人と組織.16 - 先送りは続けられない! 本当の改革は、世代交代から始まる!

衆議院議員の総選挙を控えて「成長」よりも「分配」に言及した議論が圧倒的に多いが、国民も市場も政治に求めているのは、「人口が減っても、この国が成長できるように」ということではないだろうか。

そのためには、「これまで先送りしてきた課題」にケリをつけなければならない。

今から、10年以上前の英国のエコノミストの日本に対する忠告、
「豊かな日本には、選択肢がある。蓄えた富をこのまま享受するだけか、改革してもっと豊かになるのか」と。

しかし、日本の地盤沈下は歯止めがかからず、これまで長い間、沈んだままである。

日本株の時価総額が、世界に占める比率は、1989年の37%から、2021年には6%へと激減、上位500社に日本企業が200社以上ランクインしていたのが、現在は33社に過ぎない。

「この30年間、我々は成長することができなかった」と、パナソニックの楠見社長の言である。

パナソニックの苦境は、まさに現在の日本経済の縮図である。

今の日本企業でも共通している点は、これまで蓄えてきた様々な資産をただただ食いつぶしているだけということである。

国でいえば産業構造、企業でいえば事業構造が従来と何ら変わらず、旧態依然としたまま、その延長線上で政治を、経営を行っているにすぎない。

これらの背景にある根本的な問題は、古い世代が未だに政治を、経営を支配する構造にあるということであろう。

そのために、何らの発展的な展開もないままに、これまでの資産を食いつぶしているのである。

年齢的にもうすでに役割を終えた人達の権益や居場所を守るために、若い人たちが借金を背負わされる構図となっており、企業でも政治でも世代交代は遅々として進んでいない。

これでは、何時まで経っても若い人たちが将来に夢を描けないであろう。

夢や理想が無いと、ただ日々の仕事の中で「疲労感」「疲弊感」「閉塞感」を感じてしまうだけになる。

ほとんど同じ人たちが常に組織の上位にあって、ほとんど同じような判断と行動パターンを繰り返している限り、何も変わらない。

このように改革の最大の障害は、組織内部にあるのである。

目に見えない変化を嫌い、目に見える今の現実を維持しようとする人達、既得権や既得権益を失いたくない負のパワー、負のエネルギーである。

どんな改革であっても、それによって損をする人、現在の立場を失う人達が必ず出てくる。

それが大きければ大きいほど、その死守に懸命になっている人達を説得し、納得させることは、難しくなる。

歴史上の国家や民族の滅亡も、全ては、指導層が腐った結果であり、まさに「魚は頭から腐る」である。

どのように優れたシステムも、設備も、技術も、商品も、どんなに能力の高い人材で構成された組織も、全ては、リーダーの思考、価値観、意識や思い等に包括され、それを超えることは決してない。

政治も企業もそのトップの器以上でも以下でもない。

その器そのものということである。

我々は、企業内の若手社員によるプロジェクト・チームを編成して、「我が社の将来のあるべき姿に向けた変革の方向性」といったものをテーマに「改革案」をまとめさせ、経営陣に提案させるという機会を設けるといったことに取り組んでいる。

若手社員からの改革案を受けて、経営陣からは、
「一体どこが変わっていないのか。少しずつ変えているじゃないか。何を変えて欲しいのか具体的に言って見ろ。」等の発言がなされる場合が多い。

これに対して若手から「経営陣も、もっと現場の声、いろいろな職位の人達の声を聞いて下さい」と。

そうすると「そう言われても時間がない。また、それでは組織運営上、イレギュラーになってしまい、うまくない。基本は、職制を通して聞く」等といった回答が出る。

これは、もはや修正のしようのないギャップなのである。

「職制を通して送り出される情報は、出来ていないことが出来ていることになっていたり、実行していないことが実行されていることになっていたり」等、ウソが多いのにも関わらず、本気になって現場の声に耳を傾けようとしない。

ここで最も重大なことは、ここに参加した若い社員達は、会社の将来を考えて仕事の合間をぬって改革案の検討を積み重ねてきたにも関わらず、
「どうせウチでは言っても駄目」「トップに対して、提案等しても意味がない」等といった、失望感のみが強くなってしまうことであり、それが組織の中の支配的な空気となってしまうことである。

その結果、結局何も変わらない。

その原因はピラミッドの上層にいる変わらない人たちにあるのである。

これは、現在の日本の政治や企業経営を象徴している事象である。

「あなたは改革のために何を実現したのか」という質問に対して、即座に明快に答えることが出来ないリーダーや指導者はこのような時代、その任には甚だ不適当なのである。

"動物にとっては、長生きよりも子孫を残すことが大切"

そのために「団塊の世代が社会の重荷とならず、積極的に次世代を生かし育てられるよう、率先して利他の生き方をしていかなければならない」と主張する、
生物学者、本川達男さんの言葉は、とてもとても重みを持つものである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?