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UFOを小脇に抱える男

元夫と次女の卒業式に出た

一応正装と連絡して置いたのだけど

ヘンテコリンなハンチング被って
二十歳の頃から締めてるという一本しかないペイズリーの細いネクタイ締めて
(確かポールスチュアートのレジメンタルタイを
買ってあげたような気がするんだけどな。
やっぱりあれがお気に入りなんだなって思った笑)
赤茶色のドクターマーチン風の3ホールシューズに
(黒のビジネスシューズなんかもってないだろうな)
一応背広上下っぽいんだけど
明らかに上下の色とトーンがちぐはぐで
濃い色のチノパンではという疑いが消えない苦笑

リュックサック背負って
ドーナツ座布団を入れた巾着を肩にかけて
ニコニコとヤアヤアと登場

肩を見やると白い雪が降り積もり

君の家からここに来る間は花吹雪だったんかいねと
サッサと払ってあげる

実は結婚しているころから
こんな感じの人で
いちいち赤毛が目くじら立てて
ネクタイじゃないけど見立ててあげては
チャンとしていないと
もう一体幾つになると思ってんのよ
スーツならあるじゃない高島屋で誂えたやつがさ!
なんで着てこないのさ
靴とベルトは同じ色じゃないとおかしいんだよ
まったくも―って
お前はウシか?いやブタか?というくらいモウモウとブーたれていた

彼は全然身なりにかまわない人で
それでも精一杯ドレスコード合わせているのに
いつだって赤毛にブリブリ(今度は魚か)怒られるから
赤毛のことは嫌いになってしまう
いつも怒ってばっかりの人って

結局のところ本人がそれでいいって言ってんだから
それでいいんだ
でも赤毛は世間体。隣に並ぶ自分まで変な人って思われるのが嫌で
自分の体裁を整えるため
チャンと奥さんやっていますよってポーズのために
彼を軌道修正しようとアクセクしたんだと思う

だって、彼、一ミリも前と変わっていなかったもの笑

その話を帰宅して長女にしたら

何をいまさら
パパは昔からそういう人だったし
そうだったじゃない
ママが直したかったんでしょ

そうなんだよなあ
結局人からはめられた鋳型なんか窮屈で
はまってられるかって笑
でちゃうよねえ

他人のステータスで会えば
そんな人もいるって全然気にならないし
そんな彼がちゃんとしてようがしてまいが
それは私とは無関係で
お互いに自立した存在なんだから
それでよいというのならそれでいいんだというだけだった

まあ会場中の参列するお父様方は
バリッとスーツで決めてらしてお似合いでしたけど
比べることじゃあないんだよね

そんな彼だけど、私より小柄なのだけど
隣に座ると今日は視線が同じに
そう、彼は円座を持参して座っていた

大きな病気の後遺症なのか原因不明の仙骨痛に悩まされいて
円座なくしては座ることが出来ない身体になってしまったのだと嘆く

帰りの電車でも
痛みのことや、検査のこと、医師のことや
病院のこと、セカンドオピニオンのことなんかを立ち話して

彼が

痛みのない、円座を持ち歩かなくてもよいようには
なりたいなあって思うんだ

というから

そうだよね。ストマとか自分の身体以外にパーツをもう一つ携帯しないと
自分の身体が身体として完結しないっていう
外部依存な感じは不便だろうなって思う。

杖とか、車いすとか、補聴器とかそんな感じかもしれないね。

でもさ、円座のこと、歌いなよ。

え?円座の歌?

そう。カッコ悪いことが、一番カッコいいんでしょ?

うん。まあ。確かにそうだけど苦笑。

そういったよ。あなたが。ロックンローラーなんでしょ。
私にもnote書くときに言ったよ
カッコいいキレイに収まった文章には興味を惹かれないって。
カッコ悪いこと、みっともないこと、そういうことが書いてある方が人間味があっていいと僕は思うって。
円座持って歩いてるなんてさ、カッコ悪いじゃない。
だからそれを書いて歌ったらカッコいいじゃない!
歌ってよ!

笑笑うん。そうだね。円座の唄。つくってみるよ。

病気の不安がないわけはない。
痛みの不快さもつきまとって。辛いだろうと思う。
でも辛いねって、いくら共感的になったって状況は変わらないし
変えられるのは本人だけだ。
だから、キックザカンクルー
痛むケツヲ蹴り上げるのが元妻赤毛のチコの仕事だと思っている

二人の手にはさっき通った商店街で買ったミモザの花束
二人でひとつじゃなくて
二人でふたつ買い求めたのは
それぞれ別の家に帰る証

ヨーロッパでは春を告げる花として愛されてるんだよと渡すと
キレイだねこれがミモザなんだ初めて知ったよ
え?赤毛は彼と暮らしていて15年、食卓に一度もミモザを飾らなかったんだろうか?そんなに殺伐とした風景だったのかしら

もう今となっては確かめようもない過ぎたことはいい
事実はあなたがミモザを今日知ったことと
今夜の互いの家には黄色いフワフワが明かりを灯すということ

眠りにつく前のあなたに
美しい音楽を



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