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『スターになった少女。vol.2』

ミュージカルスターを目指す
Oさんの話の続きです。

vol.1を読んでいない方は
良かったら読んでください。

Oさんは
スタッフの1人に
高校3年の時に
『悪性の筋肉種』と診断されたことを
我慢できずに伝えました。


その後、監督と1対1で
話し合いがもたれました。


悪性の筋肉種と診断されたこと。
足の切断まで迫られたが
一生に一度でいい。舞台で踊りたかった。
足が無くなったら踊れなくなると
医師に切断を断ったこと。
オーディション締め切り3日前に
受けると決めたと正直に伝えました。


さらに、

『あの抗がん剤の苦しさに比べたら稽古は楽しいだけで苦しいとは思いません。でも、ガンだと先生たちにバレたら辞めさせられると思ってそれだけが不安で……。でも、嘘ついて最終的に皆に迷惑をかけるのもいやで……。監督、お願いします。私ここで舞台に立てないのだったら死んでも死にきれません』

と懸命に訴えました。


監督は
真っ直ぐな瞳をみて
『この子にかけてみよう』
と思ったのです。

寄せ集めで半年だけ
舞台を共にする仲間が、
Oさんの思いを共有して
強く結ばれることになったと
監督は後に語っています。


スタッフ、出演者の中で
もしもに備えて万全の体制を整えて
舞台の幕が上がりました。


8月1日から
ミュージカルは開演しました。
1日2回の公演で100日間
Oさんは踊り続けました。
灼熱の野外ステージを
無事乗り切りました。
その間、
一度も彼女は弱音は吐かなかった。


技量的には
メンバーの中で
一番未熟だったかもしれない。
だが、命を削るがごとく
彼女が必死に踊る姿を
評価してくださる方もいたそうです。

ガンは治ったかと
思うほどの元気さに
監督は、
劇団四季の研修生に
なることを勧めました。
次の目標ができて喜んでいたが
病気は静かに進行していました。


体調が悪化した彼女は
入退院を繰り返します。
一進一退の状況の中でも
彼女はあきらめずに
努力し続けていました。



緊急入院を勧められる中、
劇団四季の次の舞台
『夢から醒めた夢』の幕が上がりました。

彼女はこの舞台を見るために
無理を言って入院日をずらしたのです。


この舞台の内容は

この世を精一杯生きた人が死んだ時に神様から与えられるパスポートは白く、高速ロケットで天上界のパラダイスへと行くことができる。いい加減に生きた人には黒のパスポートが与えられ地獄に落ちていく。

彼女は、この舞台に
自分自身を重ね合わせていたのでしょうか?


翌日に
入院してからも
彼女は屋上で発声練習をし
点滴をつけたままストレッチをして
家族をヒヤヒヤさせました。


彼女なら奇跡を起こすに違いない
という期待も虚しく
3週間後に
彼女は19歳の生涯を終えました。


棺の中には
100日間の舞台で
彼女が着ていた
赤とピンクのトゥシューズと
衣装がおさめられました。


彼女の葬儀が行われている時
彼女が出た舞台の監督さんは
大阪の空を飛行機で飛んでいました。


監督は
空に舞い上がる煙を見て
『Oさん、あなたは間違いなくホワイトパスポートがもらえる生き方でしたよ!』
とつぶやいたそうです。


ミュージカルスターを目指した
Oさんは
煌めく星になりました⭐️


彼女の残した生き様は
ミュージカルの舞台や
2時間テレビドラマとして
放映され感動を与えたのでした。


#66日ライラン
33日目

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