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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2018年6月の記事一覧

Ben Marcus 『stay down and take it』

★★★★☆

 ハーパーズやニューヨーカーなどに寄稿している作家ベン・マーカスの短篇。長篇短篇あわせてこれまで4冊出ているようですが、翻訳版はない模様。
 なお、AirMap社のCEOに同名の方がいるようですが、まったく関係はありません(あたりまえですね)。
 ニューヨーカー2018年5月28日号掲載。

 雨が降ると、すぐに浸水してしまうところ(陸地から切り離されたちょっとした人工の島みたいな場

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マリオ・バルガス=リョサ 『楽園への道』

★★★☆☆

 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集Ⅰ-02。ペルーの作家バルガス=リョサが2003年に出した歴史小説です。

 19世紀に社会運動家として活躍したフローラ・トリスタンと、彼女の孫であるポスト印象派の画家ポール・ゴーギャンの二人を主軸にしています。
 一世代跨いでいるため、五十年ほど隔たりのある二人の生涯が、章ごとに交互に展開されていきます。

 ノンフィクションとのちがいがどこにある

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猫田道子 『うわさのベーコン』 後篇

☆☆☆☆☆

『うわさのベーコン』がただの下手な小説に留まらないのはどうしてなのでしょうか?

 ひとつは、とても丁寧に書かれていることです。

 作者は奇をてらうわけでもなく、また読み手を挑発したり、小説を揶揄する意図もなく、ただ素直に書いているようにみえます。自然に書いたらこうなった、という素朴さを感じます。
 です・ます調で書かれているのも、その語法がぴたりときたからでしょう。そうした点も、

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猫田道子 『うわさのベーコン』 前篇

☆☆☆☆☆

 2000年に太田出版から発売された短篇集。高橋源一郎がいろいろなところで絶賛していることもあり、手にとってみた次第です。

 えーと、正直いって、どういえばいいのか困ってしまいます。

 というのも、ふつうに考えるととても読むに耐えないものだからです。誤字脱字はもちろんのこと、言葉の誤用、文法の間違い、視点のブレのオンパレードです。基本はです・ます調ですけど、それすら統一されている

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Robert Coover 『Treatment』

★★☆☆☆

 御年86歳のロバート・クーヴァーの掌篇3篇です。
 ポストモダンの作家、寓話やメタフィクションの作家として知られているそうです。何冊も翻訳されていますが、僕は読んだことがありません。
 treatmentはおそらく「台本、シナリオ」という意味でしょう。
 ニューヨーカー2018年4月30日号掲載。

『Dark Spirit』
 舞台は撮影所です。美女と野獣の焼き直しのようなくだら

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