見出し画像

『半沢』や『MIU』よりも、『猫村』ロスな私【エッセイ】

次のドラマも始まりだしたこの時期。

私は気がついてしまったのです。急激に寒くなった秋風にまぎれて、私の心に大きな穴をあけた存在がいることに。いわゆる「~ロス」という感情を私にまざまざと見せつける存在があったことに。驚きながらも、その事実は隠し通せるものではありませんでした。そう、終わって悲しかったのです。とてもとても悲しかったのです。

――そのドラマの名は、『きょうの猫村さん』と言います。


◇◇◇◇◇


延期等々あった前期のドラマですけれど、皆様どれを見ていましたでしょうか。私が見ていたのは全部で4本でした。

最終回、総合視聴率で44・1%の驚くべき視聴率を出した銀行歌舞伎合戦『半沢直樹』。人気脚本家と旬な役者の鉄壁な布陣による刑事バディもの『MIU404』。そしてあったはずのオリンピックを賛歌するのための朝ドラ『エール』(これはまだやっていますね)。

さきほど触れた様に、コロナで撮影が止まり、放送が延期になったり、話数が大幅に削られたり。時間稼ぎに生放送を挟んだりもしながらも、どれも毎回ハラハラの連続で、大変面白いドラマでした。とても満足しています。

しかし、次の期のドラマも始まりだした今。私の心にポッカリと大きな穴を開けている存在に気がついたのです。それこそが私が見ていたもう一つのドラマ、『きょうの猫村さん』なのです。


◇◇◇◇◇


『きょうの猫村さん』というのは、もともとはCATVインターネットサービスのサイト「@NetHome」上で連載開始した、『ほしよりこ』さんによる漫画です。2006年5月15日からは、マガジンハウスのメールマガジン登録者を対象として猫村.jpに移って連載しています(現在は休止中)。

人間に交じって、家政婦をするネコの猫村さん。

そのネコらしい価値観で、実直に、素直に、家事を行い、家政婦先の家族と接する姿がとてもほほえましいく、思わず笑いを誘う。そんな作品です。大変面白いので原作もオススメです。……あ、猫村さんはネコですが普通にしゃべります。

そして今年の春。
驚くべきニュースが入ってくるわけです。

なんと『きょうの猫村さん』がドラマになるらしい。それも『孤独のグルメ』等で人気を博している、松重豊さんが猫村役をやるというじゃないですか。添えられたキービジュアルが、さっきから何度か出てきているこの写真です。 

画像1

今夜スタート!松重豊主演 ミニドラマ「きょうの猫村さん」から引用)


――っ……強い(なにが

という謎の感情を私に抱かせたものの、そこまで期待していなかったというのが正直なところでした。放送時間もたったの6分。たったの6分ですよ。
1週間は24時間×7日×60分で10080分なのですから、週のうちのわずかに0.059%に過ぎません。なんの計算でしょうかこれ。

そんなわけで、期待してはいないものの、とりあえず原作ファンとして、一度は見るか……という軽い気持ちだったのです。――最初は。


いざこれが見始めたところ、私はいろいろ度肝を抜かれるわけです。

まず配役が立派。

主役「猫村さん」役は先ほども言った松重豊さんですし、過去に自分を拾ってくれた飼い主、「ぼっちゃん」の役は濱田岳(回想にしか出てこない)、家政婦紹介所の長、「村田の奥さん」は石田ひかり。家政婦紹介所の同僚は市川実日子。家政婦先の家族は父・松尾スズキ、母・小雪、娘・池田エライザ、不良中学生・染谷将太とこれまたすべてがすべて立派。

加えて、お買い物で出会う人たちというサブのポジションにも安藤サクラ荒川良々という主役級の面々をそろえているのです。

……にも関わらずたったの6分間。たったの6分で終わりを告げるのです。

その上、この6分の中にはエンディングに流れるテーマソングと、その後のCMも挟まるため、体感的にはわずか2、3分しかやらないのです。こんなに立派なメンツなのに!



しかもこの「短さ」がまた曲者なんです。

通常、短い作品であっても、導入があってひと盛り上がりがあって終わる。それが一般的な形でしょう。ところがどっこい、今作『きょうの猫村さん』にはそんな方程式は通用しない。だってネコだから!!

ぬるっと始まって、なんとなくなんかしゃべってるな……と思ってた瞬間、――終わる。もちろん元々尺が短いのは百も承知です。それをわかって毎回構えて見ているのに、「あれ? ……え? あ、終わり?」という驚きに毎回の包まれる。毎回ザワザワする我が家の食卓の平穏を返してほしい。

……でもね。それも『きょうの猫村さん』の良さなんですよ。

だって、そんな終わり方されたら絶対に次も見たくなるじゃないですか。食べ物は腹八分目で食べるのが一番いいのは、そこで一時の満足を求めすぎないからです。次に備えて余力を取っておくのです。そんなお腹と心にやさしいドラマなのです。

そんな戦略にまんまと乗せられたのかどうかはわかりませんが、また猫村さんを見たい……猫村さんを見たいと思わずには生きていけない体になってしまったのです。


◇◇◇◇◇


そんなわけで私は今、熱烈に『きょうの猫村さん』の続きを期待しております。でもドラマ放送中、私が感じていた以上に世間では話題になっていなかった気もいたしますし、そんなもの悲しさも私の猫村ロスを助長しています。

もし気になった人がいたら一応『dTV』とか、見れるサイトはあるんですけど、サブスクにはないようなのでお金がかかります。この俳優陣からして、もっと話題になると期待されていたんじゃないかな……そんな、しがみつきに似た悪あがきを感じますね。がってむ。

あなたの明日の色どりになること間違いなしのドラマ。『きょうの猫村さん』。これをきっかけに、みんなでこれから盛り上げて、次回作が制作されることを期待いたしましょう。

余談ですが、ほしよりこさんの他の作品、『逢沢りく』や『きょうの猫村さん』の公式スピンオフ?『カーサの猫村さん』(カーサブルータス編集部で働く猫村さん!)等々、どれも味があって面白いのでオススメです。


最後にもう一度、猫村さん(本名は「猫村ねこ」)のご尊顔をどうぞお納めください。

画像1

今夜スタート!松重豊主演 ミニドラマ「きょうの猫村さん」から引用)



#エッセイ #レビュー #ドラマ #きょうの猫村さん #松重豊 #孤独のグルメ #ほしよりこ #漫画 #サブリミナル松重 #コンテンツ会議 #半沢直樹 #MIU

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)