見出し画像

【読書】ピエール・ルメートル/監禁面接

ルメートルにハズレなし

ありえない設定、展開、でもリアル、身につまされるシチュエーション、最後に訪れるのは幸福か、絶望か…

ピエール・ルメートルの監禁面接です。

出だしはゆっくり

残念ながら我が愛すべきカミーユ警部シリーズではありません。主人公はリストラされた人事部長。50歳前半(やばい、私と近い設定)。

家族のため必死になって朝から物流会社のバイトもこなしたり、他にもいろいろ応募はしてみるものの、なかなか次の仕事が見つからない。

そんなある日、嫌な上司にけつを蹴り上げられた主人公は、なぜか暴力的になってきていた最近の言動が頂点に達したのか、上司に強烈な頭突きをお見舞い、病院送りにしてしまいます。思い出しますねぇ、人種差別的な言葉に切れたサッカーのジダンの頭突き!

でもそれが原因で裁判をおこされて、さらに状況は悪い方へ。

ファミリーマン

彼にはすごく良い奥さんがいました。旦那さえいればいい、というすごくいい人です。本当はそれだけあれば貧乏でも幸せな日々がすぎせたかもしれません。でもそれじゃあ小説は成り立たないのですね。

主人公は稼がないといけないという必死の思いからある応募案件にすがりつきました。試験をパスしてわかったこと:ある会社のすごくシビアなリストア案件を任せられるプレッシャーに強い人を選びつつ、合わせて人事副部長と選ぶという二重の選抜試験で、その試験というのが仮装の監禁事件を起こして極限状態の中から強い人間を選ぶというものでした。

緻密な計画

主人公は人事畑を長く務めていただけあって、どんな目で接すれば良いか、相手を見極めんとしますが、ここから彼の言動は上記を逸した行動になっていきます。ちょっと考えられない行動力なんですが、それだけ追い詰められていたということなんでしょうけど。

対象が誰になるか調べだし、お金を工面して攻め所を調査します(酒癖、おかね、女、変な趣味、とにかく弱みを見つけようとします)。

そして監禁事件を知らないという点でも監禁事件を担当していた元刑事にアドバイスをもらうなど着々と準備を進めていきます(この辺り本当に凄い執念です)。

さて監禁面接が始まりました。対抗馬は他に3人いるはずが、事前に雇われていたバイトに手を出した担当のチョンボで本命と1対1で選考に臨むことに。

いざ始まるとインタビューが下手な本命にぶち切れた主人公、仮の監禁面接に本物の銃を持ってのっとってしまうんです、おいおい、そういう展開?それはあかんやろー!

でもそこには彼が事前に考えた緻密な計画があったとは誰も気づかないのです、この時点では。

語り手

いつものことですがルメートルさんの小説は読み手を飽きさせません。1部、2部、3部と語り手を変えてきます。

1部は主人公、2部は監禁事件をコーディネートしているプロ、3部はまたもや主人公の視点で話が進みます。こうしたそれぞれの考え、視点で物事が進んでいくのを読むの、結構好きなやつです。

壮絶な駆け引き、ラストスパート!

2部、3部と進むにつれて主人公は様々な状況に置かれながらもいろいろと駆け引きをしていきます。弁護士の娘、奥さん、プロのコーディネーター、とにかく何もないただのおっさんがものすごい工夫をして勝手に戦いを挑んでいく姿は、ちょっと狂っているんじゃないか、とか、そこまでせんでも〜と思えるのですが、すごいです。まあ人の命がかかってきたら、なりふり構っていられないんでしょうけど。

ぜひラストスパート、どうやってかたをつけるか読んでみてほしいです。

おすすめ度:★★★★☆(ルメートルにハッピーエンドはないんだけど、エンドに関してはもう一工夫ほしかった!)

この記事が参加している募集

読書感想文

よろしければサポートをお願いします。もっと突っ込んだレポートを書いていく足しにしたいと思います。