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プライシングと従業員満足

言うまでもなくプライシングは重要な戦略の一つです。顧客にとっては購買意思決定の基準になりますし、企業にとっては収益性に左右するパラメータになります。企業は、値下げして成約率の向上を狙うか、値上げして利益率の向上を狙うか、というトレードオフの中で最適なプライスを探し、より高い収益を獲得しようとします。

こういったプライシングの業績面・収益面での重要性はよく知られているところですが、実はあまり知られていないのが「従業員満足」におけるプライシングの影響です。以下に「値下げが従業員のやりがいやモチベーションに与える影響」という観点でいくつか挙げてみました。


オーバーワークの発生

値下げしたとしても商品仕様自体は変わっておらず、商品の提供のために従業員がかける労力は値下げ前と変わりません。必然的に回収する収益に対して過剰なコストをかけることになり、現場でのオーバーワークを生んでしまいます。

責任感やプライドの減退

従業員にとって値下げは自らの労働が過小評価されているということです。過小評価される環境で、目の前の仕事に高い責任感を持つのは困難なことです。従業員の責任感は薄れ、プライドも感じなくなり、仕事をタスクとみなすようになります。結果として製品の品質の低下を招くこともあります。

創造や挑戦のマインドの消失

値下げされた場面において「製品をより良くしよう」とか「もっと良いサービスを提供しよう」といった動機は働きません。従業員のモチベーションが上がらない中で企業が提供するプロダクトの質が向上することはありませんし、従業員自身の長期的な成長意欲も奪うことになります。

顧客の質の低下

大抵の場合、値下げによって獲得した顧客の質は良くありません。値下げしているにも関わらず、なお過剰な要求があるというのはよくあるケースです。このような顧客に接触した従業員の満足度や幸福度は、当然、低下してしまいます。それどころか、それ以降、顧客を満足させようとする意欲すら失ってしまうかもしれません。


値下げによって収益面で大きなマイナスがあることはよく語られているところですが、こうして見てみると実は従業員のモチベーションややりがいに与えるインパクトは小さくなく、長期的な意味ではこちらの方が大きな損失に繋がりそうです。

裏を返せばプライスを上げることに対して従業員自身がみんなで努力するということは、従業員のやりがいやモチベーションを高めることに繋がります。自分の価値を自分で決めるということは適度な緊張感もあり、価値を高めるための動機にも繋がります。

働き方改革や従業員満足に注目が集まる中で「プライシング」という切り口が有効なアプローチになるかもしれません。

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