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あなたへと向かって

久しぶりに母と二人でランチの約束をした日のこと。

いきつけの美味しいフレンチトーストがあるお店で、母娘それぞれに食べたいものを決めて、店員さんを呼びました。とてもお腹がすいていた私は、母の分も一緒にササっとオーダー。
すると母は目を細めて私を眺め、こう言いました。

「まぁ……立派になって。昔は私が注文したのにね。今はあなたひとりでできるのねぇ」

意外な指摘に私はびっくり。
だって、まもなく高校生になる息子をもつ、アラフィフな私に対して、この言葉ですから。
でも、母にしてみれば私はいつまでたっても「半人前の子供」。確かに未だに心配をかけてばかりの親不孝者です。
それでも久しぶりに「子供扱い」された私はムズムズしてきました。「気恥ずかしさ」はもちろん、「懐かしさ」や「誇らしさ」、ちょっとした「抵抗感」など、色んな気持ちがぶわぁっと湧き上がってきて。 複雑な心情をごまかすように、届いたランチセットをいただいたのでした。

それからしばらく和やかに穏やかに母との時間を過ごし、帰途につこうとした時。学校帰りの息子から現在地を伝えるメッセージが入りました。折よくお互いほぼ同時に最寄り駅に到着することが判明。

少し疲れていた私は、これ幸いと「それなら待ちあわせてどこかで夕食を調達して帰ろう!」と提案しました(ハイ、手抜きコースです!)
息子の希望を聞くと、某ファーストフード店を指名。合流したその足で息子と店へ行き、注文……という段になって、今度は息子がテキパキとオーダーをしはじめました。
「わぁ、立派になって。昔は私が注文したのに、今はキミひとりでできるんだ」
ついさっき、母からもらった言葉を、そのまま息子へ。
春になれば中学を卒業する息子。反抗期を経て(まだ真っ只中かな?)順調に親離れも進んでいる彼に。
そして「ああ、これか」と思わず笑ってしまいました。
まさか言われた直後に今度は逆の立場で母の気持ちを味わうことになるなんて、予想していませんでしたから。
お腹の中で頻繁にしゃっくりをしていた我が子。ささやかな産声を上げた赤ちゃん。ベビーベッドであごに指を当てて小難しそうな顔で眠る生後0日の息子。それが今では。
この感情を何と表現したらいいのでしょう。感傷的? うーん、ちょっと違います。
「寂しい」「誇らしい」「照れくさい」?
どれもピンと来ません。
しばらくウンウンと考えて出てきたのが、某懐しソングに似た言葉。
「愛おしい」「せつない」「心強い」
ハイ…曲が聴こえてきましたか?(すみません)
でもこの3つの言葉がしっくりきました(さすが名曲!)。

母から子供扱いされたり、息子を子供扱いしたり。
子供と大人の両方を行き来したみたいで、何とも心忙しい一日となりました。

そうして脳裏に去来するのは、母も息子も変わらず健やかであることへの感謝の気持ちです。
母とも息子とも、なんだかんだとケンカしますが、それも二人が元気でいてくれるからできること。
だから「ありがとう」。
こんなふうに思う私も昔に比べたら少しは大人になったのかもしれない。

ご支援を活力に変換して、今後の創作活動に生かしてまいります。各種沼への軍資金、猫たちへのおやつとなる可能性も捨てきれませんが……なにとぞ……!