バルーンファイトのバルーントリップモード攻略法と岩田聡社長について

Twitterに書いたバルーントリップの操作術をこっちに貼ってみます。いまバルーンファイトはSwitchOnline上にあって遊びやすい環境だから、ちょっとは需要あるんじゃないかと期待して。

↓のリンクは、8年前UPしたバルーントリップを快適に飛ぶための講座動画です。今みると何を作ってたんだと思うけど、当時このきれいなゲームを紹介したい気持ちが強かったんです。


うさんくさく響くかも知れませんが、誇張はなく、2つの動画で説明している構造を知って遊ぶと短期間に飛距離が5倍以上になります。初心者の方でもすぐ取り入れられるし、レトロゲームマニアの方々にとってもこの動画で説明されてる「裏」にはきっと耳新しいトリビアが含まれますので、ぜひご覧ください。

操作に慣れると、このように縛りプレイもできるようになります。

ここで重要なのは、私はそこまでゲームがうまい方ではないってことです。なのでこれはコメントで言われているほどの神プレイとはいえない。方法を知れば多くの人ができるくらいのレベルなんですね。慣れるのに時間は必要ですが。


動画なんて見てられないよという人のために。
バルーントリップの裏要素を図にまとめるとこういう感じ。

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この世界では、AとB、2種類の移動パターンがあり、垂直にうごけるAの方が垂直に上下する雷をよけやすい。だから常にAにいるように飛ぶと快適。と、つまりそれだけのことなんです。パターン移行のタイミングは左右へ羽ばたく回数により決まります(左4回加速するとA、右2回でB)。私はあるときこのゲームを毎日やることに決め、それから3ヶ月ほど経ってようやくこの法則に気付きました。

このように2つの座標モードがあり、それがいつにまにか入れ替わってしまうゲームを私はバルーントリップ以外に寡聞にして知りません。このとても珍しい要素がほとんど全ての人の盲点に入って、これまでバルーントリップはファミコン黎明期にありがちな、たいへん高難度なゲームであるとの語りでまとめられている。けれど理屈がわかればなんだそんなことかっていう手品みたいなもので、それほど複雑な話ではなかったのでした。

ここで興味深く思うのは、バルーントリップを開発された岩田聡社長のこと。
岩田さんはトリップモードを独力3日で仕上げたとか、脳内にコードを記憶していて、横井軍平氏に修正を依頼されたとき何も見ずにデバッグしてしまった(!)だとか、このゲームに関してもとんでもない天才エピソードが残されているのですが。有野課長とこのトリップモードをプレイした動画を観る限りでは、おそらく、ですが、岩田さんご本人は上記した構造を知らないで操作されている。もし知っていたら、すぐに上記の垂直移動状態に移ってプレイを安定させるはずだから。少なくとも私にはそのようにみえる。
プログラミングの大天才でさえ、自分の手品のタネに気づいていない。そしてそこにも岩田さんの凄みを見ることができるのではないかと思います。

バルーンファイトの挙動は岩田さん独自のプログラムであり、ご本人は小数まで含めて入力してみた結果こうなったと説明されています。それは当時のゲーム業界における画期的な発明であり、キャラクターのあまりに滑らかな動きをみて驚いた任天堂の開発者たちが教えを乞いに訪ねた(当時岩田さんは任天堂の社員ではありませんでした)という逸話があるほどです。その不思議な浮遊感は、同じく岩田開発のピンボールやゴルフにも見られ、のちに技術を伝えられた開発者によって初代スーパーマリオブラザーズの水中面に活かされることになりました。

ピンボール。このゲームのボールはフリッパーで止めても完全には静止しない


直線的な動きから、割り切れないゆらぎへ。岩田さんはプログラムに新しい不確定要素を垂らし入れた。という意味でゲームの進歩を促進した代表的なひとりに数えられるのかも知れません。そして、それは作者すら気づけないほど奇妙な二重構造をテレビの中につくりだした。この状態をさして、ゲームそれ自体が生きはじめているようだ、まるで子供のように──というのは言い過ぎでしょうか。岩田さんは生前、プライベートで遊ぶゲームは何ですか、という質問にまずバルーントリップをあげられていました。

と説明してみたけど、なぜこういった特殊な構造がうまれたのか、具体的なところは理系に疎い私にはわかりません。おそらく挙動の割り切れなさを重視した岩田プログラムと強制スクロールがぶつかった事故みたいなものだったんじゃないかと想像するけど。そういうのに詳しい人、よかったら教えてください。

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