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すべてがそうとは限らない

「夏休みは地獄」という歌を書きました。

「なんでこんな歌詞を急に書いたの?」と、聞かれたりするのですが、
自発的に思いついたわけではありません。(なかなかこんなこと思いつかないですよね。)お題は人からいただきました。

僕はアンチモンという音楽ユニットでVo.と作詞作曲を担当しているのですが、以前「アンチモンのそれ 歌ってみよう!」というラジオ番組を3年間やっていました。リスナーのみなさんから毎週寄せられる投稿をもとに、即興で歌を作って生演奏してお応えする、というものです。

ある日そこに、主婦の方からこんな投稿がありました。

「ああ!ついに夏休みが来てしまいました!地獄です!毎日のご飯何をつくればいいか考えるだけでもう大変。子供らは元気でいいことなんですけどね。この気分を歌にしてください!」

そこから「夏休みは地獄」というタイトルが生まれたわけです。

ラジオ番組で披露した歌は、1コーラス。

夏休みは地獄 夏休みは地獄
夏休みは地獄 子供らには天国
ご飯作るの めんどくさい
こんな時はそうめんだ
朝ご飯もそうめんだ
昼ご飯もそうめんだ
夜はもちろん そうめんだ
夜食もそりゃあ そうめんだ
(ちゅるちゅる)

夏休みは地獄
夏休みは地獄
夏休みは地獄 
子供らには天国

ここまでを作ってラジオ番組でオンエアし、この歌はそのまましばらく何もせずに置いてありました。
3年間の番組が終了した後、作り続けたたくさんの歌の中から(その数なんと120曲以上!)いいものをえらんで次のアルバムにしようということになり、メンバーやスタッフと自分たちの推し曲をそれぞれリストにして選曲ミーティングをしたのですが、その中で「夏休みは地獄」が、ぜひフルコーラスを作って収録したい歌、として選ばれたわけです。

さあ、ここからが考えどころです。

まずやったことは、

1)夏休みは親にとっては地獄である、子供には天国だけど。 
        という構造のまま2番はそれをさらに深掘りする。

でした。これはこれで悪くない。
けれど何かこう、スッキリしないんですよね。
書いていて何かがモヤモヤする。
原因を考えていくとそれは、「親は大変、大人は大変」だけを言うことに対する違和感だなということに気がつきました。子供らには天国、って書いてるけれど、すべての子供がそうとは限らないぞ、と。

そう考えて思い出してみると「自分も夏休みにずっと親と家の中で顔を合わせてるのがしんどい時あったな」とか、「夏休みの宿題なんてなければいいのにな」とか、「夏の思い出作りってそんなに必要?」って思ってた自分がいたなあと。そのことを書いた方が、ずっと気分がスッキリするぞと。

そこで方針を転換しました。

2)夏休みは親にとっては地獄である、子供には天国だけど。
  いやいやでも、子供は子供で大変なんじゃないの?
  という新しい軸を入れて2番を展開する。

子供らには天国
そうでもない
そうでもない
子供がみんな
そうとは限らない

この「そうでもない」「そうとは限らない」のフレーズが書けたことで、歌詞が勝手に動き出します。セミもミンミンうるさい、めんどくさい。夏なんて、セミにとっては天国かもしれないけれど。

いやいや。
すべてのセミがそうとは限らない。

7年待つのめんどくさい
地上に出るのめんどくさい
脱皮するのもめんどくさい
樹液を吸うのめんどくさい
ミンミン鳴くのめんどくさい
オシッコするのめんどくさい

このあたりの歌詞は、もうほんとに5分くらいで書いてしまった感じでした。こうなってくると楽しくて仕方がない。けれどどこかで止めないと。このままでは曲が終わりません(笑)。

あ!
セミだから。セミだからこそ。

夏休みは地獄
夏休みは地獄
セミたちにも地獄

1週間後に天国!

こうして「夏休みは地獄」は無事に完成したのでした。

「すべてがそうとは限らない。」

立場を変えると、地獄は天国になり、天国は地獄になる。

今日はこのあたりで。
じゃあまた!

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