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会社のミッションと自分のミッション、どっちが大事?

人材エージェントとして、人材紹介の仕事をしていると、依頼企業から、求人情報についてヒヤリングをします。その際、経営理念やコーポレート・ミッションについて、お話をお聞きするケースが多くあります。特に、採用人数が少ない(1人とか2人とか)場合には、企業からは、経営理念やコーポレートミッションについて、共感できる方を紹介して欲しいとのご要望をいただきます。これは、これで、当然の要望だと思います。

組織を有機的に発展させていくためには、スキルがあっても、理念に共感していない人材よりも、多少スキルが足りなくても、理念に共感している方を採用するべきと思います。足りないスキルは、あとから教育すれば、一定程度の期間で身につく可能性はありますが、経営理念への共感は、個人の価値観に基づくものであり、あとから簡単に共感してもらえるようになるとは、思えないからです。

では、企業が定める理念への共感の基となる、個人の価値観とは何でしょうか? 実は、採用する企業も、候補者も、これが曖昧になっていることが多いように思います。
人材紹介の面談で、転職希望の方にお話を聞きますと、仕事を探す時、だいたいは、

・やりたい仕事(経験が活かせる)
・まあまあ納得のお給料
・通える距離にある
・残業等含めて、ブラックではない

くらいの項目で、次のポジションを探している方が多いです。
しかし、本当に優秀な方(言い換えると、ご入社してからご活躍される方)は、上記に加えて、もう1つ

・個人で実現したい【マイ・ミッション】を実現できる

を基準にお仕事を探されています。

個人の要望である【マイ・ミッション】なんて言ったら、面接で敬遠されるのでは?と思う方も中にはいますが、私の経験上、【マイ・ミッション】を持っている方のほうが、ご自分にとって、良い会社と出会い、活躍できるフィールドを獲得していると思います。

【マイ・ミッション】とは?

では、マイ・ミッションって何でしょか?
簡単に言えば、個人の仕事への価値観と言いますか、仕事をすることで得たいもの(あるいは状態)を表しています。
私の個人的な考えでは、企業によって異なりますが、コーポレート・ミッションは、やや抽象的かつ長期的な目標となっている場合が多いですが、マイ・ミッションの場合には、短期的かつ具体的に達成可能な目標と考えています。
同じ<ミッション>という単語ですが、少し対象としている時間軸に長短があります。

マイ・ミッションは、一人で決めて良いですし、自分にしか影響を与えないので、生活環境の変化などにあわせて、どんどん変化していきます。その点で、短期的かつ具体的に達成可能な目標であるべきと思っています。

マイ・ミッションの参考となるのが、アメリカの組織心理学者エドガー・シャインによって提唱された概念である、<キャリア・アンカー>です。

上記のWikiには、何やら難しい項目が羅列されていますが、要するに、キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択していく上で、絶対に譲れない軸となる価値観や欲求のことです。

先日の記事にも書きましたが、

リモートワーク時代に向けて、これから、働き方が、大きく変わると思います。コロナの話題が無事に収束しても、働き方は、アフターコロナから、ビフォーコロナ時代に戻ることはないだろうというのが私の考えです。つまり、

・長く働く   → 効率よく働く
・仕事は会社で → リモート当たり前
・メンバー協働 → ジョブ型で自分の責任を果たす

というスタイルに変わってくるのは必然だと思います。
こうなってきますと、より一層、個人として、仕事をすることで得たいもの(あるいは状態)が、重要になってきます。今までは、会社で、みんなで働いていたので、みんなと同じ目標と言うか、状態が基準となっていたと思いますし、日本人の美徳として、和を乱さず、だったと思いますが、こらからは、個人として、絶対に譲れない軸となる価値観や欲求が満たされないことには、何でその会社で仕事をしているのか、拠り所がなくなってしまいます。

キャリア・アンカーを平易に(勝手に)細分化してみました

前述のキャリア・アンカーでは、難しいことが書いてあったので、それを、短期的かつ具体的に達成可能な目標として、また、イメージしやすいように、当社独自に、整理してみました。それが以下です。

1. 高い役職につきたい

早期に「管理職」や「役員」になりたいと考えている。
会社全体の利益に貢献できる人材となり、社内外とも影響力のあるポジションで活躍したい。また、会社への利益貢献以外にも、仕事のノウハウを後輩や部下に伝えていき。人材育成にも貢献していきたい希望している。

2. 技術的に成長したい

仕事を通じて継続的に新しい技術の習得ができ、より高度で生産性の高い仕事ができる人材になれる環境を求めている。

3. やりたい仕事をしたい

自分がやりたい仕事かできる環境かどうかが、一番大事だと考えている。やりたい仕事があり、自分の持っているスキルで、自分ができる仕事を任せてくれる環境を求めている。

4. 安定している会社で働きたい

会社の経営が安定していて、安心して生活ができることを重視している。

5. 新しいサービスを作りたい

いつか、自分の手で世界を変えるようなサービスを作りたいと考えている。
今までになかったような新サービスを生み出せそうな環境を求めている。

6. チームワークで仕事がしたい

仲間と切磋琢磨しながら、チームで一つのことを成し遂げるような仕事ができる環境を求めている。

7. 個人の裁量で仕事がしたい

自分のやり方で仕事をきちんと進めていきたいと考えているので、仕事について信頼して自分に任せてくれる環境を求めている。

8. 正しく評価されたい

評価の基準が明確で、自分の行った仕事を適正に評価してもらえる環境を求めている。

9. 社会の役に立ちたい

社会貢献度の高い仕事に関わりたいと考えている。直接的でなくても、誰かの役にたち、間接的にでも感謝され、誇りを持てる仕事に関われることを期待している。

10. 年収を上げたい

年収をあげたいと考えている。会社に貢献して、社内での評価を上げ、昇給、昇格ができる環境を希望している。数年後には、自分が希望する年収に到達できそうな環境を求めている。

11. 副業OKなど自由に働きたい

副業が認められていることや、すきま時間を使って個人の名前で活動すること等を認めてくれる環境を求めている。

12. ワーク・ライフバランスを重視したい

リモートワーク、時短勤務などの制度が充実していて、仕事とプライベート生活の双方を充実させることができる環境を求めている。


全12項目あります。
ひとつを選ぶというよりは、3つくらい選んで、その時、その時の状況で、優先順位を入れ替えていくのが、正しい選択だとは思っていますが、読者の皆様は、どの項目が、最も大切ですか?

どのタイプが良い・悪いということはない

こうした項目は、あくまでも人それぞれの価値観を分類したものであり、「○○だから悪い」ということはないです。しかし、会社によっては、実現可能な場合と、実現不可能な場合はあると思います。

この12項目の中から、自分が大切にしたいものを選び、今回の記事テーマである【マイ・ミッション】として、それを基準に、会社選びが出来る方は、その後、ご活躍されているケースが多ですし、採用企業からも評価が高いです。
言い換えれば、企業理念に代表される社風や文化、社内の空気と、ご自分の価値観が一致しているからだと思います。

企業にとっても、これから更に、働き方への価値観が多様化し、同時に、人財不足が予想される中、会社にとって必要な人財が何を望んでいるのかを知ることも重要だと思います。

なんとなく(と言うと怒られそうですが)『当社の理念に共感していただける方募集』というよりは、上記のように候補者と同じ項目で、合っている or 合っていない と確認していただけたらと思いますし、その上で、事業や、社会貢献の部分で、経営理念や、コーポレート・ミションとの合致を確認してもらえたらと思っています。

働き方が変わり、社内のコミュニケーションのスタイルも変わっていく中、人を動かす組織としては、コーポレート・ミションを前面に、『この指とまれ!』というだけではなく、集まる個人の価値観【マイ・ミッション】にも相応に気を配り、個々のワークスタイルにあわせて、人材採用、人員配置をしていく事が重要だろうと思っています。

皆様の会社では、このあたり、現状はいかがですか?

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