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鹿狩りフラミニヤ―創作

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自然発生的に生まれた掌編や散文詩ともつかない「創作」寄りのもの、およびお題をきめて書いた習作をこのマガジンで販売しています。不定期的に更新され、原稿用紙で二百枚程度になったらひと… もっと読む
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#ヨーロッパ

鹿狩りフラミニヤ(改訂)

鹿狩りフラミニヤ(改訂)

 一一九八年、ビスケ湾内のある島に、狩猟の苦手な領主がいた。高い鼻をもっていて、しょっちゅう風邪をひいていた。フラミニヤがむかし聖堂で観たモザイク画のなかの廷臣のように、領主は細身で長身だった。だがその頃から、モザイク画の周辺をふちどる近東の民族美術をマネした不思議な文様の方に、強く惹かれるものがあったのがフラミニヤである。
 気まぐれに訪れた平和な一期間ともなれば、領主たるもの、狩りに出て憂き身

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鹿狩りフラミニヤ

鹿狩りフラミニヤ

 一一九八年、ビスケ湾の中におさまるある島に、狩猟の苦手な領主がいた。高い鼻をもっていて、フラミニヤが昔聖堂のモザイク画でみた廷臣のように細身で長身で、しかしその頃からモザイク画の周辺をふちどる近東の民族美術に感化して飾られた不思議な文様の方に、惹かれるものがあったフラミニヤである。気まぐれに訪れた平和な一期間のことであったから、領主たるものは狩りに憂き身を窶すのが世のならいであったが、教会が狩猟

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