見出し画像

NHK文芸選評への投稿作・11月

今回から各選者の好きな作品を3首、3句づつ掲載していきます。


11/3 俳句 選者:北大路翼先生 兼題:湯冷め
投稿句語順入れ替え湯冷めかな
地球いま月の前なる湯冷めかな
湯冷めせり葉書売るコンビニ何処いずこ

※北大路翼さんは編集から給食のおばちゃんに転職したという変わり種の方。こんな経歴の、しかも小学5年生時に種田山頭火の影響で俳句に目覚めた方の詠む句がおもしろくないわけがない。御句、次々読みたくなる引き込み力半端なし。

ゴミ捨て場飛び出してゐる破魔矢かな  北大路翼
太陽にぶん殴られてあつたけえ  北大路翼
問診に嘘少しまぜ春の昼  北大路翼

2句目。何か注意されても怒られても悪口言われても平気の平左な人って、いますね。以前はいちいちモヤっとしてましたが最近ではこの生き方は正解かもと思えてきました。


11/10 短歌 選者:山田航先生 兼題:忘れられない人
家族より自由を選んだお父さん うん 正解と思えり今は
好きですと手紙と共に渡された籠の花 籠は鍵入れとなる
そのほくろ絶対取ったらあかんよと人に言はれき難波駅にて

※2首目は遠い遠い、遠~いむかしのこと・・・ハハハッ。これが初めてもらったラブレターというやつでした。

※3首目。顔のある部分に少し大きいほくろがあります。小学校低学年の頃、祖母と一緒に国鉄(今のJR)難波駅のへんを歩いていたら知らないおばさんから「そのほくろ絶対取ったらあかんよ。この子を守ってくれるほくろやから」と言われた。祖母が何と返したのか覚えていませんが、あれは何だったのだろう。そんな思い出があって、自分でも特に好きなほくろです。

水飲み場の蛇口をすべて上向きにしたまま空が濡れるのを待つ  山田航
ふるさとがゆりかごならばぼくらみな揺らされすぎて吐きそうになる
山田航
アヌビアス・ナナ水槽に揺れてゐて ナナ、ナナ、きみの残像がある
山田航

山田航さんのお歌は、本を包む薄い紙のような繊細さを感じます。3首目よくわからないままに好き。水草の名前からナナという女の子を思い出してしまったんですね。恋してる時は何を見ても聞いても好きな人に結びつけてしまう。


11/17 俳句 選者:佐藤文香先生 兼題:狐
天涯孤独犬食えるなら狐も亦
宮さんに真対ふ狐かくれんぼ
結んだ手ひらけば芒狐道
もの言へば狐の貌となる老母

こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに  佐藤文香

番組で紹介されたすごく好きな句。知人とのスカイプのやり取りと仰っていましたが、逢ふ、なので私は勝手に相聞句と読みました。この句がいいのは「こゑは消えるのに」って逆を言ってるんですよ。つまり好きな人の声は決して消えないので、逆により強調されて余韻が残る。

雨粒に光の憩ふ焼野かな  佐藤文香
あなたゐる夢の淋しさ靄の街   佐藤文香

あなたがいる夢の方が、いない夢よりも淋しい。一人より二人でいる時の方がなぜかさびしいと思う感覚。


11/25 短歌 選者:小島なお先生 題詠:私の癖
旨いパン屋あまたにあれどわたくしは不味いパン屋を見つけて嬉し
不味うてもいいよしんどい早よ入ろほんとにまづけりゃ歌にするくせに
大学をえばカレーが鉄板で旨さで測る大学ランク
すみません行方不明にたまになるよ怒りを小出しに出来ぬ性分

4首目はネットというよりも現実生活で、ということで。
パン屋の歌は入選で本日放送していただきました!
小島なおさんありがとうございます!!😂

でね小島さん「この人(作者)は人の足りない部分を何かあたたかく愛してくれそうな感じはあります」ですって! う、嬉しすぎるお言葉!! 実像からはほど遠いですが、小島なおさんが仰られたので自分はそういう人間ということにしておきます😆

2004年に「乱反射」で角川短歌賞を獲られた回の角川短歌、小島さんの初々しいきらきらしたお写真や歌群を覚えています。

噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし  小島なお

このお歌は本当に色んなところで目にします。ああ、もうこんな純な人間に戻れない自分!みたいな感想付きで(笑)。性愛をまだ知らないわたしは、大人じゃないけど、もう子供でもない。爽やかな草の匂いもすれば、未知の領域を欲る生なにおいも感じられる。このお歌詠まれたとき、まだ17歳だったんですよね。17歳って心身のどこかが疼いてくる響きしてる。過去に戻れるなら17歳がいい。

取り外しできる胸なら青空にいま心ごと置き去りにする  小島なお
思うひとなければ雪はこんなにも空のとおくを見せて降るんだ  小島なお


この記事が参加している募集

国語がすき