２週間ほど前の話。熊本に住んでいる妹が

「ゴルフって楽しいね。うちけっこう飛ばせるわー」

と家族LINEに送ってきた。どうやら友達と打ちっ放しのゴルフをやってきたらしい。すると父が、

「パパもゴルフ結構うまいよ！今度一緒にやろうか」と対抗している。

これは意外だった。なぜなら父がゴルフに行ったところなど僕は見たこともなかったし、家にゴルフクラブがあった記憶も全くないからだ。
しかし、僕のそんな心配をよそに、２人はゴルフの話題で盛り上がっている。

それから数日後に人生で初めてバッティングセンターというものに行ってみた。最近身の回りで思い通りにいかないことが多く、ストレスがたまっていて、それを解消しようと思い立ったのだ。
僕のイメージでは来る球、来る球を豪快にはじき返して、さながら大谷翔平の気分が味わえると期待していた。

そこのバッティングセンターは300円で22球出てくる仕組みになっており、スピードも自由に選べた。まあまずは肩慣らしにと90キロに設定する。
まもなく前方のマシンから勢いよくボールが飛び出してくる。僕はタイミングを合わせてバットをフルスイング。しかし空振り。
あれーおかしいなー　気を取り直して２球目。
また空振り。
３球目も空振り。４球目も空振り。まるでボールがバットを避けるようにぜんぜん当たらない。そして迎えた18球目。
ついに打球をはじき返すことに成功した。しかし当たった打球はふらふら～と力なくあがってポトリと落ちた。全然大谷っていう感じじゃない。結局僕は３球しかバットに当てることができなかった。ストレス解消のつもりが余計にストレスがたまる結果になった。
そして僕は今、バッティングで筋肉痛になった腕でこの文章を打っている。

その話を電話で家族にすると、妹が

「えーうち結構バッティングうまいよ。てかお兄ちゃんバッティングセンター1人で行ったの？」

「当たり前だろう。一体だれが僕のストレス解消に付き合ってくれるというんだい？」

「それでほとんど空振りってだっさー！お兄ちゃんってなんか可哀そうだね、、」

と同情されてしまう始末。するとそれを聞いていた父が会話に入ってきた。妹の発言をたしなめるのかと期待していると

「パパもバッティング結構うまいよ。昔よく行ったなー。今度みんなでやろうか！」

とどこかで聞いた台詞。どうやら父はゴルフもバッティングも上手いらしい。
そして「じゃあ今度みんなで勝負しよう！」と話はまとまった。

つづく