分子生物学の基礎知識(ターボ癌関連)

AKIRAです。
本日は、少し難しめのお話をしようと思います。


最近話題のSV40プロモーター

SV40プロモーターってありますよね?
なんだかすごく盛り上がっていて「ふうん…」といろんな人の話を見聞きするんですけど、ちょっと節操がなさすぎる発言等もありますので、今回はこの話の基礎知識についてのお話になります。

そもそもプロモーターとは


図1 遺伝子の基本構造

図1をご覧ください。
すべての遺伝子が必ずしもこうなっているわけではありませんが、遺伝子の構造はおおよそ、これが基本です。
各部位について解説します。

プロモーター・・・
遺伝子の転写を開始する場所。生物種ごとに配列が違う場合がある。
エンハンサー・・・
転写の調節を行う領域。簡単に言うとアクセル役。
プロモーターの上流、もしくは下流のどちらかに位置する。
遺伝子・・・
遺伝子の情報が入っている場所。
ポリAなど末端配列・・・
遺伝子が分解したりしないようにふたをする役割の配列。機能的な意味はあまりない。

このように、遺伝子のワンセットには各部位に役割があるのです。その中でも今回のSV40というのはプロモーターのことになります。

なんでSV40→がん化?

まあ、おそらくSV40プロモーターががん化の原因であるという主張の根拠は、おそらくこのプロモーターの由来であるウイルスががんを引き起こすから、というものなんでしょうが、そもそもSV40プロモーターとSV40は同じではありませんからね

あくまでもSV40というウイルスが採用しているプロモーターだからSV40プロモーターなわけであって、プロモーター単体では何の影響もありませんよ?

そこから目をそらそうとしてませんか?もしくは本当に知らないだけ?
まあ、どっちでもいいんですけど。

ターボ癌の病態について

それよりも問題なのは、今の医学がターボ癌をヒトの新規病態として認識していないことです。
古典的ながんというものは腺がんを除いて急激な発達はあまり起こさない傾向になるようですが、この古典的な病態が、がんの病態のすべてであると勝手に決めつけてかかっているようです。

もう手に負えませんね。馬鹿に付ける薬はないとはまさしくこのこと。
そもそもがんの病態をきちんと評価したいのなら、最低限組織病変の評価が必要です。
具体的に言うなら、病変組織に組織染色でがん特有の異形成像をしっかりと示す必要があります。なんで検証しないのか。都合の悪いことでもあるんですかね?

こう言ってはなんですが、ターボ癌の発生メカニズムを推測することはそこまで難しい問題ではないと私は判断しています。
あとは、実際に組織サンプルと細胞のサンプルの両方で再現がとれるかを検証すれば良いだけ。そこまで躊躇する理由はない案件でしょう。

考えられる可能性

プロモーター起因の病態ではない、と申し上げたところですが実際に変な悪性腫瘍のケーススタディはそこらじゅうで挙がっている。

こうなると、何かしらに原因がある病態であると考えざるを得ないでしょう。それがワクチンによるものだとすればなおさら。(いろいろと厄介な輩もまたわいてきているようですが)
私は、以下の2点が現状原因として怪しいポイントだと考えています。

  1. modRNA自身が引き起こす特定の遺伝子発現の変化によるもの

  2. 発現制御が効かなくなったスパイクタンパクによるがん関連遺伝子の発現促進

1について。
RNAワクチンに使用されているRNAが生体由来のものではないことはすでに過去の記事で述べました。そして、その影響についても同様です。RNAが細胞の中に残存することで起こりうる可能性の一番高い現象について、私は「細胞がスパイクタンパクというゴミがあふれたごみ屋敷になる」可能性とその恐ろしさについて簡潔に記事にまとめたと思います。

これは、RNA→タンパクという当たり前の細胞学的な現象が起こった場合のリスクですが、RNAそのものが細胞に対して悪さをしないとは限りません

1の可能性について:RNAの役割はタンパクを作る情報体というだけではない

non-cording RNAという概念があります。
これはタンパク質のもととなる情報がないRNAのことを指し、一般的にはRNA→タンパクの反応を制御する役割があることで知られています。

つまり、DNAの有無だけが遺伝子の発現を制御するわけではない、ということです。ワクチンのRNAはスパイクタンパクを発現するため、non-cording RNAではありませんが、その類似の現象が起こらないとも限りません。

あるとすれば、細胞増殖を抑制する遺伝子のRNA→タンパクの反応を阻害してしまう可能性でしょうか。
通常、細胞は増殖を抑えるための遺伝子をいろいろ持っていますが、そこから転写されたRNAのいくつかに配列の類似したものがあると、modRNAとくっついてしまって、タンパク合成が阻害されてしまう可能性があります。

そうなると細胞増殖を抑えるためのタンパクが作られにくくなるので、当たり前ですが細胞増殖は促進されます。これが新しい癌の病態であるかもしれません。

2の可能性について:スパイクタンパクが発現制御因子?

こちらは、スパイクタンパク自身が何かしらの遺伝子の発現制御因子になってしまう可能性です。発現制御因子とはどういうことかというと、例えば癌の原因になりそうな遺伝子の発現を増加させたり、逆に減少させたりする因子を指します。減少であれば問題ないのですが、増加させてしまうとターボ癌を誘発する原因となることは十分考えられます。

遺伝子発現を調節するには、当然その因子が核内に移行する必要があります

まあ、こういっては何ですが、そもそもスパイクタンパクは細胞膜表面に発現があることが確認されていることを考えると核内で悪さはできないんじゃないの?といった疑問も持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、作られたタンパクが100%細胞膜表面に発現するかどうかの検証はされていません。一部が核内移行している可能性は十分にあります。

つまり、以下のような現象が細胞内で起こっているかもしれないのです。

  1. 細胞内に導入されたmodRNAがRNAセンサーをかいくぐり、スパイクタンパクを過剰に発現

  2. そのうち、一部が細胞の膜表面へと輸送され、また一部は核内へと移行

  3. 核内へ入ったスパイクタンパクはc-mycなどのがん関連遺伝子のプロモーター上流または下流に位置するエンハンサー領域に結合し、遺伝子発現を促進

  4. 1から3までの現象が一部の微小組織内の細胞で同時、または非同時期に発生し、がん化した細胞がバイスタンダー効果(※)によって急速発達

  5. いつの間にか十分に発達したがん組織が成立。

※バイスタンダー効果とは、遺伝子導入の影響を受けた細胞の周囲の細胞まで同様の影響を受けること。

これならば、現状考えられる病態メカニズムとして十分考察可能な範囲でしょう。
ゆえに、これから人類がやるべき検証は以下のようになります。

やるべき検証

  • 急速に発達した可能性のあるがん患者の組織を生検でとってきて、できるだけ多くの免疫染色データを取る。(Nをかせぐ)

  • そのデータをもとに培養細胞にmodRNAを導入し、同様の結果が得られるかどうかの再現性を検証。

  • Ki67などの細胞増殖マーカーやSkiなどのがん原遺伝子の発現量(modRNA vs LNP only vs No treatment)を検証。(qPCRと染色の両方を検証できるのがベスト、というか必須)

こんな感じでしょうか。
すごく難しい内容になってしまった…

おまけ

ここから先は、専門家向けの内容になります。
興味のある方はお読みください。

ベクター技術が医療応用しにくい理由

ベクターの技術は皆さんもご存じの通り、医療に応用されているものはかなり限られています。
当然ですが、この理由は考えればわかるレベルの話です。

まず、何かしら発現させたい遺伝子が長期間にわたって安定発現させる必要がある場合。今の技術では安定発現株を作製する実験手法と同じ手法をとることとなります。
その場合、明らかにゲノムへの影響がありますので言うまでもないですが遺伝子組み換え技術です。ウイルスベクターを使った技術なんてその代表格といえるでしょう。
しかも、CRISPRなどの組み換え技術はともかくとして、ウイルスベクターの場合、プロモーターがレンチウイルスやアデノウィルス由来だとほぼほぼサイレンシングの影響を受けますので、利点なんてほとんどありません

そして、一過性発現の場合。ウイルスベクターを使わずとも発現を誘導することは可能ですが、効率が悪く、何より一時でも遺伝子プロファイルを書き換えてしまうリスクは思った以上に高いと考えていいでしょう。
生命科学を長くやっている方ならわかっていただけるとは思うのですが、遺伝子導入で細胞のフェノタイプが均一になることは稀です。もし均一性が保たれるのであれば抗生物質によるセレクションなんて必要ありませんからね。
特に、トランスフェクションの系であれば、導入前に力価測定もできませんし、医療応用できるだけのセーフティがあまりにも欠如しているのです。

しかしワクチンでは評価が不十分だった

一方、modRNAワクチンでは、細胞によるトランスフェクションでタンパク発現レベルの評価が一切行われていません
やったのは、細胞でちゃんと発現するかどうかだけ。
しかも導入される細胞は非特異的で個々の細胞における遺伝子プロファイルも全く調査をしていない。

これで全く違和感を覚えないなら、それこそどうかしている

何なら安全評価に利用された指標もどこまで使えるかも曖昧。

最初のファイザーワクチンの有効性を計算した値も、95%とは言いつつ、実際は43548人の被験者のうち非接種者、接種者で半分に分けてそれぞれ21728人、21720人のうち感染した人数がそれぞれで162人と8人。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2034577

ここから、感染した170人を分母にとって、感染した人のうち非接種者が162人だから、(162/170)*100で約95%。
……43000人いて、たった170人の感染者?
気は確かですか?小学生でももうちょっとマシな計算しますよ。

安全性評価(笑)

失笑。
遺伝子発現にかかわる技術なんて、遺伝子工学で当たり前に学ぶ技術です。

ホント、これで大真面目に「有効性、安全性を保障」って言ってるんだから救いようがないですね。


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