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【再掲載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫 (11)

前話

「さぁ。エミーリエ。あんまり泣いていると朝食が美味しくなくなるよ」
「そうね。きっと私のために一生懸命作ってくれたのだものね」
 そう言いながら涙を拭う。
「今朝は慣れてもらおうと思ってこの国の朝食にしたよ。変わったパンだろうから期待してて」
「そんなにすごいパンなの?」
「君にとってはね。さぁ。行こう」
 クルトが手を引く。すぐに食卓の間に入った。
 フリーデが控えている。
「フリーデは食べないの?」
「私はまかないを頂きましたので」
「まかないは明日からバツね。ここで一緒に食べて」
 私のまたのわがままにフリーデが困る。
「お姉さんになって、って言ったでしょ」
「それでもこの、お仕えできる喜びを捨てるわけには」
「そんなに嬉しいの?」
 戸惑いながら聞くとフリーデは満開の笑顔がはじけた。
「もう。負けたわ。でも昼食か夕食は一緒よ。クルトが何時もいるとは限らないんだから」
 私が文句を言うとそれじゃぁ、と控えめにフリーデが言う。
「クルト様のおられないときなら・・・」
「ちょっと。俺、追い出されるじゃないか」
「あーら。よく解ってるわね」
 にっこり笑う。
「誰だ。さっき母御を思い出して泣いていた姫は」
「誰かしらねー」
 すっとぼける。フリーデが心配そうに私を見る。
「だた、お母様の声を思い出しちゃったのよ。つい、ね」
「そうでございましたか。それは・・・」
「だから敬語は・・・!」
「お仕えしている間は変わりません。お食事を一緒に取るときだけです」
「じゃ、クルト追いだそーっと」
「おひっ」
 そこへまた姉と弟が入ってくる。手にはそれぞれお盆を持っている。
「エミーリエ! クルトと二人じゃさみしいでしょ。姉上が来たわよ」
「姉上、僕が言ったから来たんでしょ? 言わなかったらまだ寝てくせに」
「チビはだまってなさい!」
「チビじゃないもん!」
「チビはチビよ!」
 口論が続きそうなので間に入る。
「で、食べないの?」
「食べる!」
 二人が食卓におぼんを乗せる。ヴィルヘルムの方は私が手助けする。そうこうしている間にフリーデは二人の飲み物を用意してきた。好みまで把握してるみたいだった。さすがはお仕えするだけの一族。しっかり他の人でも通用するようにしつけられたのね。私なんて行儀作法なんて豚に真珠ものだったわ。
「フリーデ偉いわね。私なんてなーんにも覚えてこなかったわ」
「馬には乗れるだろう?」
「ええ。あとは少々剣を・・・」
「だったね。その時の剣は重かっただろうね。今はものすごく軽いよ。今度持って見るといいよ。俺の剣を貸してあげるよ」
「クルト様! 姫様にそのような危険な事を!」
 珍しくフリーデが突っ込む。
「一応、王子の妻だからね。いつ何が起こるか解らないよ」
「ですが!」
 フリーデが引き下がらない。珍しいものを見てしまったわ。ああ、それより間取り持たなきゃ。
「大丈夫。剣持って人殺しなんてしないから。あの時は戦があってね。女性でも持つしか無かったのよ。母は弓の名手だったわ」
「そんな・・・」
「そんな悲しそうな顔をしないで。この飲みもの美味しいわね。もう一杯作ってくれる?」
 アールグレイというアイスティーだよ、と用意してもらっている間にクルトが耳打ちする。そう、とにこやかに肯く。クルトの優しさに惹かれて始めている自分がそこにいた。たった出会って二日目にして。母も父もそうだったからきっと血筋ね。私はにこにこと笑顔の大安売りをしていた。この国には危険など全くないと信じて・・・。


あとがき
ようやく、コピペできるぐらいには復活しました。どうやら夏風邪です。この間処方をもらいに行った時にもらってきたらしいです。今年の夏風邪は長いらしいのでやばいです。それでも、ここまで元気になれたのは、飼っているコリさん達にご飯をあげないと、と奮起ができたからです。テトラさんは一日一回なので明日ですが、あと、ミニシクラメンさんが枯れかけていてよけい気力がはいりました。執筆はできそうにもないですが、昔の作品をコピペするぐらいにはできます。あと二日休みがあるのでその間に養生します。ってまた古い言葉だわ💦。

「風響の守護者と見習い賢者の妹」、「星彩の運命と情熱」、執筆再開できるようになりましたならお知らせします。その間に何かの話数を入れておくべきかしら? 「緑の魔法と恋の奇跡」もあるし。ちょっとさぐってきます。

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