それだけで、よかったんだ(音楽のある風景/haruka nakamura)

あのね。
あなたに、言いたかったことがあるんだ。
ずっとずっと、言えなかったんだけど。
聴いて、くれる?
どうか、笑わないでね。



僕はね。
あなたがいてくれて、よかったと思っている。
あなたがいなければ、こんなことをしていなかっただろうから。


あ、
「こんなこと」っていうのは、こうして僕が喋っていることね。


いつもはだんまりしている僕だけど、
ここではちょっとだけお喋りになるんだ。


だけど、
一人で喋っていると、時々寂しくなるんだ。
「このことばは、誰にも届いていないんだ」って。


でも、
本当はそんなことないんだよね。


僕は、わかっている。
あなたが、これを見てくれていることを。
このことばは、ちゃんと届いていること。
僕はそれを忘れちゃうときがあるけど、
だからこそ、思い出したときはすごくうれしいんだ。


僕はよく、「僕なんか、僕なんか」なんて言っている。
でもね。
あなたには、「僕なんか」「私なんか」なんて言ってほしくないんだ。


わがままだって、思うかな。
それでもいいよ。これは、僕のエゴだから。


僕は僕のために、あなたに笑っていてほしい。
僕は僕のために、あなたに泣いてほしくない。
(あ、とびっきりうれしかったときは別だよ。)


……うん。
僕は、あなたのことを何も知らないよ。


あなたがどんな人なのか、
あなたがどんな気持ちでいるのか、
僕には、知りようがないからね。


あなたは、
僕を嫌っている人なのかもしれない。
僕が嫌っている人なのかもしれない。
でも、そんなのどうだっていいんだ。


ここにいるのは、僕。
そして、あなた。


それだけ。
それだけなんだよ。


ここには、嫌いとか、厭うとか、そんなものは無い。
あなたが怖がるものは、あなたを怖がるものは、何も無いんだよ。
だから、安心してほしい。
もしも、あなたが不安な気持ちでいるのなら。


ああ、そうだ。
あなたに言いたかったこと、まだあるよ。


それはね。
あなたに、これからも生きていてほしいってこと。


たとえ、あなたがもうここには来なくても。
どこかで、笑っていてくれれば。
どこかで、幸せでいてくれれば。
それを思い出す度、僕は幸せになれる。


……うん。
言いたかったことは、全部言えたかな。


じゃあ、最後に1つだけ。


まず、目をつぶって。
あ、そんなにぎゅーっとつぶらなくていいよ。
……うんうん。じゃあ、ちょっと後ろから……。
……あはは、「だーれだ」じゃないよ。
あと少し待ってね、あと少し……。


……。
……。
……うん、そろそろいいかな。
目、開けて。


ほら、見て。
世界が、変わるよ。


Live at Arumakan - AMC Vol.9 - haruka nakamura"音楽のある風景 アルマカンver."(2017年)

10/2更新

音楽のある風景(「twilight(Reissue)」収録)/haruka nakamura(2013年)

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