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少女小説を生涯愛すために。『大人だって読みたい!少女小説ガイド』

嵯峨景子・三村美衣・七木香枝編著『大人だって読みたい!少女小説ガイド』

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わたしたちのあたらしい必携書と話題のあの本がようやく手元に届いた。この物語たちを、宝石箱に詰め込むように一冊にまとめてくれたお姉さまたちへ感謝しながら、一読。

「少女小説を通ってきていない」という自意識は、わたしにとって特別な意味を持つ。小学校高学年から中学生にかけてのわたしは、『なかよし』を愛読しつつ、森絵都『カラフル』との出会いをきっかけにいわゆるヤングアダルト小説を好んで読む少女だった。そんなわたしにとっての少女小説は、文通していたあの子が、「マイブーム!」として教えてくれたコバルト文庫たちだった。甘やかできらきらしていて、字面だけでもちょっと気恥ずかしくなるようなタイトル。ちょっと調べてみると、それはどうやらかわいらしいサイズの本で、かわいらしい表紙と挿絵をもつらしい。彼女からのお手紙でせっかくおすすめされたにもかかわらず、当時のわたしはそれらに手を伸ばすことはしなかったのだけれど、それはーーもしあのときコバルト文庫を読んでいたら、わたしはどんなわたしだったのかな?と想像してしまうような、ひとつの分岐点、そしてちいさな後悔点。チャンスがあったのに出会えなかったコバルト文庫は、わたしをどのように変えてくれたのだろうか。

だからわたしは、「少女小説を通ってきていない」。少女小説に触れない道を通ってここまできた。きてしまった。そう思ってきた。そう、この本を読むまではね。

『大人だって読みたい!少女小説ガイド』を、知らない本たちを勉強するための本として開くと、なんと、そこにはわたしが読んできた本も、これから読みたいと思っていた本も掲載されていたのだった。そっか、これもこれも、この本も、少女小説なんだ。マリみても、桜庭和樹も、『ガーデン・ロスト』も。そう、「少女小説」という、懐が深く、こんなにもわたしたちのための物語である一大ジャンルを、わたしは「選ばなかったもの」として、自ら隣に置いてしまっていた。それはあのころから続く気恥ずかしさの延長なのかもしれないけれど、とにかく、少女小説を読むわたしは存在しなかったと思い込んでいた。でも違う。少女小説は幅広い。少女小説だとわたしが/あなたが思っていても思っていなくても、たしかにわたしの、わたしたちの本棚の中で少女小説はわたしたちを支えているのだ。--そんな当たり前のことに、気づけなくってごめんなさい、お姉さま。

大人だって読みたいし、今からでも全然遅くない。勉強不足で経験不足だけど、そしてやっぱり偏りはあるのだけど(以下参照)、生涯少女小説を愛していきたい。この本と一緒にね。

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以下、そうはいってもやはり女の子同士の絆を読みたいわたしのための抜粋リスト。特にリリカル・ミステリーシリーズが気になります。

倉本由布『上弦の月』/新井素子『ブラック・キャット』/津原やすみ『ルピナス探偵団』/友桐夏『リリカル・ミステリー 白い花の舞い散る時間』/荻原規子『西の善き魔女』/飯田雪子『あの扉を越えて』/紙上ユキ『少女手帖』/谷山由紀『天夢航海』

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