狂気

狂気を生み出す教育を紐解く ~吉田松陰 松下村塾 人の育て方~ 【アキラの書評vol.1】

遂に始まりました、知る人ぞ知る「アキラが明らかにお勧めする▲▲からの学び」シリーズ。通称「あきあきおススメ学(AAOG)」(多分、この通称は通称にならずに今回限りだと思います)

記念すべき第一弾は、

「吉田松陰 松下村塾 人の育て方」 
桐村 晋次 (著) あさ出版(2014年)

です。あぁ、なんと自分らしい選書なんだろう(笑)自画自賛です。こんなイベントにも登壇させてもらいましたし。

平成最後の夏だからこそ考えたい「2018年訳 吉田松陰」
(今更ながらなんとおこがましいイベントタイトルww)

【そもそものところ】

いきなりなんですが、自分には一つ確信めいた考えがあって、面接でこんなこと聞きます。

「質問なんですけど、●●さんは『本気の向こう側』ってあると思いますか?もしあるとしたら、それって何だと思われますか?」

というめっちゃめんどくさい質問です。

この問いは多分に哲学的なので、答えは無数にあると思いますし、その全てが正解だと思っています。そんな中で、自分の答えは一択。

「狂気」

ただ、それのみです。そして、世界を変えうるのは「狂気」なんだと思っています。狂気万歳。

【狂気ってなんぞや】

一つ例を出しましょう。ご存知イチロー選手。

彼は、3歳~7歳まで一年の半分を野球の練習に費やし、小学校低学年の時は放課後にお父さんと毎日練習。小学校高学年になると毎日バッティングセンターに通い、ついにはイチロー選手専用のバッティングマシンが出来たとか。なので、

“3年生の時から今まで(小学校卒業論文執筆時まで)は、365日中360日は、激しい練習をしています。だから1週間中で友達と遊べる時間は5~6時間です。” イチロー選手本人の作文より

まぁ、そうなるよなと。多分、僕がイチロー選手と同級生だったら「あいつ、あんなに本当に野球ばっかりやってる・・」ぐらいに思っていただろうし、おそらくチチロー(イチロー選手のお父さんの愛称)は周りの保護者から「あんなに偏った生活させて、鈴木さんは頭おかしいんじゃないか」と思われていたでしょう。

(末恐ろしい卒業文集。本田圭佑選手、錦織圭選手とかもとてつもねぇ卒業論文書いてるので興味ある人は是非調べてください!)

やってる当人たちからすると当たり前でも、その基準が圧倒的に高かったり、目指す世界が高すぎて周りから理解されないこと。それが狂気なのではないかと。

【吉田松陰 ようやく登場】

前置きが長くなりました(笑)ようやく吉田松陰選手の登場です。僕の中で、そんな「狂気」の代表格がこの人です。だって

「諸君、狂いたまえ」

って言ってしまう人だから。自分が狂っていないと絶対言えないセリフ。少し毒づきますが、大企業で働いたこと無いのに『大企業は裁量権が無い』って、無自覚・無批判にのたまう人事の人達とは大違い。昔の自分への自戒も込めて。

そして、同じ精神は、スティーブジョブスさんの

「Stay hungry, stay foolish」

にも通ずる気がしています。革命家って狂気の産物だと思ってます。

【アキラの思う吉田松陰】

僕の吉田松陰評を端的にまとめると、3つの狂気を持っている人物だなと。

「学ぶ狂気」:学びへの好奇心が異常に強い
「現場の狂気」:「知」を実践に結びつける
「使命の狂気」:己の使命に強く向き合う

そして、その狂気は連関しあいながら、己の命を賭してでもという行動に繋がっていくのです・・。

【松下村塾って何?】

吉田松陰先生についての説明も本当は必要だと思うんですが、長くなるので気になる人はgoogle先生に聞いてもらうとよいかと。

Amazon先生の本作の紹介文にて、「松下村塾」という観点から簡単に彼について知ってもらえればと思い引用します。

伊藤博文(初代内閣総理大臣)、山県有朋(第三・九代内閣総理大臣)、山田顕義(日本大学、國學院大学創設者)、高杉晋作(奇兵隊創設者)、桂小五郎(維新の三傑)……。

吉田松陰の松下村塾では、二人の総理大臣をはじめ、幕末から明治の激動期において、国家の体勢を築き上げた多くの逸材を輩出しました。

しかし驚くべきことに、松下村塾で松陰による教育が行われたのは、わずか2年4カ月。では、この短い間に、いったいどのような教育行われたのか?

簡単に言えば、

「とてつもねぇ短期間に、とてつもねぇ傑物達を育て、とてつもねぇ影響を後世に残した人」

って感じですね。改めて見ても、メンツえぐい・・。歴史に興味ない人でも聞いたことある名前が多いことでしょう。

(引用:朝日新聞デジタル)

【松下村塾での教育の特徴】

いくつも大切なポイントがあるのですが、その中でも興味深いのは、

師弟同行・共学の思想(共に学ぶことが大切)
現実立脚主義(実践してこその学問でしょうよ)
相互啓発の促進(個性をぶつけ合う場を作る)

この三つであると。

  1、師弟同行・共学の思想

松陰は師匠と弟子が一緒に学び合うという「師弟同行・師弟共学の思想」の持ち主でした。誰であっても、書物のような静的な知や人に会ったり議論する動的な知を求め、自己研鑽に励むことが重要だという基本姿勢を持っているということです。

これって「言うは易し、行うは難し」の典型的なものの一つだと思っています。既に「師」って言っちゃってるし!「師」って何か教えるものだし!みたいな先入観の下では、この思想には至らない訳です。

なのでここでいう「師」という言葉は、より原理に近く「学びを与えてくれる存在」という事と理解するといいかなと。宮本武蔵が言ってる「我以外皆我師」ってことですね。

そして、松陰はさらに一歩踏み込んで、むしろ「師」こそ弟子の只中に入っていって、答えのない問題に対して奮闘する存在なんだよってことを言っているのです。自分含め世のマネージャー層は自省が必要かもです。

あと、これって実は弟子側にも多くが求められてますよね。受け身でインプットだけしたい人はほぼ無価値に近いっていう事ですから。師と呼ばれる人の学びになるように、必死こいてアウトプットしようって暗に言われています。

  2、現実立脚主義

松陰先生は皆さんご存知の通り、国外に出るためにペリーの軍艦に乗り込んだという逸話の持ち主です。アヘン戦争が行われている時代背景、海外に出て航海術を学ぶことや国際情勢を知る必要性を感じていたからですね。

以前のnoteでも書きましたが、「知の消費から知の創造へ」という文脈においても現実立脚主義は必要なものだと確信しています。「知の消費」においては、実践はその対象となりません。他方、「知の創造」においては、実践はマストな要件であることは間違いないです。やったこと無い人に誰もコメントされたくないですもんね。

「大手企業で働いたことないのに、罪しちゃう人」に足りないのは現実に立脚する思考。経験してないのであれば多くの事例や人から学ぶ努力をしなければならないはず。気を付けます。

さて、もう一つ象徴的なエピソードが。久坂玄瑞が「ペリーはとんでもねぇから、ぶった切りましょう!蒙古襲来の時に、北条時宗は元の使節をぶった切りましたよ!」って過激な発言をした際にも、「玄瑞君、それって世の中の意見パクっちゃってるわ。自分の立場を考えて、空言してないで実践しなきゃダメじゃん」というわけですね。その結果、こんな詩を詠みます。

「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂」

これは彼が上記の米国密航計画が失敗した時の詩。「ベイビー、結果は分かってるのに、止められないんだマイハート!」って。うん、狂気です。

そう、彼は久坂玄瑞をたしなめるだけではなく、実行しちゃうんです。彼は確実に「KY」ですが、「空気が読めない」のではなく「空気を読まない」のだなと。もっというと

「空気ってなんなの?それって本質的なの?俺の危機感や使命からすると圧倒的に優先順位低いんだけど!空気に流されてる場合じゃない!」

ってこと。そりゃ空気を読んで縮こまってる人からすると「狂気」をはらんでいるようにみえるはずですわ。そして、空気を読めずに知の消費をして、あたかも世の定説を自分の意見かのように断言してしまっているKYからすると、逆に「こいつ空気読めねぇなぁ」っていうことになるのでしょう(笑)

  3、相互啓発の促進

松陰の教育は「自己を発見し、自力で自分を高める能力をつけさせることに主眼を置いていた」と言われます。上から「人間の志はかくあるべき」とは言わずに、「あなたの志は何か」と尋ね、弟子自身の答えを探すことを促すというわけです。

「教育」とはいくつかの段階があるなと思います。「校長の校長」と言われる元リクルートで現 奈良市立一条高等学校校長の藤原和博さんは「情報処理力(知識/技能)から情報編集力(思考/判断/表現)へ」と提案されていますね。

自分も義務教育までは「知識を詰め込む=情報のインデックスを作る」ことが良いと思います。ただ、社会人の教育になっていくにつれて「他と混じり合いながら、自身の個性を伸ばしていく」という相互啓発の世界に入っていくなと。それを最先端でやっていたのが松下村塾という事なんだなと。

そして、本書では下記の3つの素養や環境が大切だと提示しています。

「集団討議の場でのコミュニケーション力」
「人的ネットワークの構築」
「レベルの高い集団での集団啓発と自己啓発」

冒頭の師弟共学にも通じますが、塾生の高いレベルと松陰のマインドが合わさることによって、高いレベルの教育が行われたという事なんだと思います。社会人コミュニティを運営している方にとっては、大きな気づきになる事と思います。

【まとめ】

ここまで長々と綴ってきましたが、松下村塾から学ぶべき点とは

「皆が自立して、自律していく集団的な教育システム」の大切さ

そして、「そんな教育システムから『狂気』が生まれて、世の中にとてつもねぇインパクトを与える!」

という事。自分自身も色々な経験から、全くもって未熟だなと感じていますが、こういった教育システムを自ら構築して、その中で自分自身も成長していきたいなと意を新たにしています。

真面目な事言ってますが、「狂気」の只中に自分自身を置きたいと本当に思うんです。本当です。そこそこイケてる人になる恐怖感を感じるんです。突き抜けたい。

今、個人的に社会人の方のコーチングを行っていますが、その中でも本当にクライアントからの学びは大きいなと感じる日々です。クライアントの人達とどこまでも高みを目指したいなと。

これからも、上記を意識しながらさらに加速して、面白い人生を生きたいと思います!!

「諸君!俺も狂うから、一緒に狂ってください!!」

~~~~~
【参考】
本書:https://goo.gl/5fXa1s
おススメ本:「留魂録」(死を直前に弟子に書いた手紙)  https://goo.gl/cMu8kT

~Special Tahnks~
こーたろ、みはらさん、くりー、やなってぃ、みとっしー、りきてーに、めるしゅん、きわ、さきな、いちゃきゃ・ばお
~~~~~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?