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「女が男を変えていく」新たな「純愛」現象の予感

単なるSM官能小説映画かと思いきや・・・

公開:2015年2月 製作国:アメリカ 監督:サム・テイラー=ジョンソン


とにかくサントラが、とてつもなくイイ!

50カ国以上で翻訳されて、累計1億部を突破した大ヒット官能小説の映画化が7/2にレンタルがスタートしたので、家族がいない日中に静かにiTunesで鑑賞。
実は前から、音楽を通じてこの映画を「なんだこりゃ?」レベルで知っていました。
普段、いろんなジャンルの音楽を聴いているのですが、気の滅入るときや”不遇をかこって”いるときなど、強い意志を感じる女性ボーカルでガツンと気合を入れるようにしていて、そのときも90年頃によくアメリカで聴いていたAnnie Lennoxの「I Put A Spell On You」をダウンロードしたときに、この映画を知りました。

このサントラは、ウィークエンド、ジェシー・ウェア、エリー・ゴールディング、 ビヨンセ、シーア、フランク・シナトラなど豪華なアーティストが並んでいて、映画よりも音楽がまず買い!ですね。
もうこの曲が頭に来ている時点で、この映画の最後言わんとしていることを暗示しています。
ぜひとも、まずはAnnieの一発から。


豪華アーティスト集結!「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の妖艶、魅惑の音楽まとめ

【収録曲】
1. I Put a Spell On You – Annie Lennox
2. Undiscovered – Laura Welsh
3. Earned It – The Weeknd
4. Meet Me in the Middle – Jessie Ware
5. Love Me Like You Do – Ellie Goulding
6. Haunted (Michael Diamond Remix) – Beyoncé
7. Salted Wound – Sia
8. Beast of Burden – The Rolling Stones
9. I’m On Fire – -AWOLNATION
10.Crazy in Love (2014 Remix) – Beyoncé
11.Witchcraft – Frank Sinatra
12.Where You Belong – Vaults
13.I Know You – Skylar Grey
14.Anna and Christian – Danny Elfman
15.Did That Hurt? – Danny Elfman



ターゲットはポスト「トワイライト」ファン?

さて映画のお話の前に、もうひとつ言っておかないといけないことがあります。

この原作本は、最初に言ったようにとてつもない大ヒットです、世界中で、はい。

それも読者のほとんどが女性。ティーンの間で一大現象となった「トワイライト」のファンにむけて書かれたものだということですが、こんなのを10代の中高生女子に読ませるのか!と、娘をもつマミーとしてはまずはここでイエローカードです。

そもそもBDSM(Bondage, Discipline, Sadism&Masochism)のご主人様&奴隷をベースにした恋愛小説は、欧米では「マミー・ポルノ」と呼ばれているらしく(これって昼下がりに主婦がかぶりつきで見てるからこうなったんですかね?)オンライン小説として発表されたのが火がついて、大出版社ランダムハウスが版権を買い取ったというもの。
いったいいくらで買い取ったんでしょうかね?

続編もあるっているからすごいっす。「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「フィフティ・シェイズ・フリード」と、そのマーケティングは「トワイライト」シリーズとそっくり。

なぜこの映画を世界中の女子が注目しているのか?

ではでは、やっと映画の中身なんですが、変わった性癖(つまりBDSM)をもつ愛を知らない若き富豪の青年と、男を知らずに恋の経験もない女子大生の恋愛を描いておるのですよ。
が、それはほれ、若くてイケメンで金持ちという設定は何千年たってもお約束。縛られて、鞭で打たれて、拘束されてなんていう日本でもときどき起きる事件でも、相手がイケメン x とてつもない富豪 x 性格はイイという条件でないと、こんな白昼夢も成立しないと、まず男性は肝に銘じること。

「やっぱり女はみーんな性奴隷に憧れてるんだろ〜」と勘違いするバカ男がいるからね。

ではなぜこの映画が世界中の女子が見ているのか?

ここで思いだしたのが、フランス文学の名作「O嬢の物語」。映画化もしたが、特に気品のある原作は女性からは厚い支持を得て、SMだが究極の純愛という倒錯の極みの美学の世界で有名。どれどれ、O嬢と比べて見てみるかと見始めたのだが、いろんなことが気になって仕方ない。


金やルックスで妥協して好きでもないセックスなんかしない

まずは、契約書の存在。アメリカらしいと思ったが、原作はイギリス。しかしなかなか女子大生はサインをしないところがミソなのです。
イケメンでヘリコプターでデート、ポーンと車(アウディ)を買ってくれちゃって、趣味のいい高価なドレスも知らぬ間に用意してくれるパターンは、「プリティ・ウーマン」(1990年公開)と同じ。
でもクールで冷静(同じか)などこか影のあるイケメンだからこそ、万が一のことを考えての契約書なのかもしれぬ。しっかし、この契約書にセックスの手法と言葉遣い、時間、飲酒や喫煙、ドラッグの禁止、ダイエット食品の摂取などが事細かく書かれているんだな。これはいい、これはダメとまるで仕事の契約書交渉のように女子大生が検討していくにつれて、この女子が今までの「プリティ・ウーマン」やO嬢とも違った方向へ転向していきます。

つまりは、あんたが「快楽」っていっているのがどんなものか、ちょっとやってみなはれ→なんじゃ、全然よくないじゃん→あんたは好きや、けどこんなこと痛いし、全然おもろくないやん。唐突に関西弁になってしまいましたが、要するにそういうことなんですー。

それより、イケメン君の養育歴に問題ありで、虐待されてきたんじゃないだろうかとか、売春婦で薬中で彼を4歳のときに捨てた生みの母へのトラウマ、子供のときにSMを仕込まれたという年増女との関係性など、心理問題山積みの彼をなんとかしてやらんと!と考えて、最後にお別れするというのが結末です。

よぉーし!男前!よくやった、2000年代の女子はこうでないといけませんよ。
物事の本質を、金やルックスで妥協して、好きでもないセックスなんかしないよと決意をした女子の話、端的に言うとそういう映画です。

そして、続編に続くわけです。彼女がSM癖の青年富豪をどう変えていけるのか?
そこに世界中の女子が注目している。
あんなこと、こんなことをいやらしくやってて、モザイクかかってるけどどーなの?みたいなコメントが多いけど、本当はここまで感じてほしいなぁと。