【読書感想】うつヌケ 〜うつをヌケた人たち〜 田中圭一作

読みました。
感想を書きたいと思います。
中身について詳細に触れています、ネタバレが嫌な方は読まんといてください。


目次
Ⅰ.読んだ動機 : 1,2
Ⅱ.感想 : 1,2,3,4
Ⅲ.感想のまとめ
Ⅳ.私が考えるうつヌケ


I.読んだ動機


1.少し前に話題になり、そしてこれからドラマ化もされると話題の本らしく、店頭に積まれており気になっていた。
2.うつ病で去年休職していたので、「うつをヌケるとは?」と単純に気になった。
3.実は話題になった時に手にとってみたことがあるが、この本で作者がうつ病を寛解させる方法として「自分を好きになろう」という主張をウザッと思ったものの、その後なんとなく気にはなっていて、観念して読んだ。



Ⅱ.感想


1.中身はうつ病について深く書かれているが、絵がレトロなかんじでキャラクター感があり読みやすい。
うつ病になった著名人がその実体験を述べ、発症したと思われる原因やその人それぞれの自覚症状などを語るという、中身はドロドロとした生々しいうつ病の話になのに、かわいい絵の漫画のおかげでポップで入りやすいかんじになってる。

2.気圧や気温差など外的な要因が、うつ病に影響していることが書かれているのがよかった。
うつ病はただ単に『落ち込んでるだけ』『暗いだけ』『気の持ちよう』という根強い一般的なイメージがあるため、単に気分などの問題だけではないことが触れられていて、イメージの改善ひいてはうつ病の理解につながるのではと思った。

3.うつ病を発症した原因の一つに、『合わない仕事を無理してこなしていた(営業件数や売り上げなど成果があっても)』ということが書かれていたが、それだけ見ると、誤解されてしまいそうな気がした。
『合わない仕事』=『ただその人のやりたい仕事』みたいな。
単なる好き嫌いのような、わがままなふうにとってしまう人もいるかもと危惧。

4.「うつヌケするためには自分をすきになること」と、述べられていたのに違和感があった。
(※うつヌケ=本作の中の定義では、うつ病の急性期状態から脱し症状がコントロールされ、日常生活が落ち着いた状態…という意味で使われている。)
確かに、うつ病を発症する人は自己肯定感が低いとか自分を責めがちなどの傾向があるものの、基本的な病態としては脳の神経伝達物質の問題によるもので、単なる気持ちの問題だけではないから。


こうして色々述べていると、私の中のもう一人が「自分が弱かったことでうつ病を発症したという事実を、脳というところに押し付け、逃げ、甘えているのではないか?」と言ってくる。
発症して1年経ち、復職して10ヶ月経ったのに、あんなにかかりつけの主治医にも言われているのに、何かあるたび・思うたび、自分を責めることをやめられない。
こんな厄介なことが、「自分をすきになること」だけで解放され楽になるのなら、どんなにいいかと思ってしまった。
八つ当たりかもしれない、愚痴のようになってしまい、すみません。


Ⅲ.感想のまとめ


一般的に誤解の多い疾患だけど、これを読むことで、そのイメージを少しでも変えるきっかけになればいいなと思いました。
病気の実体験を語る本などって、『こんなふうに不幸だった』『あんなに私は辛かった』と述べるにだけのものも多い中、"うつ病の原因や影響する因子→改善のための手がかり"まで本作で語られているのは凄くいいと思いました。


Ⅳ.私の考えるうつヌケ


1.うつ病は精神疾患の一つです。風邪を引いたり骨折したら病院にかかるように、まず通院して薬を飲んで治すものです。
なので、うつヌケする方法としてはまず通院とガイドラインに則った標準治療、薬物療法などを行うことだと思います。

2. 本書で提唱されている「自分自身を認めすきになる」という、認知の歪みや思考の癖を発見をすることは、1をベースに治療をし、ある程度落ち着いた時期になってからだと思います。
うつによる精神・身体症状で苦しんでいる真っ最中に、冷静に自分を振り返ることは、しようと思うだけでプレッシャーになるからです。
ただうつ病は、薬をのむだけでは治らないので、症状が落ち着き、回復期に入った段階になった時には、この本書に書かれていることはとても効果的なのではと思います。

1番しんどい時期、何もかも周囲全て真っ黒で変な音のする世界にいる時には、1ですら精一杯でした。
通院のために外へ出る、そのための身支度や移動を考える、それだけで物凄くプレッシャーでした。
なので、この本をはじめて手にとった時、2をやれなんて途方も無い遥か彼方に行けと言われるようなことだと感じ、「それができたら苦労しないよ」と感じ、ウザッと思ったのでしょう、あの頃の自分。笑

この本は、うつ病についてわかりやすくポップに書かれているいい本だと思います。
ただ、私は、ある程度つらい時期を過ぎて、少し落ち着いた時に読むのがおすすめかなと思います。
その時期に読めば、これからうつ病と上手く付き合うためのヒントになるのではとないでしょうか。



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