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【エッセイ】雨のおとを聴きに


うまくいかない時、苦しい時、煮詰まってしまった時

心から聞こえてくる小さな願望を叶えてあげる事を大切に



ー雨の音だけを聞きたい

ー雪を踏み締める音を聞きたい

ー冷たい風のにおいを嗅ぎたい

ー落ち葉の舞う姿を下から眺めたい

ー何者にもならない時間が欲しい



心から浮き出た言葉にならない気持ちを、そうかそうかと受け止め

山へと車を走らせます

お弁当、水筒にコーヒー、本と編み物、絵を描く道具


さぞかし大層な大荷物で好きな物を詰めて、昼寝をしに


誰もいない山の中では、純粋な雨音が聞けるのです


電波の通らない山中で
持ってきた本も、編み物も、絵も描く事なく
ただ眠ってしまい

こんなに疲れていたのかと、ここに来て初めて気づいたりするもので

自分が何者でもない流れの中に身を置き

ここでは
時間もなく、何かにならずに、誰かにもならずに、生きていることを問うこともなくなる

自分の心から湧き上がる声はいつもよりもはっきり聞こえるからこそ
無駄な自分との会話さえもなくなる


子供の頃に探していた、秘密の花園のような場所



居場所がないと嘆いていても、自然の中に行けばちゃんと居場所はあるもので
まとまりの中では異物でも、ここに来れば異物ではなくなってしまう


帰る場所はここにある

人生の帰る場所もきっとここにある




雨のおとを聴きに

心の想いを言葉にして

子供みたいな事を呟いてたって

その向こうに、自分だけのユートピア


Illustrator   akaiki×shiroimi

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