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  4-❻ 少年の涙

 4月上旬、春の柔らかな風に吹かれ、満開の桜がゆらゆらと気持ちよさげに揺れていた。

 彼は四国霊場八十八番札所、大窪寺の境内に立ち、その桜を見上げていた。
 これから2ヶ月強、1400キロを踏破する彼の、2度目の四国巡礼の旅であった

 最初の巡礼は、昨年の10月中旬の事•••彼にはどうしても巡礼をしなければならない強い動機があった。

 天国で眠る者達の為に、そして残された者達が守られるようにと。

 秋の盛り、一番札所霊山寺の山門に立ち、数々の苦難の中を歩き、数えきれぬ程の善意を受け八十八番札所へとたどり着き、再び一番札所を訪れ〝円〟を結んだのが2ヶ月後の、寒風吹きすさぶ12月中旬であった。

 今回は、八十八番札所をスタート、一番札所へと戻り、再びこの八十八番で円を結ぶ、いわゆる〝逆打ち〟をする事に決めていた。「打つ」とは、参拝をするという意味である。

 見える景色もまた違って見える事だろう。

 白衣を纏い菅笠をかぶり、金剛杖を手に、雨の日も、風の日も、太陽の強烈な日差しの中も、自らの肉体を酷使して歩き続け、祈り続け、その先に見える希望を求めて、彼は前へ進むのだ。

 彼は、可憐に咲き誇る桜の花を目に焼き付け、軽く〝フッ〟と息を吐いた。
 そして、八十七番札所長尾寺へと向かう道を歩き出した。

 強烈な太陽の日差しが、彼の背を照らしていた。


 1人の少年が、胸に抱えていたたくさんの向日葵をそっと供えた。そして、小さな手のひらを合わせ目を閉じた。

 春の柔らかな風が向日葵を優しく揺らす。
 少年は微動だにしなかった。
何を祈っているのだろうか•••打ち寄せる波の音が辺りを包み込んでいた。

 長い祈りであった。
太陽の暖かな日差しが優しく寄り添うかのように、彼の周りを照らしていた。

 少年は、心臓移植手術を行う為に、昨年9月上旬に渡米した。
 その非常に困難な手術は無事成功し、
少年は、約束を交わした2人との再会の日を楽しみにしていた。しかし•••。

 翌年、2月中旬、少年の病室を訪れた2人の訪問客があった。翔馬の専属バレットの歩夢と恋人の久美であった。
 少年は翔馬の事も、すみれの身に起こった出来事も、何も知らなかった。
 少年にショックを与える事のないよう
、両親も、病院側も細心の注意を払い、彼に接していたのだった。

 歩夢は、翔馬の〝彼なら大丈夫!きっとわかってくれる!〟の言葉を信じ、意を決して少年に伝えたのだ。
 あの悲しい出来事を。


 嘘だ!そんな事があるはずがない!
少年は、言葉を失った。
 信じる事ができなかった。
 けれど•••アメリカまで来るという事は•••。
 戸惑う少年に、歩夢は苦しげな表情で
、1通の手紙を渡した。

 封筒の中には、病室で撮影された笑顔の少年を真ん中に、3人でピースサインをしている1枚の写真が同封されていた。

 手紙の上に、少年の透明な滴がポトリと落ちた。

 久美が少年の髪の毛を優しく撫でながら呟いた。
「未来君、私ね、大切な父親を昨年亡くしたの。父はね、癌で、近いうちに天国へ行くことがわかっていた。けれど、すみれは、突然•••。あの日はね、すみれと別れるまで一緒に食事をしていたの。翔馬君を応援しながら。それなのに•••。
 信じられなかった。悲しくて、悔しくて•••」

 久美の瞳からみるみるうちに涙が溢れ始めた。
 歩夢が慰めるかのように、彼女の細い肩に手を添えた。

「でもね••• 2人には共通している事があったの。父もすみれも、たくさんの人達に愛されていたんだよ。本当に愛されていたの。すみれの周りには、いつもたくさんの笑顔があった。きっと、すみれがいつも笑っていたからだと思うんだ。

 私の母はね、私が小学4年夏に、そう、今の未来君と同じ頃に癌で亡くなったの
。母はね、いつも言っていた。
 大切に飼っていたウサギが天国に行った時、仲の良かった友達が遠くに転校して行った時•••泣いていた私に、
〝悲しいことがあったら、泣きなさい。
泣いて泣いて、そして笑いなさい!〟ってね。〝笑顔が幸せを連れてくるからね〟って。
 だからね、私はこれからすみれの代わりにたくさん笑うと決めたの」

 抱き締められた少年が久美を見上げていた。

 久美は少年に微笑みながら続けた。
自身のお腹に右手を添えながら。

「今ね、お腹の中に赤ちゃんがいるの。
きっとね•••すみれからのメッセージだと思うんだ。私の代わりにお願いってね。未来君がね、笑っている限りすみれは、未来君の心の中に生き続けるから、ずっとずっと笑っていてね。覚えていてあげてね」

 少年にとっては、2度目の大切な人との別れ。たった数時間の出会いだったけれど、〝負けないぞ!〟という諦めない気持ちをプレゼントしてくれた、優しいお姉さん。そのお陰で、
〝今自分は、生かされている〟その事を
少年ははっきりと理解したのだ。

 少年は、涙を拭いた。
そして、久美の差し出した右手の小指に自身の小指を絡ませ、ブンブンと力強く振った。

 PS•••皆様、新年明けましておめでとうございます㊗️昨年はたくさんの皆様に支えられ、noteでの連載を継続する事ができました。拙作ではありますが、サラブレッドの息吹を、鼓動を、命の力強さを少しでもお届けする事ができるよう、頑張りたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い致します🥺🙇

 次回配信は1月6日土曜日午前8時です
。若かりし頃、私がお世話になった住職から頂いた大切な言葉を載せてみました
。どうか少年の心に届きますように🙏🙏

 それではまたお会いしましょう。

          AKIRARIKA

🐴🔥⭐️🐴🔥⭐️🐴🔥⭐️🐴🔥⭐️🐴🔥⭐️

  素敵なプレゼント🎁🎁パート2😳

 元旦、午前9時33分に呼び鈴が鳴り🛎️
、🐈‍⬛🐈‍⬛様から荷物を受け取りました。
 中にはたくさんのプレゼントが😅

🍄🍄🍄👍🤤
🍓🍓🍓久しぶりです😊
3粒頂きましたが、めちゃ美味しかったです😋🤭
おお!これは⁉︎
これ、めちゃくちゃ美味しいんです🍈🍈🤤
ジャックドーーール🤭🤭こんな素敵な
トート使えないよね😅
これはこれは🤤🤤早速使わせてもらおう😊
ウシュバーーー🐴🔥イクイーーー🐴🐴🔥
わわわ、大好きなP-SUKE&SHIROCHIの卓上カレンダー🤤🤤
一体何が?
おお😂暖かな、しかもタッチパネル対応の😢
これ高かったよね😅ありがとうございます😊
サーモスといえば?
保温マグカップ😊😊大切に使わせて頂きます!後ろの絵は、僕の小説の主人公•••先日この世界に誕生したお馬さんです🔥⭐️🔥⭐️


 元旦から素敵なプレゼントを頂きました🎁🥹O様、ありがとう御座います🙏🙏

 昨年末からインフルに😷かかったらしく?体調も万全ではありませんが、何とか年を越す事ができ、新年を迎える事ができました。ぼーっとしていて、誤字脱字のチェックもおぼつきませんが、多分大丈夫かな?😅

 2024年が皆様にとって良い年となりますように🙏🙏

      AKIRARIKA🔥⭐️

 この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇