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目的を意識させることの大切さ

作業と仕事の違いは?

目的を意識することはとても大切です。
まず、バスケよりも先にビジネスシーンで説明します。上司から「これをやっておいて」と言われて、部下が何も確認せずに取り組み、仕事を終えて「やりました」と報告すると、上司が「なんか違うんだよなー」と言って、出し戻しになるケースがあります。このケースでは部下は上司の頭の中にある正解を当てるまで仕事が終われません。しかも上司すら答えを持っていないケースもありますから、上司の中の答えが動いたりして、本当に無限に出し直しになるケースがあります。この場合は上司も部下も「作業」として認識していることが問題なのです。
「作業」と「仕事」は違います。「作業」ではなく「仕事」とするには「目的」を意識することが大切です。例えば、上司に「これをやっておいて」と言われた時に、部下は「なんに使うのですか?」と目的を確認して、上司が「◯◯に使う予定なんだよ」と答える。部下が「それだったら、新しく作らなくも、これが使えそうですよ」と答えると、上司は「良いアイデアだね」となることがあります。全く作業をしていないのに、作業をした時よりも評価をされることがあります。これが「仕事」です。作業量はゼロですが、目的を達成しているので、生産性としては理想的な仕事です。
この2つの差は「目的の確認」です。目的を確認することで、依頼された作業の意味や価値が明確になります。これによって、提案のOBゾーンも明確になりますし、目的を達成する手段の選択肢の幅広くなります。逆に、上司だとしたら「これをやっておいて」に加えて「目的は◯◯に使う予定なんだ」と伝えてあげると、部下は、自分の作業がどう使われるかをの未来を想像するようになります。これによって付加価値が生まれます。むしろ、目的を確認せずに、付加価値の高い仕事をすることは困難だと思います。

練習内容の目的を明確にする

バスケに戻りますと、練習の目的を伝えることは、非常に重要です。「この練習は、こういうシーンで利用することを想定している」と伝えると、有意義な練習になります。
慣れてくると、独自のやり方に変えはじめる子供達がいます。オリジナルな方法として許される場合は良いのですが、練習の目的や適用シーンで考えると、その独自のやり方では意味がないケースがあります。例えば、フローターシュートの練習をしていて、次第にゴール下に近づいてシュートを打つ子供がいます。フローターシュートは、ドライブして行った先に大きな選手がいたり、ヘルプディフェンスが来た状況で、それを避ける目的で打つシュートです。実際の試合でディフェンスがいれば、ゴールの近くまでは行けないでしょう。制限区域のあたりでシュートを放つことで、大きな選手のブロックショットを避けることができます。違う例では、ユーロステップは、左右に揺さぶることで、正面にいるディフェンスをかわす技術です。しかし、左右のステップの幅が非常に小さい子がいます。これでは左右に揺さぶって抜くことはできませんので、目的を理解していないケースだと思います。このように、目的を理解せず、間違った作業を繰り返す練習ではスキルアップはできないと思います。

伝わらないので何度も伝え何度も聞く

目的は、反復して伝えることが重要だと思います。「〇〇の練習するぞ」と声をかけたら「◯◯のシチュエーションを想定しているから、◯◯を意識しろよ!」と声掛けることができます。小学生では、記憶力や理解力が足りないのので、口癖になるほど繰り返すことが有効です。間違ったやり方をしている子がいたら「これって、なんの目的の練習だと思う?」と聞いてから「もっとこうしろ」伝えることで、修正が早くなると思います。また、個人でなくとも練習がダレてきたな?と思ったら、チームに喝を入れるよりも「この練習の目的を理解している人?」とを質問して、自分達で目的を意識させるようにします。更に、6年生が引退して、5年生の新チームになって、低学年が練習に参加するようになると、5年生が低学年に練習を説明することなります。この時に、ちゃんと低学年に目的が説明できることができると、チーム全体の練習の理解度が高まります。

全ての練習メニューに目的がある

同時に練習メニューを考えるコーチは、練習の目的を考える必要があります。目的を考えていないと「なぜその練習をするのか?」「なぜこの順番でこの練習をするのか?」と聞かれた時に、その理由を答えられません。ずっとやってきたから、伝統だからと行って目的のない練習をさせることになります。仕事でも「これ意味あるんかな?」という作法がある会社もありますね。目的がないならば、やる意味はないので、すぐに中止するべきです。

同じ練習でも目的を変わるケースもあります。例えば、2対1のオールコートの攻守の練習を考えます。ある時は1人で2人を守るセーフティの状況判断力を鍛える目的の練習になります。ある時はディフェンスを引き付けてからパスを出すベストタイミングを理解する目的にもなり得ますし、目的を明確にすることで、ポイントを押さえた練習になります。総合的な練習になれば複数の目的を持てるのですが、今日の練習で特に気にするポイントとして目的を絞るのが有効です。特に、小学生は複合的目的になれば、なるほど、考えずに練習をしてしまい、技術の習得に時間がかかってしまいます。

目的を明確にすると理由も明確になる

トヨタでは、5W1Hで、なぜなぜと5回聞くという話があります。これによって表層の問題ではなく真の原因を突き詰める思考プロセスのようです。それと同様に「なぜその練習をするのか?」の問いに「〇〇のシチュエーションで、◯◯の技術ができるようにするため」という理由や目的を答えたとしますが、更に「なぜ、〇〇のシチュエーションでの◯◯の技術の習得に力を入れるのか?」という問いに答える必要があります。ボックスアウトの練習をする。なぜボックスアウトの練習をするのか?という問いに「先週の試合でリバウンドが取れなかったことが原因で負けたから?」「来週の相手は背が高いから」などと理由が明確になります。

目的を意識できる大人になって

子供達に目的を含め説明し、ダレてきた時に「目的って何か分かっている?」と聞くようになると、子供達から「この目的はなんですか?」を確認する子がでてきます。面倒くさい子供のように見えますが、むしろ大人になった時に付加価値の高い仕事ができる可能性が高まるのでは?と思います。

ということで、バスケの練習や戦術については、コーチの目的を繰り返し説明することで、子供達が目的を意識できるように指導することが大切だと思います。バスケの練習を通じて、子供達が目的を意識することの大切さを知ってくれると素晴らしいなと思います。

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