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文芸ユニット 午前0時

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いちごつみ短歌 5月号 (vol.6)

いちごつみ短歌 5月号 (vol.6)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。紅井りんご(♧)→昼行灯(♣︎)の順で詠みました。

灰色の雨が降る日はいつか見た虹の色さえ思い出せない ♧

青色の瓦の波間に蝶の影ブルーホールを思わせ泳ぐ ♣︎

忘れもの置き場にピーターパンの影 こどもみたいな大人ばかりだ ♧

大人でもジャングルジムを世界から隠れるための基地にしていた ♣︎

真夜中のジャングルジムから見下ろしたあの頃よりも

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いちごつみ短歌 4月号 (vol.5)

いちごつみ短歌 4月号 (vol.5)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。昼行灯(♣︎)→紅井りんご(♧)の順で詠みました。

屋上のタンクの影がつま先に届くのを待つ 帰りたくない ♣︎

屋上でやきそばパンをかじっても川本真琴になれないあたし ♧

「凄いだろ」やきそばパンの腹持ちを熱弁してる兄にただ「うん」 ♣︎

推しの良さ熱弁すると早口になるし周りが見えなくなるし ♧

一人では味わえなかった寂しさが早口な夜加速さ

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【午前0時】いちごつみ短歌 3月号(vol.4)

【午前0時】いちごつみ短歌 3月号(vol.4)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。紅井りんご(♧)→昼行灯(♣︎)の順で詠みました。

ぐらぐらと揺れる地面の上にいてわたしの心も揺れているのだ ♧

君んちは花火大会の向こう側 小走りすれば金魚が揺れる ♣

適切に管理されてる水槽の金魚みたいだ何処へも行けず ♧

補助線を何処に引こうか猫に訊くあくびとあくび背伸びと背伸び ♣

背伸びして文語短歌を詠んでから口語へ変える冷えた親

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【午前0時】いちごつみ短歌 2月号(vol.3)

【午前0時】いちごつみ短歌 2月号(vol.3)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。昼行灯(♣︎)→紅井りんご(♧)の順で詠みました。

一面の綿毛を飛ばしそれだけを自分の意味とした通学路 ♣︎

パン狩りのパンが一面になっていてトングカチカチ鳴らしたら朝 ♧

この夜のこの部屋のこの灰皿に紙屑焼けば朝のよに燃ゆ ♣︎

待つという感覚だけが隙間なく部屋を満たしてわたしをつつむ ♧

脱衣籠ていねいに折り畳まれた青の浴衣がつつむ薄皮

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【午前0時】いちごつみ短歌 1月号(vol.2)

【午前0時】いちごつみ短歌 1月号(vol.2)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。紅井りんご(♧)→昼行灯(♣︎)の順で詠みました。

絡まったイヤホンコード丁寧にほどくみたいな愛が欲しくて ♧

丁寧に引き千切ってくマーガレット一片ずつに媚び売りながら ♣

一片の雪わたくしの頬で解け取り戻せないことのいくつか ♧

さようなら取り戻せないこども舌リボン結びが下手な指先 ♣

「指先が黄色いね」って蜜柑食べあなたと笑う並行世界

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【午前0時】いちごつみ短歌 12月号 (vol.1)

【午前0時】いちごつみ短歌 12月号 (vol.1)

※文芸ユニット【午前0時】のいちごつみ短歌です。昼行灯(♣)→紅井りんご(♧)の順で詠みました。

幸せに慣れたくないな コーヒーとココナツサブレ噛んで飲み込む ♣

コーヒーをはじめて知った日の夜に眠れず描いた桃色の象 ♧

柔らかく生まれたてより食べやすくされた桃缶85円 ♣

「完璧な円はないよ」と言う君の少し歪んだパンケーキ待つ ♧

桜咲き開かずのはずの踏切が開いたらまた完璧ぼっち ♣

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