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『反抗期はあって当たり前?――反発力は加えた分しかもらえない』学ビ舎いろはに019

こんにちは。藍澤誠/Jの先生です。

先日、中学生の子どもを持つお母さんから「息子が反抗期でぜんぜん話にならない」という相談を受けたので、その子に会って授業をしたのですが、「反抗期のかけらもない」ほど素直で笑顔で楽しんで話をしてくれました。

世の中では「反抗期は避けられないもの」と考えているようですが、私が2000年から塾をやってきて、生徒が反抗期で困ったという経験は1度もないです。

それは小さな塾という特殊な空間、子どもたちが協力的であること、そして私が「学校の先生でもなく、友達でもなく、親でもなく」という「ちょうどいいポジション」にいるからかもしれませんが、私自身が「反抗期があって当たり前」という概念を持っていないのも大きいのかもしれません。

先日、陸上のハードルについて詳しく解説しているYouTubeの動画を見ていたのですが、解説している人が「地面からの反発力をうまくもらおうとみなさん言いますが、反発力は加えた分しかもらえないですよね?」というすごく当たり前のことを視聴者に問いかけていて、「それはそうだけど、たしかに忘れがち!」と妙に納得しました。

「うまくもらう」もなにも、「反発をもらいそこねることはない」のであって、どうやっても加えた分が正しく返ってきます。となると地面にどの方向から、いかに強く力を加えるか、がカギとなってきます

子どもとの関係も同じように、力を加えたらそれと同じだけの反作用があると思えば整理されると思います。子どもに強く矢印を向ければ向けるほど、自分に対して矢印が返ってくる。不快な力を加えれば、不快な力が同じだけ返ってくる。これが反抗の原理だと思います。反抗期という期間限定ではないと思いますが、もし反抗期というものがあるとするなら、反発力が生まれやすい状態になっている時期なのかもしれません。

その観点でいうと、私は生徒たちに対して直接矢印を向けることはあまりないと思います。もしかしたらそれが「反抗」を生まないコツなのかもしれません。押していないんだから、反発しようがないですものね。

ただ、反抗を避けるのが目的で矢印を子どもたちに向けないわけではありません

たとえば冒頭の男の子を例にとります。彼とは「美術の課題」を一緒にやりました。和風のイメージを商品の形にして、アイデアスケッチを2パターン作ってくるというものです。夏休みの宿題が手つかずのまま残っていて、提出1日前です。

「どうして宿題をためていたの?」
「もっと早くやればいいのに!」
「は? 宿題もう終わったって言ったよね?」
「美術の成績は受験の内申に影響するんだからね。わかってるの?」
「もう、なんでもいいから適当に描けばいいのに」
「今日はゲームやらないで、終わるまで外出ちゃダメだからね」

この世界の物理法則として、中3男子にこうした言葉を投げかけて反発が生まれない方が不思議な気がします。

ではどう対応したか。
私はペン皿からデッサンに使う鉛筆を選んでもらいました。

鉛筆は黒炭そのもののような柔らかい12Bから、鉛筆削りで削るのすら困難な固さの10Hまであります。本人にとっては初めての経験だったようで、その描いた感触に驚いていました。

そしてテーマである「和菓子」について思い出話をしたり、モチーフにする場所について、お互い知っていることを持ち寄ってイメージを共有しながら、二人の仲を深めていきました。

矢印は「宿題をやっていない少年」ではなく、「作品そのもの」や「作品を作る工程」に向けます。そうするとそこからたくさんの情報が引き出されます。

文字を書くことが課題の条件に入っていたので、フォントはこの本から選んでもらいました。世の中にたくさんのフォントがあるということも、少年にとっては新鮮だったようです。

作品そのものの画像はここには上げられませんが、「すごく楽しかった!」と本人は喜んでいました。私は「宿題が終わるとか、成績が高校につながるからとかどうでもよくて、やっている間の、いろいろ思いを巡らすことがアートだし、描き終えた後に、世界の見え方が変わるのがアートだと思うよ」と伝えました。彼自身に矢印を向けて「こう考えた方がいい」というのではなく、私の「アートに対する矢印」(見解)を伝えました

今後少年が、飾られた文字を見るとき、商品の包装を見るとき、街を歩いているとき、目にしたものが今回の経験と相まって素敵に映ったら私も嬉しいですし、そこに価値を感じています。

という流れにおいては、「反抗する機会」も「反抗する余地」もないですよね。みんな楽しく、できれば一人ではなく複数人で学ぼうよ、と思いますし、この世の中の子どもたちが、こうした学びの姿勢ではなく、ただ怒られたからやる、課題だからやる、という形で膨大な時間を過ごすのはすごく悲しいしアートでないと藍澤誠/Jの先生は思うのでした。


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