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ディベートを活用したSDGs教育の実践例

国連が制定したSDGs。日本においては"PPAP"でのマーケティングでも話題になりました。
教育現場でも「なぜ」やるのか?という話ではなく、「どう」やるのか?で多くの方が悩まれ始めていると聞いています。

もちろん、誰に対して行うのか、時間がどれくらい設けられるのか、等諸々条件によって大きく左右されますが、
私が大学で行っている1~2コマ(≒90分~180分)ではどのような工夫をしているか、ご共有することで皆様のご参考になれば幸いです。
まず前段では、「なぜSDGs教育にディベートを活用するのがいいのか?」を簡単にご紹介した後、後半で「じゃあ、具体的にどのようなことをしているのか?」、という2部構成でお送りします。

【1. なぜ、ディベート×SDGs?】

私は、ディベート×SDGsは、とても相性がいいと思っています。私なりの理由をまとめるとこのようになります。

・勝ち負けがつくため、必死に知識を身に着けようとする
(≒私はディベートはスポーツだと思っています。勝ったら嬉しい、負けたら悔しい。なので必死にスポーツで勝つために次頑張ろう、と思えるわけです。なので試合があった後の解説は生徒の方々が必死に耳を傾けてくれる傾向にあります。)

・ディベートでは「誰が、どう困っているのか?」と想像しながら考えることが多く、社会課題の"被害者"の気持ちになって考えることができる
(≒多くの経験者は「他の人の気持ちになって考えることができた」と言っています。世界大会の審査委員団らもアドボカシー力と表現していました。)

・ディベートはあえて「AかBか?」のように二項対立にすることにより、実世界で政策/施策を通そうとする際に考えなくてはならない利害関係やトレードオフを考えることができる
(例えば、コンビニの深夜営業廃止をとってみると従業員の深夜労働の話と消費者の利便性の両方を考えないといけない、ということに気づくかと思います)

・ディベートでは「反論」がされるため、物事を多面的に見ることができる
(反論されて「確かに」と思ったり、一回賛否を考えた上で「でもやっぱりこうだと思う」と思ったり、相手のおかげで自分の意見が進化したりします。)

・色々なテーマをディベートは取り上げるため、幅広い知識が身につく
(実際、多くのSDGsに関連するテーマがあります)

・特に即興型ディベートでは「きっとこうなんじゃないか?」とある種強制的に"仮説"を考えるため、その後学ぶことに繋がりやすい
(ちょうど昨日あたり、東大生は小学生の時に授業で先生の質問は全部間違っていてもいいから答えてた、と言っていました。トライアンドエラーですよね。何もしないよりも、何か言って、間違ったら直していく、というようなすごくいいと思います。)

実際、海外ではSDGsと言う文脈ではないですが、色々大会が開かれているようです。
・フィリピンでは「健康/ヘルスケア」のみをテーマとした英語即興型ディベートの大会が主催されています
(https://www.facebook.com/globalhealthdebates/)

・マレーシアでは若者の育成を目的に、「平和」をテーマにした英語即興型ディベートの大会が主催され、オックスフォード大等も例年参加しています
(https://wupidmania.com/?fbclid=IwAR1qwW3BNCJY4Q4qP-eUCXkSFQxmDmdoJDJzx7rP8TK7seM08ZlG6ARrF3U)

・香港では「水」をテーマとした英語ディベートのイベントが開催されているようです。

・日本では、全部の論題のテーマがSDGsに関連しており、外務省、文科省も後援している英語即興型のディベートの国際大会が九州大学で例年開催されています。
(世界で初めてSDGsにコミットしたディベート大会となっており、私も微力ながら関わっております)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/36692/19_08_02_3.pdf#search='SDGs+%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88QDO'
https://www.facebook.com/QDO.KyushuDebateOpen/

【2. ディベート×SDGsの実践のポイント】

ここまで、ディベート×SDGsが盛り上がっていることはお分かりいただいたかと思っていますが、じゃあ具体的にどのように授業で行うのか?と言う話があるかと思います。

1. 前提として"社会課題/SDGs"って一見難しそう、という状態から始まることを意識する
"社会課題"って難しそう、SDGsって聞いたことがあるけれども国連とかが行っていることでしょう…?
声を大にしないとしても、多くの人はそう思っていることが多いかと思います。
また、本人のご経験(どのような勉強をしたか、どういう人と話したか、どのような本を読み映画を観たか、どのような国にいたか…等)によって関心のある社会課題も変わってくると思います。
全体的に、できるだけ専門用語を使わない、というようなことも意識しながら授業を進めることが重要だと思っています。

2. できるだけ身近なテーマから取り上げる
SDGsは17ゴール、169ターゲットがありますが、その中でもできるだけ生徒が身近に感じ得るテーマから選ぶのが重要になります。
例えば私は「家庭からゴミを出すのは有料化すべきか?(リサイクルは対象外)」というテーマを出しました。これはSDGs #12の 「つくる責任 つかう責任」に関連するテーマです。
これをディベートの題材で出してみると、結構皆様のご経験に基づいたアイデアが出てきます。
例えば、賛成側は「無駄遣いに気を付けようとする」「親がよくやってくれていたのだけれども、壊れたり古くなってしまっても、できるだけ直そうとする」「きれいに家でペットボトルを分別しようとする」のような議論が出てきます。

他には、「コンビニの深夜営業を廃止すべきである」と言うテーマも出しました。これは色々なSDGsも関連しますが最近ですと人手不足に関する SDGs #8の 「働きがいも経済成長も」にも関連します。
普段コンビニを使って色々な物を買っていたり、夜遅く帰ってくる際に安心感を覚えたりする生徒たちが生々しく意見を話してくださったり、
中には実際にコンビニでバイトをしていた人が経験談を話してくださるケースもありました。

3. "面白い"、"かっこいい"話をディベートの後に全体にフィードバックするやっぱり知らなかったこと、わくわくすることが大事だと私は思っています。
例えば、「肉の消費を廃止する」(もしくは「肉の消費に税金をつける」)というような議題(SDGs #2の飢餓をゼロに 、等に関連しますね)であれば、最近は(動物からできていない)「代替肉」の研究が進んでいることを話してみます。
海外では食の3Dプリンターを使って、代替肉を"プリント"する技術も発展し始めているようです。(このように、動画を見せたりもします)
https://www.youtube.com/watch?v=ZS607-sxGzc&fbclid=IwAR2wjvIAMnkFA2_OP9UbzYi8n0REJzsEMm63R2jFwbt3y-iasCgEgRrcuj0

また、例えば日本でもモスバーガーが植物由来のバーガーを出そうとしているようですね。どんな味がするのか楽しみです。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO55695910V10C20A2MM8000

また、日常と言う意味でもあると、「プラスチックの使用に税金をかける」のような議題では、
ストローが紙になったり、容器が竹になったりもするようです。
また、面白い取り組みだと「食べられるコップ」を飛行機内で出す取り組みもあるようです!美味しそう…。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/edible-cup-airnewzealand

4. 使うディベートのフォーマットは臨機応変に変更する
教育ディベートの文脈では、下記をカスタマイズして活用するのが良いと思っています。
・準備時間(議題を出してからスピーチを開始するまでの時間、0分~30分、もしくは宿題も含めて1週間等)
・準備時間の間にスマホやパソコンでリサーチして良いか
・1つのスピーチの時間(1分~7分)
・試合の人数(1vs1, 2vs2, 3vs3, クラス全体で分ける)
・審査の方法として「根拠・証拠」に基づくか、「ロジックやプレゼンテーション」に基づくか
・スピーチの順番(賛成側→反対側→賛成側→反対側)等
・質疑応答等の可否
・言語(日本語/英語)

例えば、私の場合は、「ぷち日本語即興型ディベート」を活用しました。これをやると1試合が20分くらいで終わるので、その後の解説/全体フィードバックを含めても合計30分~50分で終わります。
1コマ(90分)では2-3試合やってます。

・準備時間=10分
・準備時間の間にスマホやパソコンでリサーチして良いか=最初の5分はだめ、議題によってはその後の5分はOK
・1つのスピーチの時間=2分
・試合の人数(2vs2, 3vs3, クラス全体で分ける)=1vs1
・審査の方法として「根拠・証拠」に基づくか、「ロジックやプレゼンテーション」に基づくか=後者
・スピーチの順番(賛成側→反対側→賛成側→反対側)等=賛成側→反対側
・質疑応答等の可否=なし
・言語(日本語/英語)=日本語

以上となります。すこしでもディベート×SDGsが盛り上がりますように…!

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