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ドキュメントとしての表現

「ドキュメントとしての表現」
埼玉会館第二展示室
2022年1月12日(水)~16日(日)

来月、展覧会で兄の作品が展示されることになりました。福祉関係の方にお声をかけていただきましたが、障がい者アートというジャンルになるのでしょうか。色々と思うこともあり、せっかくなので徒然と書き出してみます。

これまでNote でも書いていますが、兄は20代の頃から統合失調症を患っていました。症状が落ち着いているときは日常生活も普通に送れますが、ストレス耐性が弱く、急性症状を発症してしまうと入院することもあります。父が亡くなってからは兄の面倒は母任せになっていましたが、母も30年来の透析患者です。つまり実家では障がい者同士で介護をし合っているという訳です。

ここ数年、緩やかに任されつつある母から娘への介護の世代交代は、わたし自身がなかなか受け入れることができませんでした。正直を言うと「できれば(兄には)関わりたくない」と思っていたからです。そんな私にかすかな希望が見えたのは、数年前に兄がデイサービスで絵を描き始めた頃です。あまり会話をすることがなかった兄と、絵を通して色んなことを話せるようになったのです。

よく言われることかもしれませんが、障がい者に対して「障がい」を感じるのは、そこに壁をつくっている自分自身なのでしょう。兄と話していてよく思うのは、いかに私が自分の常識や偏見にがんじがらめになっているかということです。そこに気がつくと、自分で壁を外すことができ、いくらでも兄と対話ができるようになるのです。いまや、わたしも兄の「幻聴さん」とお友達です(笑)。

このような家庭を支援してくださる方々には本当に助けられています。かつての自分のように、「できれば関わりたくない」と思うのが当然という人もいるでしょうし、経済が困窮してしまえば、弱者が切り捨てられるという構図も理解できます。でも最近は、「できれば関わりたくない」と思っている人と自分とのあいだに壁を感じるようになりました。

生きていると色んな壁があると思いますが、そうした壁(障がい)の向こうには、かならず何かおもしろいことがあるのです。今回の展覧会は、そうした思いの中で、とてもありがたいお話しでした。展示する作品の良し悪しは見ていただく人にお任せするとして、兄の作品を、同病者や、そのご家族に見てもらえると思うと、とても楽しみです。

(展覧会のホームページ)
https://skk-support.com/project/document_2022/

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