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映画「青の帰り道」に見る、ムーブオーバーの新たな可能性

以前レビューを書いた映画「青の帰り道」が、異例の盛り上がりを見せている。

昨年12月の公開時にはわずか2週間程度で上映が終了してしまったが、その後「この作品をもっと多くの人に届けたい」という強い想いの元、藤井監督や伊藤プロデューサーをはじめとする関係者のみなさんの尽力により、5月11日からアップリンク渋谷での再上映が決定。メインキャストとして出演していた横浜流星くんのブレイクも重なり、連日チケット完売の満席――当初予定していた2週間の上映期間が無期限延長となったのだ。

再上映が始まってから35日間、アップリンク渋谷では藤井監督自らブッキングしたゲストとのトークショーが毎日開催された。出演された役者さんや監督と縁のある方など多くの方が連日登壇し、藤井監督と「青の帰り道」に纏わるエピソードを語るという過去に例を見ない試み。私はこのトークショーつき上映に計5回参加させていただいたが、監督やキャストのみなさんがどんな想いで撮影に臨み、どのようにこの作品が作られていったのか深く知ることができ、「青の帰り道」という作品に対する思い入れがより強くなった。こんな経験はなかなかできることではない。

再上映決定から、連日のトークショー、そして映画情報サイト”cinefil"での連載…と、陣頭指揮を執っていらっしゃった藤井監督の行動力には頭が下がる。その行動が実を結び、再上映が全国各地に広がってきたのは本当に嬉しい。

このような行動は作品に対する愛情があってこそできることだと思うが、それだけでやり切れることではない。そのことはcinefilの連載最終回で藤井監督が書かれていたが、「映画業界の慣習を変えたい」というモチベーションも大きな力になっていたんだと思う。

映画や演劇の世界では、キャストやスタッフの手弁当で成り立っていることが未だにあるという話はよく聞く。しかしそんな悪しき慣習が、夢を持ってその世界に飛び込んだ者の希望を打ち砕いてしまうこともあり、同時にその業界自体の衰退に繋がる可能性もある。それを避けるためにも、先陣を切って改革に挑戦したいという藤井監督の想いには強く共感した。

実際今回の「青の帰り道」再上映では、トークショーという仕掛けだけでなく、SNSを効果的に活用して熱を広げていった印象がある。監督やオフィシャルアカウントからの発信を受け取るだけでなく、わたし自身もTwitterで観に行く度に感想をつぶやいたり、他の方の感想を読ませてもらったが、多くの情報が飛び交うことで「『青の帰り道』を観たい!」という人を増やし、熱を呼び起こしていっていた。

また再上映と同時期に公開され、横浜流星くんと清水くるみさんが共に出演しているという縁もあって、「チア男子!」の風間太樹監督と藤井監督によるトークショーも開催された。配給会社も違う作品で、しかも映画祭などではない興行の場でこのような企画が行われるのも、珍しいことなのではないだろうか。このような試みにチャレンジできるのも、20代と30代という若手の監督だからこそなのかもしれない。

一映画ファンとして、このような取り組みには大いに賛同したい。
自分たちの声が、ちゃんと作り手側の方に伝わっていると感じることができるのもうれしいものだ。事実、自分の感想ツイートをその作品の監督に【いいね】してもらえるなんて、数年前だったら考えられなかった。でもそんな風に観客の声を汲み取り、「観たい」という人の想いを実現させることもできたりする。それは作品を多くの人に届ける新しいやり方として、とても有効だと感じた。

藤井監督が挑戦しようとしている「改革」を、これからも応援していきたい。
そして上映が続く限り、「青の帰り道」を観にアップリンク渋谷に通いたいと思う。「青の帰り道」は間違いなく、わたしにとって人生で大切にしたい作品になった。この作品と出会えたことに感謝すると共に、これから更に多くの人にこの作品を観てもらえることを願いたい。

※藤井監督のcinefil連載に、わたしが書いた感想を掲載していただきました。「青の帰り道」のファンとして、感激の極みです。ありがとうございました。

藤井道人監督が緊急連載!「もう一度見たい!」が"熱く"拡がる!青春群像劇『青の帰り道』東京再上映が大反響!連載スタート 監督・藤井道人 #1

映画上映はまだ全国に広がる中、アップリンク渋谷トークイベント最終日『青の帰り道』再上映記念連載/監督・藤井道人 #35  

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