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うつ×ADHD×東大受験 55 息子のマイペース受験記 あとがきにかえて

うつ×ADHD×東大受験 息子のマイペース受験記をお読みいただいてありがとうございました。

この受験記を書くきっかけは、ほんの小さな言葉がけや話の受け止めによって、息子のうつがドーンと悪くなったり、うそのようによくなったりするのを目の当たりにして、同じような境遇の方たちと情報共有したいと思ったからです。

わたしは医学的知識があるわけではありませんし、個人差が大きいと思うので、こうするといいですよ!とはいえませんが、息子とわたしの経験をありのままお伝えして、こんな人もいるんだなあ、これしちゃだめだな、これやってみようかな、といい意味でも悪い意味でも参考にしていただけたら幸いです。

浪人のときには、東大に入れたとしてもそれが幸せにつながるのか、このまま突き進んでいいのか何度も迷いました。それがどうだったのか、最後に東大入学後の息子の様子にふれて、この受験記の結びにしたいと思います。

うつは飛躍的に回復

東大合格は本人だけでなく家族、親戚や学校の先生みんなに喜ばれました。
夫も息子に一目置くようになり、父と子の関係はかなりよくなりました。

進振りの前など、将来を考えてドーンと落ちそうだといってきた時がありますが、そんな日は休んでゆっくりしたりして無理せずやり過ごすことができています。

以前通っていたメンタルクリニックでも「うつは治っていますね」と診断を受けました。

学生生活は概ね順調

多様な人に囲まれて交友関係は問題なし
息子はもともと交友関係はあっさり派です。ひとりでいてもさびしくはないし、あまり濃密につきあっているとだんだん離れたくなったりするらしく、仲のよい友人ができるのか少し心配でした。

東大理Ⅱは前期課程のクラス分けで理Ⅲとの合同クラスとなります。そのため、日本で最難関の受験を制した人たちもクラスメイトです。
東大は学力格差が日本一の大学といわれていますが、息子はすぐ隣にいる天才たちの様子を驚きと尊敬の気持ちを持って伝えてきました。それでも思わずくすっと笑ってしまうような人間らしい面もあり、友人としてつきあえているようです。
また、東大は他大に比べるとあっさり派の人が多いらしく、お昼もひとりで食べるのはふつうだそうです。それもあり、あっさり派の息子も浮かずに自然体でいられるとのことでした。

息子はインカレサークルに入りました。そこではいろいろな大学の友人ができ、一緒に旅行したりするのは他大の仲間が多いです。その方が気楽でいられるのかもしれません。

学業はちゃんとやれば大丈夫、鍵となるのは朝起きられるか
学業は得意な人が多いので、試験前に教えてくれる親切な友人に助けられ、ちゃんと取ろうと思った単位は取れます。でも出席が必要な授業を欠席したり、小課題を提出しなかったりすると、周りが取っている単位も簡単に落してしまうので、朝起きて出席し、計画的に試験勉強をするのが大切です。息子はこのがネックとなり、留年しない程度に単位を落として本郷キャンパスから落とした単位のために駒場キャンパスに通う羽目になりました。
専門の授業が始まると、自分が取りたい授業が増えてやる気になり成績も上がってきました。

問題は生活リズム なかなか眠れず朝起きられず夢も希望もなくただ大学に行くだけ
学生生活の一番の問題は生活リズムが不安定なことです。眠ろうとすると将来の不安などに頭を占領されそうになり、その不安を追い出すためにまんまとYouTubeの沼にはまっているみたいです。授業があればなんとか起きる動機になるのですが、長期休みはもうずれにずれて、朝起きると「これから寝るわ」といわれることもざらでした。
そんなこんなであまりパッとしない学生生活が続き、将来の夢もなく、
「せっかく東大に入ったんだけど、卒業したらニートになるかも。勉強キライだから院にも行きたくないし。ごめんね」なんていっていました。

ゲームチェンジャーとなったのはここでも受診
あまりの昼夜逆転に普通の就職が難しいのではないかと思い始めたときに、夫の父から睡眠薬を使って寝ているという話を聞き、薬の助けを借りてみるかと以前通ったメンタルクリニックを受診しました。
ついでに社会不安障害の薬も処方していただいて迎えた新学期、通学のしやすさが全然ちがったそうです。朝も起きられるし、授業も集中できるようになってきました。そして、勉強が楽しいといい出し、図書館に通っては、専門の分野だけでなく、経済や将来社会がどうなるかといった本を借りて次々に読んでいます。ついに「勉強が楽しいから院に進みたい」といい出しました。

心身が整うとこんなに違うのか

体が丈夫になった
それまで簡単に病気になっていたのがうそのように、風邪を引きにくくなりました。そして、なんだかゾクゾクしてインフルエンザかなと思っても、一晩ぐっすり眠るとだいたい回復しています。

仕事にも興味が出てくる
心と体が楽になってくると、息子は朝のバイトを始めました。お金をいただくからにはと早起きにも気合が入ります。バイト先で一緒になった方たちから話を伺って、インターンもしてみようかな、と仕事にも興味が出始めました。

一番驚いたのは人としての成長
現役受験生のころ、息子は自分を守るのに必死で、自分最優先の生活をしていました。なにかチクチクといわれたときに、怒りを押し殺すこともありましたが、オーバーリアクションと思えるほど怒鳴って対抗することもありました。また、具合の悪い受験生を優先するためにしわ寄せがくる次男が「感謝しろよな」なんていうと、「こっちは受験生なんだよ、当たり前だろ、バーカ」とやってもらっている人に信じられない言葉を返すこともありました。わたしにひどいことはいいませんでしたが、そんな姿を見て将来社会でやっていけるのかとても不安になりました。

でも息子は変わりました。体調がよくなると、自分で判断してお皿を洗ったり、お風呂をわかしたり、次男に勉強を教えたり、夫の代わりに図書館へ返却に行ったり、買い物に行ったり・・・よく手伝ってくれます。何かしてもらうと気持ちよく「ありがとう」の言葉が返ってきます。
人ってこんなに変わるんだと驚いています。

この先へ

わたしは今の息子の姿をしっかりと脳裏に焼き付けようと思います。

息子はこの先も不安に飲み込まれ、自信をなくすことがあるかもしれません。でももし支えが必要になったら、この姿を胸に、大丈夫だと伝えるつもりです。


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