよくある。未練はないのに、未練がましくて、そんな自分が嫌だなと思っていたけれど、そういう一つ一つも今の自分を作ってくれている「ご縁」だったということなのかな、と。少し自分のことを、過去を、肯定できた。

これまでの縁を認めて、肯定して、感謝することも「縁を大切にする」ってことなのかなと。新しい見方ができるようになった。

「そうなんだよ、でも確実にいるんだ。さかのぼっていくと、繋がっている手がどこまでも無数に増えていくんだ。どの手がひとつでも離れていたら、ここにはたどりつけていなかった。どんな出会いも、顔もわからない人たちが脈々と繋いできた手と手の先なんだよ」

「でも一番素晴らしいのは、遠いところで手を繋いできた人たちが、自分がどこかで誰かを幸せにしてるかもしれないなんてまったくわかってないことだね。それがいいんだ。自分の身の回りのことに取り組んだ産物が、あずかり知らぬ他人を動かしたってことが」

p.182
10 カンガルーが待ってる

目の前の「縁」が、自分にとって、誰かにとって、今後どのように繋がっていくかなんてわからない。でも、きっと、自分の身の回りの縁を大切にしていった先に、また素敵な縁が繋がっていくと思うし、その先には、自分が予想もしていない広がりが生まれていくんじゃないかな。そう思うと「今」や「未来」に希望が持てる。

もうすぐ4月が終わる。
新年度、新たに生じたご縁もたくさんある。

引き続き、日々を大切に、ご縁を大切に生活していこう。そして、いつかどこかで素敵な花が咲いたり、美味しい実がなったりすることを願って。

「月曜日の抹茶カフェ」

疲れた心に優しく染みわたる、
まさに、上品な甘さの和菓子とお抹茶のような
1冊でした。

久しぶりの読書記録note
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

おしまい。

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