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会社を辞めた話、カンガエルの誕生、渾身のイメージスケッチ

一度ちゃんと書いてまとめておかねばと思いながら、ばたばた(あたふたとも言う)しているうちに時が過ぎてしまいましたが。会社を辞めたんです。昨年の12月末にそれまで勤めていた株式会社 電通を退社し、独立しまして。いまは営業性個人として活動しています。

やってることは変わりません。「クリエイティブディレクター」「CMプランナー」「コピーライター」です。あと、兼業ミュージシャンでもありCMソングの作詞作曲なども行っているので、独立を機に「シンガーソングライター」も肩書きに加えました。電通時代の名刺には書いてなかったのでここは変化といえば変化です。

屋号は「カンガエル」にしました。

IMG_2977のコピー

屋号ってそうコロコロと変えられるものでもないですし、
もしかしたら法人化することなども視野にいれると
やはりそれなりに悩んだのですが。

広告や音楽を作って行く上で、
この先、歳を重ねてもずっと続けることはなんだろう、
「これさえ止めなければ、なんとかやっていける」ことってなんだろう?
ぐるぐると考えていたら、あ、まさにいま、こうしてることだ、
必要なのは、考えることを止めないことだ、と気がついて
考える → カンガエル になりました。

とまあ、そういったお堅い話がベースにあるので、
表現は柔らかく力の抜けたものにしたいと思いまして
カンガエル → カエル  という定番のダジャレを我慢することができず。

中学時代、美術2のわたくし赤松画伯が
最初に描いた「カンガエル」の渾身のイメージスケッチが、
こちらになります。

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ひどい。我ながらこれはひどい。
スタッフに爆笑されつつ、この謎の絵が
「いつも楽しそうに何かを考えている、かぶりものをしたカエルくん」
であることを説明しキャラクター作りを開始しました。

イラストは「タムくん」こと
ウィスット・ポンニミットさん
にお願いしました。


タムくんは、僕がクリエーティブディレクターを務めている
グリーンダカラの仕事でも、かわいいイラストを描いてくださっていて。

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タムくんがいくつかパターンを描いてくれたカンガエルくんの
「考えるポーズ」の中から、こちらに決定。

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ここでもう一度、イメージスケッチを見てみよう。

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面影がありますね。(ねーよ)
いや本当に、こんな拙いイメージを素敵なキャラクターにしてくれて
タムくん、ありがとうございます!    ขอบคุณ ครับ!

そして、「カンガエル」のタイポグラフィーと、全体のバランスデザインは
電通西日本金沢支社の凄腕アートディレクターで、仕事仲間でもある
木下芳夫さんにお願いしました。

最近の彼のアートディレクションで自分が特に好きなのはこれ。

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素敵。ちなみにコピーは児島令子さん 。イラストは合田里美さん。

というわけで、カンガエルくんも無事に誕生しました。
名刺もできましたので、どこかでお会いしたらもらってやってください。

めいし

それともう一つ。 2021年1月から
New Horizon Collective (ニューホライズンコレクティブ合同会社)
業務委託契約を結びました。

「ニューホライズン? 何それ?」という方のために
はい、こちらの記事をご覧ください。

いきなり「リストラ」という刺激が強めの見出しが出てますが。先にお伝えしておくと今回の退職は、会社から何かを促されたわけでも、意に反した何かがあったわけでもありません。New Horizon Collective =(綴りが長いので以下「NH」)の制度が社内で立ち上がることを知り、内容について調べ、NHの運営に関わっている人たちに話を聞いて「これまさに自分向けの制度じゃないか!」と嬉々として参加を決め、退職・独立しました。おそらく僕と同じことを感じたであろう仕事仲間も何人か今回のNHに参加しています。とはいえ、今の電通を取り巻く環境からしても「体のいいリストラ」と言われる側面も出るであろうことは、もうこれは仕方ないだろうな、と予想した上で参加しました。そう思われるならどうぞ、という感じでしょうか。

ごく一部の親しい人には話をしてはいたのですが、いずれにしても自分は近いうちに会社を辞めて独立するつもりで準備を進めていました。ここ数年は電通のCDCという部署に在籍していたのですが、一昨年の7月から電通デジタルのアドバンストクリエイティブセンター(ACRC)に出向を希望して勉強させてもらったのも、これまでCMプランナーに軸足を置いてきた自分のクリエイティブのフォームというか体内組成のようなものを、独立する前に一度大きく揺さぶっておきたいと考えてのことでした。(電通デジタルACRCで過ごした1年半はとても貴重でした。出向させてくれたCDCにも、受け入れてくれたACRCのみなさんにも、本当に感謝です。)そんな中、このNHの仕組みが立ち上がったことで、背中を押してもらうかたちになったわけです。結果、自分がイメージしていた時期よりも早い退職になりました。

ではなぜ会社を辞めようと思っていたか、というと
一言でいえば、「そのほうが機嫌良く生きていける」と思ったから。
具体的に言うとそれは「勤務地」「副業」の概念からの開放です。

まず「勤務地」。僕はここ数年、東京・大阪の2拠点をベースに仕事をしてきました。広告の仕事でのクライアントはほとんどが東京ですし、撮影や編集の作業も東京が多いです。仕事部屋も東京にあります。一方、自宅は大阪、レコーディングやCM音楽制作で長年お世話になっているスタジオも大阪にあって、音楽活動は大阪がベースになります。じゃあ2つの拠点を自由に行き来すればいいじゃん、ってことなんですが、会社員でいるとそこが難しいんですね。会社員には「勤務地」というものがあるため、勤務地を大きく離れる時は「出張」扱いになるわけです。でも年々、広告と音楽の活動がひと続きになってきている自分にとっては、そんなにうまく、ここからは勤務、ここからは出張、なんて割り切れるものでもなくて。事務的にもけっこう手間なんです。

そんな中で、一昨年の2月に、愛媛にいる双子の弟が脳出血で倒れました。
死線をさまよった後、奇跡的に生きて戻ってきましたが、重い後遺症が残りいまもリハビリを続けています。(弟が音声入力で書いている闘病記録がnoteにあるのでもしよかったら読んでみてやってください。)


病院に詰めたり、その後2週間ほど愛媛の実家と病院を往復したりしながら仕事をしていたのですが、「これって今、出張扱いなんだっけ?」「ここからは有給にしないとルール違反なのかな?」みたいなことが、頭をよぎる瞬間が何度かあって。そんな自分のことをちょっと嫌になったというか、ああなんかもう、こういうこと考えるのは面倒くさいし、しんどいな、と思ったわけです。

「副業」についても基本は同じです。
広告の仕事をしながら音楽活動をやってまして。

音楽活動はぜんぜん儲かってもいないし、むしろどちらかと言えば赤字ですが、それでも「副業」は基本、禁止です。アンチモンの活動も会社にしかるべき申請をして許可をもらって行っていましたし、依頼を受けて他のアーティストに楽曲を提供するといったことをする場合も会社への申請が必要になったりとか、あと、広告の仕事の一環としてオリジナルのCMソングを書いた場合、その楽曲の権利は自分のものにはなりません。(職務著作=仕事上の著作物として管理されます。)さらに、たとえばライブツアーに出ようとした場合、途中に広告の仕事で撮影の日程を挟んだりしていると、「これはどこまでが出張なのか? 有給なのか?」みたいな話もまた出てくるわけで。難しいんですよね。

断っておくと、自分がいた電通という会社はそこに対する理解はあるほうだと思いますし、この「勤務地」「副業」に対する考え方は、そこでもし何か災害が起きたり、トラブルやアクシデントがあった場合の社としての適切な対処方法やリスクヘッジのことを考えると、企業として当然のことです。もちろんそれを理解しているからこそ、これまで社内の人たちやスタッフのみんなに助けてもらいながら両立させてきてたわけですが、だんだん、僕自身の我慢がきかなくなってきてしまって。ふだんはそこまで表面化しないのですが、時々ふと「(実は会社に許してもらって)音楽をやっている自分」「(実は会社に許してもらって)東京〜大阪〜愛媛を移動をしている自分」というものに、イライラするようになってしまったんですね。気がつくとじわあっと不機嫌になっている。これはいかん、と思いました。

コロナでリモートワークが当たり前の時代になりましたし、今後もしかすると2〜3年後には、電通からも勤務地の概念がほぼ消えて、副業も認められるようになるのかもしれない。でも仮にそうだったとしても、50歳を過ぎた自分にはその時がくるのを待ってられないなと思ったわけです。

そんな中でのNH立ち上げのニュースは、本当にタイムリーでした。
冒頭にも書いたようにSNS上では「体のいいリストラ」的な書かれ方も見受けられましたが、僕はこの制度を知った時、「なんて面白いことを考える会社なんだ!」と驚いたし、詳細を知るほどに、よくこんな「すごくいいけど、すごく面倒くさいこと」をやろうと思い立ち、実現まで漕ぎつけられたな人たちがいたもんだなと感動すらしました。正直、電通という会社のことを見直したというか、あらためて(久しぶりに)会社のことを好きだと思ったんですよね。辞める前になって、会社のことがまた好きになれた。ちょっと乱暴な言い方になるかもしれないけれど、たとえばもしこれがリストラだったとしても、こんなワクワクするリストラなら自分は手を上げますよ、と。

そもそもリストラ = restructuring というのは「根本的に再構築する」ということです。この先、restructuringしないで生き残れる会社はたぶん一握りもないでしょうし、僕自身も「個人的再構築」を行わないといけない時期に来ていたのだと思います。そう言った意味では、このNHという取り組み自体が、長年勤めて来た電通という会社が、ここ数年いろんなことがあって、逆風の中で問うている「企画」なんだと思っています。自分はその「企画」に賛同した、ということです。

ということで今、僕はとても機嫌よくやってます。
せっかくNew Horizon Collective  にも参加したことだし、持っている広告と音楽のスキルを使って、「これはニューホライズンに参加したからこそできたことだな」と思えることを、まずは1つやってみようと思っています。

じゃあまた!

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