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錆喰いビスコ9巻を読んだ叫び

※ネタバレ配慮ありません、ご了承下さい。


感想

え? 錆喰いビスコってこんなに面白かったの?


 …なんか、超絶無礼な書き出しになってしまったのだけれど。それくらい、既刊とはなにかが違う? 鳥肌立ちまくり。作者の気迫というのか? それもそのはず、巻末あとがきでは、次巻で完結と予告されている。ああっ! 終わりに向かってしまうのか!! どうりでっ!! イヤ〜!!
 前巻までは様々なボスキャラと対決しつつ、その都度新しい力や必殺技を手に入れて、相棒猫柳ミロと共に強くなってきた主人公赤星ビスコだったが。「並行世界」の設定を使って、主人公が反転した自分自身と向き合う形に持ってきた9巻! 面白いですねえ。これまでに成してきたことの意味や影響について精算するという空気。果たして最終巻がどう帰結して行くのか。これだけはっきりと「続く!!」という感じは、四巻のとき以上ではないだろうか。

白時空と黒時空

 白時空と黒時空の構造が遺伝子のような螺旋状になっているってところが興味深い。作者さんが時々ツイッターでつぶやいていた「胞子の一つ一つが宇宙」ていうのもその辺につながって来たりして。
 時空を超えるっていう意味では、アニメ円盤付録のジャビさんのssがそれの一つになっているように思う。過去のジャビさんが、未来のビスコを見ていたアレ。だからンナバドゥが独占するものでは無くて、やっぱり胞子を扱うキノコ守りが特殊なのだろうなと。意志だけが次元を自由に行き来できる、のかもしれない。

超信力


 超信力が名前として出てきたのは6巻だった。しかしそれまでも、ビスコとミロはちゃんとその意志の力を使っていた。ミロの台詞で印象的なのは「ビスコが出来るって言うんだから僕にだってできる」と1巻で既に言っていたところだ。キーワードとしては未だ出て来ていなかったけど、初めて名前が付いたのが6巻てことだ。

あのハエを倒したい

 ンナバドゥが言う、超信力の裏側って話なら。6巻でミロは死んでいた? ジャビさんの最期は別のシーンだったってこと? 日光のお寺も、重油ダコも倒していなかった。そもそも、ビスコとミロが出会っていなかった? いやしかし、それは、ミロがビスコの相棒になったのは、ジャビさんが決めたこと、という風にも取れる。ビスコが持っていた意志の力が土台になって、ミロとの出会いがきっかけでコツコツと成してきた、ハッピーエンドの積み重ねなんだよ。
 結論、あのうざいハエ、倒したいね。黒革以来の腹立たしさ。良い悪役だ。

どうなる最終巻

アポロ粒子


 さて、次の最終巻で回収される可能性があるものはなんでしょうか?
 まずはアポロ粒子。3巻で明かされた、錆という脅威が生まれた経緯のアレです。なんとなくですが、錆とキノコについて改めて回収があったら面白いかなと。本巻で再登場の猫柳ドミノと、それから次巻で出てきそうな気配がある赤星アポロが関わる形で、そういうくだりがあり得るのでは? そもそもなんでキノコなのよ? ってことです。忘れがちだけど、3巻でアポロとドミノの会話に「キノコ」が出てきているんですよね。赤星と猫柳の先祖二人がわざわざお出ましの意味といったらそこなのでは…、と私は思うのですが。ンナバドゥの正体が、ビスコとミロの超信力によって現実には起こらなかった「滅び」の集合体だってことなので、過去の出来事を遡る流れもあるのかもしれない。そうなるとそもそもの発端であった、アポロ粒子に行き着くのではないかなあと思うわけです。

「相棒はずっと一緒?死ぬときも?」「そうだ」


 一巻の名シーンの一つ。こちらのビスコとミロの会話が巻末の次巻予告のアオリに使われている(嗚咽を堪える)。まあ、2巻の時の、未遂で終わって良かったねハラハラさせやがって!の流れみたいに、そのままそれが成されることはないかなあと。ただ何かしらの形で、もう一度二人のやり取りがあるのは確実でしょうかね。
 …いや、そのままそれが成されないというのは、私の切実な希望である。あまり泣かせないで欲しい。情緒がもたない。ビスコとミロにはいつまでも旅を続けてもらいたいんですよね。作者さんがツイッターで触れていた感じだと、今回の冒険が終わったその後、という形で語られる可能性もありそうだ。それはそれで、どちらにしてもエモい。本当に二人の旅が終わってしまうなら、と考えると、もうすでに泣きそうです。うわあぁー。
 何はともあれ、最後はどちゃくちゃ大団円が見たい。アニメ一期の最終回や、3巻のヴァージンロードみたいなのを、希望します。

「錆喰いビスコ」のすゝめ

 キャラクターが、良いです。特に主人公の赤星ビスコと相棒の猫柳ミロの関係性は、これぞブロマンス未満、と思えるような絶妙なものになっています。8巻時点で二人の間には子どもがいたりするのは、果たしてブロマンスなのか? とか考えるのは野暮なもんです。いいんです、ミロが口から産んだシュガーをビスコが認知したのだから。
 台詞の強さも魅力だなあと。軽妙洒脱、且つ力強い。
 私が今、ライトノベルとして唯一読んでいるタイトルです。ラノベとの接点が無かったので、アニメ化がなければ原作を読むこともなかったのだろうなと思うわけです。アニメを見始めたきっかけは、好みの波長が合うアニオタライターさんが、ちょっと変わってて面白いのやってると、おすすめしていたからだったなあと。ポストアポカリプスな「SF」と銘打っていたのが「世界観好みドンピシャありがとう」でした。さらに矢を打つとキノコが生えるという意味不明さ。何それ!? ってすごくそそられた。キノコは、生えるのではなくて、咲くんですよ。「ぼぐんっ」って。

ジェットコースターの余韻に震えながら次巻を待つ


 嬉しいことにアニメの第二期制作は決まっていると、そちらの内容が原作2巻にあたるはずなので、今回の9巻とリンクするところが多かったりする。ファンとしては天井無しで盛り上がる予感。とても楽しみ! もしかしたら二期放映のタイミング前後で最終巻が読めたりするかも??
 錆しいけれど、物語には終わりがある。思い入れが強い物語ほど、エンドマークというのは、読むときも、書くときも素晴らしい体験だ。
 作者さんには、体調にお気を付けて執筆していただきたい。最終巻、楽しみです。今は9巻の余韻を噛み締めて。

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