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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第13話:進むべき道》

なんと今回のオープニングには藤原行成が出ていませんでした。というか、ドラマに登場しなかったのです。まぁ、彼の本領発揮は一条天皇が大人になってから、くらいだとは思うんですが。ざんねん!

■はじめに

今回のお話では、前回からすでに4年の歳月が経っている。
4年て意外と長い年月なんですよ。

ウソだと思うなら、猫に聞いておくれ。
生まれた猫は1歳半で人間の二十歳に同等とされるほど成長し、そこからさらに1年ごとに4歳年を取るっていうからね。
人間の数え年どころではないスピード感の老いである。
例えば、倫子ん家にペットとして買われていた唐猫のこまろなんだが、前回の時点で生まれて1年ほど経っていたとするなら、4年経った第13話では既に36歳らしいよ! 
結構いったなぁ、こまろ氏。

というわけで、4年とは猫的にそれほど長い。
その年月がストーリー内の人間たちにはどのような変化をもたらしたのか。
今回の切り口は「4年後」でいこう。
そして13話において最もドラマチックに中心となったのが、藤原兼家だ。

■4年後の中関白家と定子

Tin Tinが平安時代に冒険にきたんじゃありません。
一条天皇なの。そしてお隣は定子なの。

藤原道隆の一家のことを「中関白家なかのかんぱくけ」と呼ぶ。
呼称の由来は、摂関独占を確立した父・兼家と弟・道長の間の中継ぎ的、もしくはシンプルに兼家・道隆・道長と進む摂関ルートの2番目の家だったからと言われる。
13話における中関白家は絶頂期間近だ。
実際はなかなかの子沢山だった道隆だが、子供としてドラマでは美男で教養に富み、自信にあふれた嫡男・藤原伊周これちか、同様に明るく、容姿端麗で教養と魅力にあふれる妹・藤原定子さだこの2人に集約されている。2人の人物描写については、のちの清少納言による『枕草子』の影響もあると思うので、めっちゃポジティブ。
今、中関白家は、なんの不自由も憂慮する事柄もない明るい家庭満喫中だ。

その中関白家安泰の大きな理由のひとつとして、定子が一条天皇の后となったことも挙げられる。
一条天皇は元服したとはいえ、まだ子供だが、彼と定子の仲はよろしいようで、ここに天皇の后という定子のポジションも安全だと思われ、心配のタネなど全くなさそうな状況なのだ。
今のところはね。

ところで、彼女が入内する際の様子って、何か不気味じゃなかった?
もっとひゃーって祝うのかと思ったわ。
暗闇の中を燭台の光を頼りにしずしず歩くその定子の様子は、どこか妖しくて、これからの展開を予兆させるような胸騒ぎを覚えませんかね!? 

クイズ。誰でしょう? 
もう誰にも似てないもので。

■4年後の藤原道兼

藤原道兼は清々しいくらい4年間でやさぐれてます。
いや、見た目は上級貴族然としてはいるけど、性格の悪さは極まって、もう兄の道隆を敵視さえしてる。なんで昔の人は、こうも家族同士で仲が悪いんですかね。トップを狙わなくても、テキトーに貴族やって楽に暮らせば、って思うんだけどね、ステップブラザーの藤原道綱を見よ。

花山天皇の退位で汚れ役を引き受けたんだから、見返りとしてさっさと偉くなりたい、というのが道兼の言い分。なだめる父親の兼家の言葉を聞きつつも、イライラカッカしながら当然次期政権を狙ってる。
さぁ、もっと彼に燃料を注ごう。
蓋をして3分、もとい9年ほど待てばそのときの展開がもっと面白くなります。

■4年後の藤原兼家

今回、あたし的には間違いなく藤原兼家が主人公だった。
13話で最初に彼を見たときの印象は、髪の毛がずいぶん白くなったな、である。そして彼の足元もおぼつかない様子に、すこし寂しさを感じた。
家族を騙してまで仮病を利用して周囲をコントロールしようとした、あのギラギラの兼家が、もはや懐かしい。
高笑いする兼家がいとおしい。
どうして人は歳を取るんでしょうね。

簡単に「兼家は認知症」とは言いたくないんだが、どうやら一瞬自分を理解しない時もある様子。

そして兼家は壊れていく自分に自分で気づいているのだ。
どれほど悔しいことだろう。
だけど、あたしがシビれたのは、時折、まるで稲妻が夜空に閃光を放って一瞬だけ周辺の風景をクリアに浮かび上がらせるかのように、かつての兼家が蘇るとき。

兼家だいじょぶか。

そして、絶好調の道隆ではなく、ジリジリと自分の栄達を待つ道兼でもなく、黙って父を伺う道長だけに、兼家自身の考え方のエッセンスを伝える。

「民におもねるようなことだけはしたらあかんで。おまはんが守るんは、民やない。家や。家の存続や。家のためにやらなあかんこと、それがわしの政やさかいにな」

まぁ、こんな為政者、人民にしたらたまったもんやない。
が、これは兼家の本心であり、当時の肉食上級貴族のやり方だ。

言っておくが、このころ国内の情勢はひどいもんであった。
国司の専横がひどく、税は理不尽に重く、民の生活はどん底。
それでも上級貴族たちは、まだ自分たちのことだけを考えて生きていた。
そうやって民が作る産物を税で巻き上げていたのだ。
そうすることが、やがて自分たちのクビを少しずつ締めていくことに気づかないままに。
でもそれがわかるのは、道長がこの世を去ったその先の話となるわけですけど。

■4年後のまひろと道長

父親である藤原為時が失職して以来、ずっとまひろの家は貧しい。
この4年間どのようにして食べてきたのかまじで知りたい。
乳母のいとは相変わらず丸々としているんだが。

長い間の貧困にもめげずに生きているまひろだが、さすがにお尻に火がつき就職活動中だ。その苦境を知った源倫子は、自分の元で働かないかとまひろに手を差し伸べるが、まひろは断わっちゃう。
またプライドが邪魔したんやね。
だって、倫子は道長の奥さんだからね。

道長の北の方(正室)じゃなくちゃいや、と言ってた延長で道長の正室の倫子のもとでは働きたくない、というわけか。
道長のことを4年経ってもふっきれていない。
成就していない恋愛の空白の4年は、もうあきらめなさい、という神様からのメッセージちゃう?

とはいえ、今回彼女に酷なシチュエーションもありました。
倫子が、道長が文箱に隠し持っていたまひろからの漢文ラブレターを、知らないとはいえ、差出人であるまひろに解説を求めたのだ。
まひろは自分が書いたものだとはおくびにも出さずにその漢文解説をさせられたのだが、ちょっとキツいかな。ははは。
さらに倫子は自分と道長との間の子も紹介してました。
まひろと道長の関係を知らないとはいえ(知っていたりして)、なかなか酷ですね。あはは。

でも、あたしだったら倫子の元で働くかもな。
待遇は良さそうだし、あわよくば道長とよりを戻すことができる…とか。
性格悪すぎる? 
いやいや、他人事だからこそ冷静に正解を導けるのかも。
だって、のちほど似たようなことするわけですよ、紫式部として、道長の娘のために働くという。

さて、後味悪く倫子の土御門家から引き上げようとするまひろは、今ではこの屋敷に住む婿どのの道長に遭遇してしまう。
そして2人は目が合うんだけど。

いやもう、そのときの道長の顔がひどい、もとい、すごい、いややっぱり、ひどい。
目を見開いて。
4年も経っていたら、一応「終わった恋」として、もうちょっと友好的というか大人になって対応できないものですかね。
ウソでも笑顔のひとつも見せてはいかがか。
道長はどうしてここぞというときにあんなにすごい表情するんだろう。
この顔芸、どこかで見たと思ったけれど8話のときの汚い顔に似たシチュエーション。

再掲。


目を見開いて、驚いたというよりは怒ったような顔の道長、なんか顔が汚いんだよ。決して柄本という俳優さんの顔のつくりのことを言っているのではない。俳優さんの顔はもともとキリッとしてはりますけどね。
でも、この時まひろと目があった道長の怒ったような顔がもう、汚くて。
負のオーラが。


ひとつ前の絵と顔が全然違いすぎて笑う。どちらもにてませんが。
悪いオーラ、見えます? あ、これ道長なんです。

次回に続く道長の顔がぜひ見たい。
さらには、兼家の最終章あたりも。