6/28

5:26起床。

天気は曇り。
生ぬるい空気が、僕の肺を侵す。

夢。
現。
そこにあるのは。

初めてだったかもしれない。
死んだ人が、夢に出てきたのは。

彼と知り合ったのは、
僕が学生だったとき。

同じ学部の、
同じ学科の、
同じ研究室の、
同じ年に入学した、
ただ、それだけの関係。

1つだけ、覚えていることがある。

僕は、
あまり人気のない食堂で、
(まだ12時になっていなかった)
6人がけのテーブルに1人で座り、
当時の友人たちを待ちぼうけていた。

だから、かはわからないけど、
彼は、突然やって来た。

携帯をいじっていた僕は、
顔を上げ、また下げたくなった。

だれだ。

〇〇さんだよね?
はあ。まあ、はい。
こんなとこで、何してんの?
何って……友達待ってんだよ。
ふーん。ところでさ、連絡先交換しない?
連絡先……まあ、いいけど。

というわけで僕は、
今後一切使う機会のない、
メールアドレスを入手したのだった。

彼と口をきいたのは、
後にも先にも、それだけだった。

それから何か月も過ぎた、
真夏の、ある日のこと。

僕は、
ある講義に出席していた。
10人にも満たない、
少人数制の講義だった。

だから、だろう。
教室に入ってきた講師が、
重い空気をまとっていたことに、
全員、すぐに気が付いた。

「今日は、皆さんにお知らせがあります」

講師は、
まさに沈痛の面持ちをしていた。

「――君が、昨日お亡くなりになりました」

その瞬間、
教室中に漂っていた空気が、
全て床の上に沈んでいった。

同じ年の、
同じ教室で講義を受けていた同期の、
突然の訃報に、
誰もが、ただ閉口するしかなかった。

風の噂によれば、
その日の夜は、
熱帯夜だったにも関わらず、
彼はエアコンも何も付けずに眠り、
そのまま脱水で亡くなったそうだ。
実際のところは、知らないけど。

僕は別に、
彼に思い入れとか、そういうのは無かった。
友人ですら、なかったから。
ただ、
僕の携帯には、
彼の連絡先が残されていた。

僕は、思った。

この番号にかけたら、
どうなってしまうんだ?

あれから、何年も経った今、
どうして夢の中に彼が現れたのかは、わからない。

彼は、鮮明だった。
彼はいつも似通った服を着ていて、
夢の中の彼も、その服を着ていた。
顔も、はっきり見えていた。
だから僕は、
彼の顔を、はっきり覚えていたことになる。

目を覚ました今も、
彼の姿は、ありありと目に浮かんでくる。

今更、
何のために現れたんだ?
何かを表していたのか?

僕は、稼働中のエアコンを見上げる。
昨晩、今季初めてエアコンを付けた。
まさか、これのせいじゃないよな。
まさかな……。

僕は、
僕の腕に鼻先を付けて眠るパートナーを見て、
せめて君は安らかに眠っててくれよ、と願った。

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