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先のことなんて、自分でもわからなすぎて②

職場復帰への思いの変化

息子が生まれる前、私は「できるだけ早く復帰して、バリバリ働くママになろう」と思っていた。それがこれまでお世話になった会社に対して、みんなに対して、果たすべき責任であるかのように"勝手に"思っていたから。

12月生まれの息子は、生まれる前に4月入園の保育園の申し込みをすることになる。夫とともに申込用紙を前にして、初めてふと思い留まった。「この頃は生後3か月か…」「ほんとうに…このタイミングで…入れる?」「…ちょっと、一旦、延期しようか…」二人で用紙を片付けた。まだ顔も見ていない息子の生活、息子との生活を今から決めることは、私にはできなかった。

里帰りを終えてすぐに会社に出産報告に行くと、手伝って欲しいことがある、と声をかけていただいた。生まれたばかりの赤ちゃんとの生活は、細切れに忙しくて、それでいて単調。生後二か月の赤ちゃんを抱っこしてミーティングに参加させてもらったり、お昼寝中に資料を読んだり、という時間は、「母」ではない「私」を呼び起こしてくれる懐かしい刺激で、それでいて子供との時間が減ることもなく、本当にありがたかった。

その一方で、いつ本格的に復帰するのか、自問し続ける日々だった。どんどん成長する息子は、かわいくなる一方で、息子と離れることへの抵抗心はどんどん強くなっていった。

こんなに恩を受けてばかりの会社に、これ以上わがままを言うわけにはいかない、と何度も自分を奮い立たせては、保育園の申し込み書類に目を通して涙が溢れ、散歩中に保育園を見つけては胸が締め付けられるような感覚に襲われて、足早に通り過ぎるようになった。

息子が10ヶ月を過ぎたころ、ようやくある意味でのあきらめがついた。私は生まれてこのかた、両立なんてできた試しがない。両立どころか、一つのことに熱中すると、それだけは誰よりも力を尽くし、しかしそれ以外のすべてに極端に身が入らなくなる。これはもう、特性というか病気というか、変えることのできない私そのものだから。

今の私にとって、その”夢中になっている一つのこと”は紛れもなく子育てだ。この気持ちを抑えて復帰しても、仕事のパフォーマンスは上がらないし、誰も幸せにならない。だったらもうこの宝物のような日々を、心ゆくまで大切にしよう。そう決めた瞬間、ずっと縛られていたものからすっと解放された気がした。

しかし、同時に今度は「裏切り」という言葉が自分自身に重くのしかかってきた。みんなの期待に応えられない自分。これだけ恩をいただいて、返せない自分。こんなに考えてもらっているのに、結局自分の都合だけを考えてる自分。考えれば考えるほど自分を責めるので、私はその気持ちに、そっと蓋をした。

その「後ろめたさ」「裏切っている自分」に蓋をして生活をしていると、周囲の他意のない、何気ない言葉に過剰に反応する。社内の色んな言葉が、私に入ってくる手前で勝手に”矢”となり、心にぐさぐさと刺さった。

ちょうどその頃、息子は歩くようになって子連れでのミーティング参加も難しくなり、お昼寝の時間も減ったため仕事の時間も取れなくなり、手伝わせていただいていた仕事をお休みすることにした。それが、息子の初めての誕生日の、一週間前のこと。


次の記事に続きます。


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