ここはあたしの城 『ポニイテイル』★18★

「で、リンリンはあそこでいったい何を見てるんだ? ええと、リンリンのブースは……Fの4? あのー、これ押せばいいんですか?」

「そう、そこをタッチして」

1番左のモニタに風の作業している映像が映し出された。

鈴原風がいるのは、ピンク色の壁紙にうすい水色のラインがぐるりと取り巻いたお菓子の箱のようなブースだ。

あめ色のグローブみたいな形のソファが中央にどっかり置かれている。


「もしかして部屋の色も選べちゃう?」

「もちろん。デスクトップの壁紙を変える感覚で壁に表示させる。イスやソファは倉庫にあるものからアナログに選んでもらう形だけど、迷い出したらキリがないくらい数は多いね」

「あのソファはふうちゃんが選んだの? グローブみたいだけど」

「大きな野球グローブソファ。あれは真っ先に部屋に入れた家具」

「センス無っ! あは! マカムラッチ見て! ふうちゃん!」


マカムラは長い眠りから覚めた少年のように、眼をごしごしとこすり、寝ぼけたような顔で画面をのぞいた。

「ん? 何してんだ」

「隕石ハンタを検索している! ぷぷぷ。かーいい。ウチの言葉はスルーしても、マカムラッチの言うことならちゃんと聞くんだ。ん?かーいいじゃなくて、ここはムカつくとこ?」

「オレの言ったこと?」

「ほら、さっきガケのとこで、家に帰ったら隕石ハンタ検索してみろって。あ、なんだ、次はユニコーン? ユニコーン、角、金色、本物。ぷぷっ! ウケるんだけど! そんなの入力しなくても一瞬で分かるじゃんねー。ホンモノだって」

「ホンモノって?」

「これです。花園あど、見事、12歳のバースデーにユニコーンの角を発見したであります!」

あどは冒険から帰還した騎士のようにレエへ敬礼する。

「ちょっと待て、発見したのはオレだろ」

黒いレエは金の棒を手に取る。

「わあ! すごい! どこで?」

「タクラマカン砂漠で」

「ウイグルの?」

「うそうそ、学校の近くのハゲ山のガケです」

「すごい!」

「いいでしょ!」

「うん! でもね、あたしも昔ひろったことあるよ」

「うほっ! レエさんも? ユニコーンの角ってそんなあちこちに落ちてるの? 知らなかった!」

「あ、ちがう。あたしのときは角じゃなくてね――」

「あの、ちょっと、レエさん!」

マカムラが思い出話を遮った。

「オレ、そんなことより、ココに行きたいです」

「こらマッキー! そんなこととか!」

マカムラはタブレットの館内地図を勝手に閲覧している。

「この、宇宙船のコックピットみたいなとこも、ブースですか?」

「宇宙船? ああ、J1ね。やっぱりそこがツボか」

「ええと、もしこのブース空いてれば……しばらくオレに貸してくれませんか?」

「J1を借りたいの?」

「はい。オレ、今、調べたいことがメチャクチャあるんです」

「そんなら学校の図書室行きなよ」

「あんなショボいとこに、オレの欲しい情報はない」

「あい?! キサマ! オルフェさまの聖地を!」

「うーん、ちょっと……借りるのはムリかな」

「そうそう。あんた、50万円も払えないでしょ」

真神村流輝は目にかかったボサボサの髪を掻き上げる。

「だからね、これはええと、タダで貸してもらえるかって話」

「なぬ!」

あどは目をひと回り大きくした。

「レエさん、ホントにもう、すみません。ウチの助手、ちょっと暴走中……たぶん、キレイな人に慣れてないんです」

「そうなんです。キレイな人に慣れてないんです。だからしばらくここに通って、少しずつ慣れたいかなーなんて」

レエは彫刻のように表情を動かさないまま、平板な口調で答えた。

「ごめんね。その部屋は、すでに予約が入っているから」

そうですか、とマカムラは穏やかにつぶやいた。

「オレ、ガキだから会社とか組織のことよくわからないですけど……非常口が開きっぱなしになっていて、子どもたちが勝手に入ってきちゃったことが偉い人たちにバレたら、もしかしてレエさん、困ることになりますか?」

「え?」

「さっきの殺すとか殺さないとかって冗談がこじれちゃったら、ヘビとかクビとかって話も出てきます?」

「は? 何それ?」

ハムスタがやせパンダの暴言にすばやく反応する。

「あんたアタマおかしい。レエさんをおどしてるの?」

「いいよおかしくて。オレ、メッチャ調べたいことがあんだよ。こんなチャンスないだろ」

レエはふうっ、と小さく息をついた。

「あのね、マカムラくんの言う偉い人たちって、たとえば、誰?」

「誰って、ここの、なんていうのかな、偉い人たち。その人たちに今日のことバレるとレエさん、おこられるでしょ? 会員制の建物に、無断でガキを入れて殺すリストとか言って。ヘタしたら……」

「いいえ、この建物で起きる一切のことは――」

レエは右手の人さし指をユニコーンの角のようにピンと立てた。

「あたしがすべてを決めていいの。鈴原社長も口を出せない」

「え?」

「だって、レエさんは管理人じゃ――」

「管理人? こんなドレスの管理人がいて?」

「てことは、レエさんが、ここの、何ていうか館長?」

「あたしは――」

レエは月の光にニヤリと笑う、ドラキュラのような表情で言った。

「ここの城主」

「ジョウシュ?」

「ここはあたしの城。ティフォージュ城」

「ティフォージュ城! かっこいい名前ですね!」

「フッ、そうかしら?」

レエは無機質に応じた。

「え?」

「城主だから誰に命令されるまでもなく、ネズミ以外の死体を増やしても、油断した子どもの死体をもう1つ2つ増やしてもいいわけ。ここティフォージュには、誰もあたしをとがめる者はいない――はい、これ、誕生日プレゼント」

レエは、やわらかいものをマッキーの手に握らせた。

「コレはおもちゃじゃない。正真正銘、ドブネズミのしっぽ」

「うわあああああ!」

「さっきナメた口きいたよね、ふふふ。さよなら。死んでもらうね」


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ポニイのテイル★18★みんなのフォトギャラリー

みんなのフォトギャラリー

やってないことにチャレンジしようということで、今回のタイトルの写真は、noteの機能の一つである『みんなのフォトギャラリー』から選びました。

どれを選んだらよいかかなり迷い、結果、好みのタイプの『幽霊』をチョイス。Tome館長というお名前も、今回の章の内容との重なりを感じました。Tome館長、本当にありがとうございました。

1章前にもどる

1章前にもどるリンクを貼ることにしました。手作業なので、かつてのものは一気に全部は手直しできませんが・・・少しずつ。

ビューの数のバランスから推測・判断すると、そのときそのとき、タイムラインにあった章をちらっと見る、という人が多いように感じます。もちろん連載なので、物語としては、その章、その章で完結しているわけではないのですが、写真やイラストが1枚1枚見られるように、『1章単位で読まれている』ことを強く意識して、編集しようと思いました。ときどき、真ん中あたりから立ち読みを始めて、前のページ→その前のページと逆に読み進めてしまうときってあります。noteにすでにある『こちらもおすすめ』でランダムさ(パラパラめくる感)は出ているので、1章前と次の章、そして先頭に戻るを手作業で設えておくことにしました。

先入観を捨てよう

通読された方がつまんで読まれるより嬉しい

という先入観を捨てて、1章1章・・・あ、ここでうっかり、一章懸命という言ってはいけないあっちのジョークを思いついてしまいましたが、とにかく1章単位で読まれていることを踏まえ、そこでエンターテイメントとして成立するように編集することにしました。

このnoteは書籍じゃないのだから、ひとまず一章懸命にやって、みんなのフォトギャラリーのように並べる。1章だけのテイクアウト、バイキング形式のような作品。となると、この編集後記ポニイのテイルの位置づけ、見せ方、文字数なども、シフトチェンジしなくてはいけないと理解しました。

新しいマガジンを始める

新しいマガジンを始めました。『つくる、つながる、即とどける』です。

2018年2月14日現在、3作入っています。(0)チャーハンの話『北京亭のチャーハン』

2作目が広島の話

3作目がリンクの話です。

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ありがとうございました!

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『ポニイテイル』★11~20★