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つれづれ雑記 *ハート形、の話


 先日の朝、ぶどうを食べていると、2つの粒がくっついて1つになっているものがあった。
 皿に置いて眺めると、ハート形に見える。

 ころんとしたフォルムが愛らしい。
 すぐに食べてしまうのがどうにも惜しくなり、皿に乗せて写真を撮り、家族のスマホに送った。


 世の中には、ハートをかたどった物がたくさんある。
 時期によって流行り廃りはあるものの、アクセサリーを始め、デザインとして平面立体問わず、ありとあらゆるものにハートモチーフは使われている。

 既製品のデザインだけではない。

 あるときは熱帯魚にハート形の模様があるといってもてはやされ、観光地の小さな池がハート形をしているといっては女性やカップルの人気を集め、またあるときはどこかの牧場にハート形の斑のある仔牛が生まれたといって、新聞の地方版に載ったりする。
 
 河原を歩いていてハートの形に見える石があると拾いたくなるし、空を眺めていて雲の形がハート形に見えたり、食べているぶどうの形がハートに見えたりしたら、思わず嬉しくなって誰かに知らせたくなる。

 人はどうしてハート形にこんなに反応するのだろう。

 言葉のハート(Heart)は英語で、心臓、という意味だ。
 それを表す造形がどうしてあの形なのか。  
 心臓の形だと言われても、ちょっと納得できない気もする。
 一説によると、ぶどうの葉の形からきているなどとも言われているらしい。
 
 ハートは、心臓からの派生なのか、心、感情、中心、大切なもの、などの意味もある。
 そこから更に発展して、愛情を表すモチーフにもなっている。
 結婚式場の広告にもよく使われているし、バレンタインデーが近くなってくると、街中はピンクや赤のハートでいっぱいだ。
   
 女の子の発言を文字で表すときに語尾によくハートがついているのは、嬉しいとか、楽しい、という感情の高揚を示しているのか。

 そう言えば、noteのスキも赤いハートで表されている。


 ハート形が日本に入ってきたのは、戦国時代、南蛮から伝わったトランプのハートが最初ではないかという説がある。
 諸説あるだろうが、いわゆるハート、としての認識で伝わったのは、それが正しいのかもしれない。
 
 しかし、実はそれよりももっとずっと以前から、日本にはハート形にそっくりな文様があったことをご存知だろうか。
 それは「猪目(いのめ)」と呼ばれている。
 文字通り、イノシシの目、という意味のこの文様は、日本の古い建築、神社仏閣の扉や軒、柱などに貼られた補強を兼ねる装飾板にあしらわれていることが多い。
 古くは6、7世紀くらいにはもう使われていたという記録がある。
 他にも、刀剣の鍔、灯籠、茶室の窓の形など、結構いろんなところで見ることができる。
 目、と言うからか、透かし彫りにされていることがほとんどで、上下はあまり決まっていない。
 
 身近なところでは、鈴。
 全てではないと思うが、鈴に入っている切れ目の端っこがハート形に切られていることがある。普通の鈴よりもお守りなどについているものに多い。あれも猪目だ。

 どうして、猪目、と呼ぶかというと、字そのまま、イノシシの目の形に似ているから、と言われているそうだが、私はこれにもちょっと納得がいかない。
 イノシシの目、ハート形しているかな。

 猪目そのものの由来も、これまた諸説あるようで、確かなことは分からないが、どうもイノシシの目には魔除け、厄除け、更には火除けの意味があるそうだ。
 古来、西でも東でも、目というのは魔を祓うものなのか。
 ずっと以前、トルコのお土産に目の形をした青いガラス製の魔除けのお守りを貰ったことがあったし、エジプトにはホルスの目をデザインした護符もあるそうだ。
 

 今も昔も広く愛されているハート形と日本古来から魔除けの護符とされている猪目が、そっくり同じ形をしているのは何か不思議な繋がりを感じる。
 


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