若林明良

わかばやしあきら と読みます。

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  • NHK俳句・短歌・文芸選評、💢没った💢エッセイ

    NHK俳句・短歌・文芸選評投稿作や、没になった300字のエッセイです。 自分の記事の中ではそこそこ人気です。

  • エッセイの数々

    日々思うことのつれづれ。短歌・俳句もたまに入ってます。

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    恋愛あり、ナンヤコレ?っていうのもあり。短めです。

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    音楽に寄せる愛を、短歌・俳句・エッセイなどで綴りました。

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    140字の小説を3編づつ掲載しています。

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余白の神様 #短編小説

 夏。僕は「豚の警察」という本をお母さんに買ってもらった。読んでいて、僕はだんだん腹が立ってきた。話のすじ自体は面白いのだが、余白があまりにも多すぎるのだ。上下、左右、そして段落の間の余白が。 「なんだよ、これ。1760円もするけど、ぼったくりじゃん。余白をぎゅっと縮めたら、半分になるよ。そしたら880円で買えるのに」  僕は本の最後に印刷されている出版社の電話番号に電話した。 「はい、夏耳社でございます」 「こんにちは。中学一年の近藤貴志といいます。あの。『豚の警察

    • NHK俳句への投稿作・4月号

      選者:夏井いつき先生 兼題「入学試験」 弁当の具は鳥の肝入学試験 スケートの試合聴いてる明日受験 落丁の説明長し入学試験 平行に鉛筆並ぶ受験場 鹿二頭受験帰りの社道 若草の火の遠にあり受験終る 以前に自選しますと言っときながらつい、こんなにたくさん出してしまいました。すみません。一首目は佳作に採っていただきました。組長ありがとうございます! 私、夏井さんの「組長」って呼び方がかっこよくてすごい好きなんです。 Xで4月19日にポストされた組長のお言葉です。 こうピシッと言

      • NHK短歌への投稿作・4月号

        選者:川野里子先生 題詠「顔」 半世紀仕込みのわれの観相学四角い顔は嘘がつけない 目の前のラーメンライス 猫のえさ一回分は顔の大きさ 年越しの朝顔たしかに生きてゐるだんだん薄く小さくなりても ひとり手を挙げる反逆、教室に無言の「えーっ」の地響きがする 東京都 稲山博司さん(5月号) 作者はたぶん真面目な生徒で、絶対に反抗的なことはしないと思われていたのでしょう。無言の「えーっ」の地響き巧い。微妙な空気がひろがる景色がみえます。何に対して反逆されたのか。そこが気になります。

        • NHK短歌への投稿作・3月号

          いつも同じ、毎回必ずこれをすると決めてしまうと自分が飽きてしまってしんどくなるので、選者の作品に限定せず、その方の選された作品やお言葉などからも引用したいと思います。自由に、ランダムに。この取り組みもいつまで続くかわかりませんが、なにか始めてもすぐやめてしまうのが私のあかんところであり、よいところでもあります。 選者:川野里子先生 題詠「光」 雲間より延びる光線あのなかを過ぐ鳥たちに光は見えず 朝は美人に見える鏡が夕方はそれなりとなる光の魔法 いちにちの境界線に野良猫ら朝陽

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        余白の神様 #短編小説

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        • 不器用ですから
          15本

        記事

          NHK俳句への投稿作・3月号

          選者:夏井いつきさん 兼題「氷」 厚氷どけよ最初は俺が割る 旧ツイッター旧ジャニーズや川氷る 第七戦氷る刺身を飯に乗せ 氷の海老ら夢見るやうに死んでゐる まつしろな秋蝶轢いたかもしれぬ  夏井いつき 秋に真っ白な蝶っている? 調べると、コスモスの蜜を吸うモンシロチョウの画像を見つけました。日付が十月。とはいえ、ほぼ見かけないような。「まつしろな秋蝶」といわれてグニッとした感覚がわき起こるのは「明るい闇」と同じく形容矛盾だから。秋なら暖色系だよね!って固定観念を蹴とばしてく

          NHK俳句への投稿作・3月号

          NHK文芸選評への投稿作・3月

          3/2 俳句 選者:高野ムツオさん テーマ:東日本大震災 この回は締め切りが一週間早くて、出すのを忘れましたー笑 永劫の酸性雨なり兎の眼  高野ムツオ 兎の眼の赤は血管の色がそのまま見えているのですが、こう詠まれると酸性雨で充血しているとも思えてくる。原因には工場や車のガス以外にも火山ガスなど自然由来もありますけれども、酸性雨は大気を汚す人間に「答え」を返しつづけるのでしょう。酸性雨は私が小学生の頃に仲間うちで騒ぎはじめて、雨に濡れたら皮膚が溶けると怖れられていました。雨

          NHK文芸選評への投稿作・3月

          観音菩薩 #SS

           恵実はため息をついた。十二月、平日の午前。観光シーズンは終わった。案内所に入ってくる客はまばらで、ガイドを頼む客もいない。ガイド休憩所のテーブルで仰木が一人、はがきを書いている。もう三時間もそうしている。  仰木に茶を出しがてら、声をかけた。 「今日は、何枚書かれたのですか?」  仰木が人懐っこい笑顔をあげた。 「山本さん、ありがとう。今日は二枚だけやから、ちょっと仏さんも描いてみたんや」  みると、仰木の肉厚の字の隅にかわいらしい薬師如来像が色筆ペンでしたためられてい

          観音菩薩 #SS

          先生 #SS

           年末。ANAホテルにて短歌結社「青桐」の忘年会が開催されていた。晴れやかな場が苦手な奥本誠一であったが、憧れの歌人、新見稔とどうしても話したくて、残り少ない貯金を崩して出席したのであった。  スピーチが延々と続く。大広間の最後列にいた誠一はそっと会場を出た。と、ロビーで新見稔と花城こんぱすが談笑していた。  一年前、毎読新聞で読んだ新見の短歌に感動した。短歌にさほど関心のなかった誠一だったが、魂を救われたと思った。歌壇欄で選者を務める新見に短歌を送ってみたところ、ほどなく佳

          雛祭 #NHK俳句季節往来 投稿作

           姉夫婦には長いこと子供ができなかった。診てもらうと、姉が子供のできにくい体質であるとわかった。避妊治療をするなかで流産を経験した。子供はあきらめた方が、と医者は告げた。義兄も、子供はいなくても構わないと言った。  しかし姉はあきらめず、治療を続けた。姉よりも私たちの母が躍起になった。母は毎朝、近くの神社に御百度参りをした。百回を超えても続けていた。その御利益があったのか、次の妊娠で無事、産まれた。  元気な女の子。それもちょうど三月三日、雛祭の日に。病院で姉と赤ちゃんの健や

          雛祭 #NHK俳句季節往来 投稿作

          もとい #SS

           塾の古文の横山先生は、しゃべる時にしばしば「もとい」という言葉をつける。でも、なんだか変なのだ。 「では先週の続き。サ行変格活用は、もとい、せ、し、す、する、すれ、せよ」 「ひさかたの、は光にかかる枕詞です。もとい、ひさかたの光のどけき春の日に……」  「もとい」を辞書で引くと「言い間違えて訂正する時に発する語」とある。つまり、 「方丈記の作者は吉田兼好、もとい、鴨長明」 「源氏物語の作者は清少納言、もとい、紫式部」  この使い方が正しいのだ。先生のもといは全然関係ないと

          もとい #SS

          スタンツ #SS #公募ガイド選外佳作

          おおおおお~! 本日発表の「小説でもどうぞ」選外佳作いただきました。 公募ガイド様、ありがとうございます! 全文載せていただいて、めちゃくちゃ嬉しいです😂 よろしければ、読んでやってくださいませ🙇 今回の課題、癖には4作出しました。前回1年前に佳作をいただいた「記念貨幣」以降没つづきだったので、たぶんもう採用はないだろうなあと思いつつ、でも締切前になると話が浮かぶので投稿する、を繰り返していました。 昨年大晦日の締切日。4作目を投稿しようとしたとき、応募規定が変わっている

          スタンツ #SS #公募ガイド選外佳作

          NHK文芸選評への投稿作・2月

          2/3 俳句 選者:小澤實さん 兼題:節分 節分の面より覗く新妻よ 節分や消防団の同級生 節分や鬼門に近きわが寝床 初夢や林の中の桜の木  小澤實 人の目にふれないまま山奥で一生を終える桜が好きです。春になれば咲いて散り、秋になれば落葉がけものを温める。腐った葉が次のいのちを育む。そうして同じいとなみを繰り返し朽ちてゆく。美しいものがただそこにある。現実には不可能でも夢の中だったら会いにいける、ただ美しいものに会いたい願望。 2/10 短歌 選者:野口あや子さん 兼題

          NHK文芸選評への投稿作・2月

          NHK短歌への投稿作・2月号③

          こちらも2月号①の続きです。 選者:川野里子さん 題詠「ケーキ」 キッチンにおむつがでんと座りをるおむつケーキの語感凄まじ 十月はかぼちゃのケーキだらけにて家に帰ればかぼちゃの煮付け ホットケーキにバターとシロップ塗りたくり今日も元気に朝が始まる 母の母その母の母あつまりてさやさやと愛づ老衰の母  川野里子 母親の臨終の枕元に祖母、曾祖母、高祖母が集まって……巨大な雛壇のような「母の集まり」がそこにあるイメージ。どの人が欠けても自分はこの世に誕生しなかった。そう考えると

          NHK短歌への投稿作・2月号③

          NHK俳句への投稿作・2月号②

          2月号①の続きです。郵便投稿で見落としがちな絶対に気をつけてほしいことの理由により、しばらく一ヶ月遅れで掲載しています。 選者:夏井いつきさん 兼題「おでん」 週末の飯屋おでんの汁売り〼 ウィンナーがおでんの〆で悪いかよ 残るのはおでんの汁のやうな人 蛇泳ぐひかりの鞭として泳ぐ  夏井いつき 作者はきっと、泳ぐ蛇の美しさにみとれている。みなさん蛇を見てきゃっ怖い!と思われるでしょうか。私の住んでいるところはまあまあな田舎ですが、なぜかあまり蛇に出会ったことはなくて、だか

          NHK俳句への投稿作・2月号②

          村上春樹について

          西村賢太と文筆家との対談集「西村賢太対話集」を読んだ。石原慎太郎との対談の中で石原氏が村上春樹をメタクソに言っており、むかし海辺のカフカを読んだがよくわからない感じで終わるラストに「上下巻読んだ時間返せ」と憤慨し村上春樹から遠ざかっていた自分は石原慎太郎いいぞ!と思った。さらに芥川賞選考委員の奥泉光の今だったら完全にアウトな昔の行状をバラしていてさすがの西村賢太も石原慎太郎の毒気の前では可愛らしくみえる、しかしその西村賢太も朝吹真理子との対談で朝吹氏の御父君が詩人の朝吹亮二な

          村上春樹について

          かさぶた #SS

           哲夫はかさぶためくりに魅入られてしまった。きっかけは体育の授業だ。サッカーの試合中にこけて、右ひざを派手に擦りむいてしまった。保健室で手当てをしてもらい、ひざを包帯でぐるぐるに巻かれた。  毎日、ガーゼを交換する。傷あとに赤黒くグロテスクなかさぶたが出来はじめた。一週間たち、傷あとが完全にかさぶたで覆われると、ガーゼをやめた。乾かして、かさぶたが自然に剥がれるのを待つ。  でも、これ、きれいに治るのかなあ?  かさぶたは無理やり剥がしてはならない。あとが汚く残って

          かさぶた #SS