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柳緑花紅 何者にもならなくていいと気付いた言葉

5年くらい前に、本屋さんをぶらぶらしていた時に
"日日是好日"
という本に出会いました。

映画化もされていたこの本は、著者の森下典子さんが学生時代に始めたお茶のお稽古が、時に彩豊かに、時に人生の苦悩に寄り添って、歩んできた人生の瞬間を切り取り纏めたエッセイです。

20代も後半に差し掛かって自分なりに人生の悲しみや苦しみに遭遇していた時に、私の心に寄り添って、深い余韻を与えてくれた1冊でした。

すっかりお気に入りの本になったのですが、"日々是好日"には二作目の"好日日記"という作品があって、こちらもお茶や季節の魅力を伝えながら、じんわりと心をを暖かくしてくれる素敵な作品でした。


そのお話の中に

"柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)"

という禅語がでてきます。


意味は、本当に読んで字の如くみたまま。
柳は緑色で花は赤色 本来の自然なままを見つめなさい、という意味なのですが、これは自然や季節に留まらず、私たち一人一人のことや、物事の情景にも当てはまる考え方です。

柳は緑に繁るのが美しく
花は紅に染まるのが美しいように

柳が赤色に染まることを求めるよりも、
花が緑色に茂ることを追い求めるよりも、

柳は緑でこそ美しい
花は紅でこそ美しい

どんなに周りが輝いて見えても、
あなたは、他の誰かになろうとしなくていい。

そんなことを教えてくれる言葉でした。


出来ることなら、手に取ってあの著者の言葉を感じてほしいです。

エッセイの中で語られる森下さんの言葉は、20代の頃、周りと比べて落ち込んだり、何者かになろうとがむしゃらにもがいていた自分の心に、深く響く優しい言葉でした。


仕事を通して少しずつ出来ることが増え、多少なりとも自信がつき、自分の考え方にもいい変化があったり、力の抜けてきた時期ではありましたが、カフェで接客業を続ける中で、周りの人たちが明るい笑顔とコミュニケーションでお客様を笑顔にしている姿を見るたびに、どんなに頑張っても自分はあそこには届かない、あんな風にはなれないと思っていました。
どこかでは、ずっと、いつか辞めようと思っていました。

でも、この言葉を知った時、私は柳や花になろうとしなくていいんだなと肩の力を抜くことができたのを覚えています。

接客業をしている中で、いつでも全身で明るさや笑顔を表現してくれる元気をもらえる接客が出来る人や、フランクな親しみやすさとプロらしさを兼ね備えたかっこいい接客ができる人にずっと憧れがありました。
周りが輝いて見えるほど自分にはないものばかりが見えてしまっていたけれど、周り人のいい仕事は真似しながら、私は私なりに目の前のお客様を笑顔にすることができる。


優秀な人、人格の素晴らしい人、いろんな才能のある人、私はそのどれにもなれないけど、私なりに自分の特性を活かしてできること、この仕事で求められること、役に立てるところを伸ばしていこう。と自然と思えるようになりました。

とっても大好きな2冊で、就職や引越しなどで、遠くに行ってしまう大切な人や、人生の中で悲しみが重なった人にそっとプレゼントしたくなるような人生に寄り添ってくれる一冊です。


最近、八字という四柱推命をベースにしたコミュニケーションメソッドについて学ぶ機会があったのですが、改めて自己理解と他者理解を深めてくれるような内容で、改めて"柳緑花紅"を実感した一年でした。

この講座は、四柱推命って占いのイメージなのですが、それを統計学的な側面として捉えて用いていて、講座の受講者や講師の方と一緒に会話をしながら、お互いの特性について理解を深める内容になっていました。

その時間を通して、改めて自分と人ってこんなにも違う人間なんだな、って本当の意味で理解できました。
感じ方も、考え方も、その表現の仕方も、その人を形作るなにもかも。

何者かになろうとしていたことに気付いた5年前の自分から、さらにその本当の意味が理解できたような感覚でした。
色んな人とお話しをして、こんなにも違う私たちが、他者になれないことを嘆くのは、勿体無いことだったなと思いました。

また、自分の中で、なんとなく蓋をしていた自分の特性についても、改めて気付く機会にもなり、またそれを理解してよりよい自分にしていくことや、自分の未来について改めて考える時間になりました。

今日も読んでくださり、ありがとうございました!

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