窪田あきな

書くひと、撮るひと、歌うひと。/2020.4.29〜

窪田あきな

書くひと、撮るひと、歌うひと。/2020.4.29〜

最近の記事

凪ぎの、 その瞬間は美しいそれだと、信じて疑わなかった。 人を恨むなと教えられてきた。 人を愛せと説かれてきた。 そのままに生きて、この場所に立って、 そして何もない。ここには何もない。 波風の立たない水面のなんという美しさよ、 そして、 なんという虚しさよ。 ここには何もない。 喜びも、愛も、怒りも、渇望も。 凛とした水平線は切っ先のように静かで、 空々しく、息が詰まるようで。 私はそこに立っている。 まるで他人事のように。遠くの果てを見遣りながら。 嗚呼、胃

    • この新しい始まりに

      目標を達成するという強い意志が、 このところ、足りなかったように思う。 —————— 思えば合唱なら演奏会とか、小説なら〆切とか、 なにかをするだけで、どこかの組織に属しているだけで、 おのずと何かしら成すべきことが出来てくるものだ。 それは責任であると同時に、受動的な意識を以て無責任にもなってしまう。 考えなしに生きていたって、誰かが勝手に道筋を作ってくれる。ゴールを作ってくれる。自分はそれに沿って、歩いていれば良いだけ。 誰かに寄りかかって生きていればいい。 本当

          漢一匹、パンケーキ。

          漢一匹、パンケーキ。

          汚れしごと2

          汚れしごと2

          ざわめきに、休息。

          ざわめきに、休息。

          鳩血色に揺蕩う空虚

          吐いて。吐いて。吐いて。吐いて。 何も残らない自分の空虚を思う、文月は暮れのこと。 —————— 知識も経験も申し分ないけれど、 そんな柔らかなフォローと、明確な不採用のメッセージ。 ガラスの画面に映る無機質な拒絶の意思。 始めて一月になる転職活動は、 えぐるように、刻むように、自分の無力を暴きだしていく。 それでも積み重ねてきたものがあると思っていた。誇れる何かを持っていると信じていた。 その現実が、この無様だ。 必要とされる何処かを求めて彷徨い、自らの行き先も見

          鳩血色に揺蕩う空虚

          静寂は望みと共に

          東急田園都市線、と言うらしい。 そんな、なんとなくハイソが香る名前の電車。残念ながら全く縁もゆかりもない人生である。 それがなかなか、どうしてこうして。 ひょんなことで渋谷(これも別の意味で縁のない)から件の沿線の列車に乗り込み、 珍しい用事から解放されたのは、昼を少し回った頃だった。 このまま帰宅しても良いけれど、せっかく無い機会だし、どこかに寄りたいような、帰りたいような。 なんて、途方に暮れる視界に飛び込んできた案内板。初めての、それでいて見かけた記憶のある名前。

          静寂は望みと共に

          幸福について

          嗤ってしまうほど何も上手くいかない日はあって、 そんな書き出しを以前もした記憶があるけれど、 今日もまた、そんな一日が巡ってきたのである。 —————— 通勤前に寄ったクリーニング屋が時短営業でまだ空いていなくて、 それならばと朝食を摂りに入った喫茶店で、サンドウィッチの中身をスラックスにこぼした。 仕事は仕事で珍しく良いことがあったと思ったら、 その作業途中のしょうもないミスに気づかず、あとでまぁまぁの大目玉を喰らったり。 開店時間を調べておけば良いのだ。皿の上で

          幸福について