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【エッセイ】人生の乗りかえ切符


数年前の人生の答え合わせは不意に訪れる

先日、息子と私の選ばなかったもう一つの人生の話しをして
息子は私に「なぜ、その道を選ばなかったの?」とそう聞かれた時に

私はなぜ今ここでこうしているのかと言う事をハッキリと認識したのだ

それと同時に分かった事は、今ある苦悩もこれまで通ってきた試練も全て自分の心が望んでいた事なのだと言う事

心のままに、心と共に生きて来て
今があるのだと



私の人生は過去にトロッコ列車に乗った

トロッコ列車には些細なブレーキはあれど
アクセルはなく一本道だ

景色も良好
何の力を出さずとも人生の終わりまで運んでくれる

そのトロッコ列車に乗った時に
私は人生の終焉を目にした

私の親友だった破天荒でおかしな彼女が
元から容姿の美しい佇まいを強調させる様に
喪服で故人に挨拶に来た親族に100点満点の綺麗なお辞儀をする姿

いつか、彼女の遺体が湖から発見されたとニュースを目にする時が来るのではないか?
と思うほど常識などとは無縁の彼女が
しおらしくなってしまった姿が目に浮かび私はそのトロッコ列車を降りる事にした


あの時に感じたトロッコ列車に乗り人生の終焉に向かえない理由
やり残している事
それがなんだったのか、今になってはっきりと認識出来た

あの日から私の人生はトロッコ列車からサバンナを走る屋根のないオンボロのジープになった
守らなければいけない命をのせて

エンストも起こすし、タイヤも嵌る
パンクもするし、猛獣にも出会した

死を意識することも増えた代わりに
痛みも喜びも、たったひとりだからこそ深く深く感じる様になった

逃げたいほどに


そして、私はそれまで誰かがやってくれていた事を自分の力で越えることを余儀なくされ

タイヤの交換の方法も学び、ジャッキアップだって汚い地面にあぐらを描いて自分でする

タイヤがハマった時の運転テクニックも、猛獣との関わり方も学び

少々のめんどくささはめんどくさくもなくなり

相変わらずに笑えないオンボロジープで走る人生の道中も、ある程度笑い飛ばせる様にもなった気がする

片羽のアゲハ蝶も飛び方は下手でもちゃんと飛べるんだと


最近我が家で洗濯機が壊れた

日々の朝のルーティーンに新しい洗濯機が来るまでの間
手洗い洗濯をすると言う作業が加り

炊飯器を使わずにご飯を炊く朝のめんどくさいルーティンに加え
更に面倒なことが加わり
これからしばらくは続く

そんな散々な出来事からも
洗濯をすると言う当たり前の作業を洗濯機があるからこそ忘れていたのだなという事に気づいたりもして
新しい発見があると共に、忙しい朝を捌く自分がなんとなく好きだと感じる

そんな出来事は、昨晩の問いの答えを更に深め
私の欲しかったものへと繋がっているのだと気づく


トロッコ列車に乗っていたら自力で人生を越える力を養えただろうか?
今、できる様になった事の半分も出来なかったのではないか?
自分自身の力試しには満足したかい?


ここまでオンボロジープで死ぬ物狂いで過ごした苦悩と引き換えに手に入れたものに、私は本当は満足していたのだ

トロッコ列車に乗っていた自分より
今の自分は自分に自信もあるのだよ
そして、自分のことがあの時よりとても好きだ

自分はこんなこともできるのだなと数々の出来事に教えてもらったように

到底、一般家庭の様な安定した生活などは送れないだろうし
私はきっとどこまで行ってもひとり人生をオンボロジープで走って行く

凸凹のじゃり道に山道も
険しい道をひとり腕だめしする様に

そんなことに突っ込むことが子供じみた私の楽しみなのかもしれない
子供が泥んこの中こそ突っ込みたくなる様に
何かを確かめるように、おかしく面白く


akaiki×shiroimi

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