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『男の純情』

先週の金曜日のことです。
非常にシュールな場面に出くわしました。


仕事が終わり電車に乗って
帰っていた時のこと。
そこそこ混んでいましたが、 
運良く座れてnoteを見ていました。


次の駅に着いてしばらくすると、
隣の車両からまあまあの勢いで
歩いてくる男性がいました。
年の頃は30過ぎって感じかな。
フットボールアワーの岩尾に
似ています。
(ここから岩尾と呼びますね)


岩尾がスペース的には
余裕があるにも関わらず吊り革を持って
いる若い女性に向かって

『すみません、どいてください!』

とちょっと大きめの声で言いました。


女性は
吊り革を持つ反対の腕で
スマホをいじっていました。

「は〜?」

という感じで一瞥しました。
スペースがあるわけですから
そりゃ言うわと私は女性の立場で
見ていました。


岩尾は声をかけてからしばらく
立っていましたが横に避けて
歩いて行きました。

「はじめからそうしたらいいやん。
謎の行動やなぁ」

と見ていました。


一瞬、私の面白アンテナが
ピコンと反応しました♪
アンテナは1本しか立っていませんが。
皆さんもありますよね⁉️
こんな瞬間が。


なんかオモロい空気感があるのです。
70センチ進んだ先に知り合いが
いたようです。

『あー○○さん!』

と声をかけました。

声をかけられた側は30〜40歳
くらいの女性です。

スマホをいじっている手を止めて
一瞬頭を下げただけで話す気はない
ようです。


しかし、岩尾はしきりに話しています。
おっ!これはあの女性に

『ほの字やな?』

(溢れる昭和をお許しを)
と思って見ていました。


女性はスマホの手を止めず、
岩尾に顔を向けずに『うん』とか気のない返事をしています。

「可哀想に岩尾よ」

と私は思って見ていた。
ますます私の面白アンテナが2本、3本と
ピコンと立ってきます。


次の駅に着き、
だいぶ電車から降りました。
岩尾と女性は座席に座りました。
私のナナメ前に座っていると
思ってください。


すかさず岩尾は女性に

『今日は空いてるね〜』

と言うものの、
女性はスマホから目を離さずに

「うん」

と気のない返事をする。

「クゥ〜岩尾よ。いい加減に気づくんだ」

という私の心の声を聞かずに岩尾は
しゃべりまくる。
スマホから目を離さない女性。


シュールだ。
全く相手にされていないのに
必死に話す岩尾。
ちょっと涙がチョチョぎれそうに
なってきた私。


電車は次の駅に着いた。
岩尾は

『じゃあね〜』

と手を振って別れを告げようとするも
女性に向いてもらえないどころか
声も出してもらえない。


逆まつげの私の目からボロリと
一雫の涙がこぼれた。

「岩尾よ。男ってバカだなぁ」

と思っていると
ウソのような光景が見えた。


なんと岩尾は
ドアから出て女性の座っている
後ろ姿が見える窓の近くに来て
手を振っているのだ。
しかも笑顔で。


電車が動き出す。
彼女は相変わらずスマホをいじってる。
笑顔で手を振り続ける岩尾。
岩尾に気づいているのは私だけ。
岩尾の気持ちを知っているのも私だけ。


シュールだ。
シュールすぎる。


あの無邪気な岩尾の笑顔が
目に焼きついてしまった。


思いがいつか届くといいなぁ。
男の純情。


窓に映った景色からふと
相川七瀬の「恋心」が思い出した。

「恋心 ひそやかに今〜♪
夜にはぐれたままで〜♪
時の迷路まよいこんだ〜♪
愛を探してる〜♪」



最後まで読んでいただきありがとうございます。


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