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『以心伝心』と『量子もつれ』

自分以外の存在について、思いやりを持つことの大切さを、もうすぐ訪れるクリスマスを切掛にもう一度考えてもらいたいと子どもたちに伝えています。その時の物語を少し大人向けにしたためてみました。

科学と悟り

 私の年齢では、まだまだ人生の悟りを開くには経験が足らないために、毎日「様々な問題から解放されたい、解決したい、どうすれば悟りの境地に至れるのか?」など色々と考えてしまいますが、60歳を超える頃には年齢とともに自然と悩みも薄れ苦しみも少なくなっていくものだろうかと想像していたところ、禅宗に素晴らしいお話があったのでご紹介します。

 釈迦霊鷲山で大衆と弟子たちに説法をした時のことです。その中の一人から「悟りとは何か?」という問いかけがありました。その時釈迦は、金色の『蓮の花』をひねり、手にとって見せたのです。大衆も、また殆どの弟子たちもその意味を理解できずに沈黙していました。しかし、ただ1人弟子の迦葉(かしょう)だけがその意味を悟り微笑みました。それを見た釈迦は「これこそが『悟り』…迦葉よ、お前に言葉を使わずに心から心へ仏教の真理を託そう。」と言われ、『以心伝心』の四字熟語が誕生したと言われています。このことから、後年『拈華微笑(ねんげみしょう)』の故事としてこのお話が中国で創作されたそうです。

 さて、この話を読んだ時、私は一瞬で現代の「量子もつれではないか!」と思わずには居れませんでした。不思議なことに現代の『量子物理学』でもこの研究が盛んに行われています。

 

量子もつれとは?

 その名を『量子もつれ』と言います。2020年にノーベル物理学賞を受賞されたイギリス人物理学者・ロジャー・ペンローズ博士が唱える理論として近年、認知が進み、さまざまな角度から研究が始められていますが、大変難しくとても私などがご説明できるものでは有りませんので、ここでは誤解を恐れずに敢えてわかりやすくご良いご説明を抜粋させていただきご紹介いたします。

「互いに相関を持つ2つの量子はたとえ何キロも離れた距離にあっても同じ運命をともにし、更には距離だけでなく、時間的に離れていても影響し合う。」と言うことです。

 つまり、ある夫婦がいるとします。夫が「今夜の夕食はステーキが食べたいな〜」と思って帰宅してみると、夕食に妻がステーキを用意してくれていた。なんて言うことがステーキでなくても様々な場面であると言うことです。

 夫婦の関係のみならず、恋人・親子・同僚・親友etc…。私達は生まれてからたくさんの大切な人と関わりを持ち、時には離別も経験しながらも人生を歩みます。そのかけがえのない経験を周りの大切な人と共に乗り越えながら「互いに思いが繋がる」ことを現在の科学では証明され始めています。

 大切な人に時空を超えて思いを繋げること。これが釈迦が私たちに伝えたかった「以心伝心」であると私は考えます。

 しかし、ここまで来てふと思ったのです。釈迦はなぜ『蓮の花』を手に取ったのでしょうか?

 『蓮の花』はご存知のように「泥より出でて、泥に染まらず」と言われますが、私たちの『悟り』への道も「この蓮の花のように生きることを心がけよ」と言われているような気がしました。

 『以心伝心』『量子もつれ』のお話のおかげでくたびれかけていた私の心も、今日も・明日も・明後日も、難問(泥)から逃げずに頑張っていけそうな気がします。


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