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実践と理論の順番【クリエイティブスキルの学び方】

はじめての小説を書き終えて、いきなり偉そうにクリエイティブ系スキルの習得論について書きたいと思う。
とはいえ、内容としては以前読んだ本から着想を得たもので、ずっと考えてきているので「ちょっと思いついた!」アイデアではない。
そこはわかってもらいたい。

どんな話をするかというと、技術を習得するためには「実践」と「理論」をどういう順番でやっていくのがいいか、という問いがベースだ。

「実践」は必ず必要なものだし、これがなければ習得にはならない。しかし「実践」にのみ頼りすぎればスキル習得のコストがかかりすぎる上、独学の場合、大きくズレていく危険性もある。

「理論」はスキル習得を助けてくれ、方向性の間違いも減らしてくれる一方、「頭でっかち」になることや初心者にとっては難しいなどのケースも考えられる。

今回はそんな話だ。

まずは結論、どっちがいい?

結論から述べよう。

「実践」から「理論」へ。

これが、スキル習得、特にクリ系の場合の順番である。

まずはそんな話がされている書籍の紹介をしよう。
『作曲少女』だ。

人によっては、表紙の絵が気になって手に取れないひともいるかもしれないが、それは非常にモッタイナイ思考なので、僕は変えることをおすすめする。

さて、この本は「作曲」についてストーリー仕立てで紹介・解説されている本で非常に読みやすいわけだが、それ以上に一つの特徴がある。

これは「クリエイティブ論」の本だ。
作曲以外でも、すべてのクリエイターにとって大事なことが書いてある。

ちなみに以下のページで、無料版の番外編みたいなものもあるので、雰囲気を知りたい人は読んでみるといいかもしれない。十分に面白い話が載っている。

また著者による続編『作詞少女』については少し書き口が異なるというか、著者の哲学的なものが濃く語られているものなので、あえておすすめはしない。

話を戻そう。
スキルの習得は「実践」から「理論」へ。

もう少し詳しく言うと「理論」というものの立ち位置の話だ。

「理論」をどう使うか

『作曲少女』で述べられていたことだが、「理論」はあとで知識を整理するために使えばいい。

というか、初心者が理論を学んでもその本質を理解できることは稀だ。それは相当センスの高いケースだろう。

また「後知恵バイアス」なるものがあり、これは教える側と学ぶ側の知識に対する理解のしやすさのギャップから生じるものだ。
つまり、誰かがつくったのであろう教材に理論が書かれている時、その作者は実践をベースにしているが、初心者側にはそれがないのである。

したがって、入門書を選ぶ時、やたら理論や本質、歴史について触れているものには注意すべきだろう。

頭のいい人ほど、まず理論を理解してから実践に入ろうとする。
トップダウンの学習アプローチだ。

しかしクリ系スキルにおいてそれを可能とするのは特殊な基礎スキルを身に着けたものだけだ(学習の達人たち)。

基本的にクリ系スキルの習得はボトムアップ型の学習アプローチで行うべきなのである。

「実践」からとはいっても

とはいえである。

まだやったことのない人が「実践」から始めるのは結構難しい。
一応言っておくが、入門書は買っていい。むしろ良書であれば投資を惜しむべきではないだろう。

「理論」の前に「実践」から入る場合、用意したいものが二つある。
どちらか一方でもいい。

まずは”師匠”だ。

貴方に正しい「実践」の方法を教えてくれる人を探そう。
僕自身、独学勢であるが、やはり”師匠”がいた方が成長効率を上げられるし、失敗確率を下げることができる。

しかし”師匠”が見つからない、得られない場合もあるだろう。

そこで用意したいもの二つ目。
”模倣対象”だ。

芸能の世界で「守破離」ともある通り、まずは「守-模倣」から始めるのだ。

グラフィックデザインであれば、好きなポスターを。
プログラマーであれば、好きなアプリやサイトを。
小説家であれば、好きな小説を(これは少し工夫が必要だ)。
料理家であれば、好きな料理を。

まずはこの模倣を実践機会をしよう。

「実践→理論」の条件 ”熱意”

ここでもはや当然すぎるスキル習得の条件についても触れておこう。

それは”熱意”だ。

特に「実践」から進むボトムアップ型のアプローチの場合、これが非常に重要になる。

厳密に言えば”熱意”ではなく、「熱意から生じる圧倒的”量”のトライ&エラー」だ。

ボトムアップ型アプローチは多くの失敗を積み重ねることで学習していく。まずはこのことを覚悟しよう。

そして、それを乗り越えるための武器はやはり”熱意”しかないのだ。

”熱意”があれば、多少方向を間違えようが、トライ&エラーを繰り返すことで正道に戻ってこれる。もしくはあらなた道を拓くかもしれない。

どうしても必要に駆られたスキルであり、特に“熱意”はない。という場合には、“熱意”を獲得する方法というものがあるにはある。
しかしそれはある意味、偽物の熱意ではあるので、できれば習得を見送るなどの措置を考えたほうがいいだろう。

応用性-コスパを考える

この考え方は、デザインやイラスト、小説や動画などのいわゆるクリエイティブ以外にも応用できる。

しかしここで考えるべきなのはコストパフォマンス、コスパ問題だ。

コストパフォマンス = パフォーマンス/コスト

上の基本式より、コスパを上げる方法は二つ、パフォーマンスを上げるかコストを下げるかだ。

トップダウン型とボトムアップ型では、トップダウン型の方がコストが低い。上の人が決定し、下はそれに従うだけの方が、運用上のコストは抑えられるのがイメージできるだろうか。

一方、パフォーマンスが上がる可能性が高いのはボトムアップ型だ(*ある一つの観点から考えた場合)。現場の人間たち全員が観察し、思考し、行動することで改善案やまったく新しい方向性を考えてくれる方が、トップ陣の限界に縛られないパフォーマンスが発揮できると言える。

この二項で考えた場合(両立が望ましいのだが)、スキル習得についてどう見るべきか。

焦点は「パフォーマンスの上限値」だ。

クリ系スキルの多くは、そのパフォーマンスに上限がない。全く新しい形でハネるかもしれないし、覚醒するかもしれない。そういうものだ。

だからコストを抑える方法よりも、パフォーマンスを上げる方法を優先し、ボトムアップ型を使っていきたい。

しかし例えば事務作業はどうか。

クリ系に比べれば、そのパフォーマンスには一定の限界があるように思える。ハネる時、それはテクノロジーが変わったときだろう。

こういったスキルの場合、コスパを上げたいのであれば、コストを下げること主眼に置くべきだ。
ゆえにマニュアルなど、トップダウン型アプローチによって効率的に学習していく方法が望まれる。

新しいスキル習得を考えた時、今回はどちらのケースに近いのか考えてみよう。もしかすると、同じスキルであって、状況によって当てはまるケースは変わってくるかもしれない。

今日は結構長くなった。
貴方のスキル習得に少しでも示唆を与えられたのなら嬉しい。




学習のアーティストを目指してます。学習ノウハウの体系化・学習体験のコンテンツ化を通して、学習者のレベルアップを手伝います。現状、お金よりも応援がほしい。