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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(51)

前話

「エミーリエ。起きてる?」
 まだ日も登らないうちからクルトが扉の向こうにいた。私は楽しみにしていたこともあってしっかり目が覚めていた。いつの日か、クルトが朝焼けの素晴らしい所があると言っていたから、きっと日が昇る前に迎えに来ると思っていた。その通りだった。乗馬服にすでに着替えていた私は扉をあける。
「料理長から預かってきたよ。ランチ」
「ありがとう! クルト。私の思い付きだけだったのに。フリーデが乗馬服を着せてくれて、休憩を出してヴィーの二日酔いの看病に行かせたけれど大丈夫かしら」
 大丈夫、とクルトは太鼓判を押す。
「悪さができないほどの二日酔いだよ。あれは明日も引きずるな」
 まぁ、と私は昨夜の崩れてしまったヴィルヘルムを思い出す。
「そういうことで姉上の縁談の打ち合わせは明日以降。今日は思いっきり楽しもう。婚礼準備か姉の縁談かなんて息が詰まっちゃうよ」
「そういう気づかいをしてくれるクルトが大好きよ。さ、行きましょ」
 私は大胆にも腕を絡めて一緒に歩く。
「男泣かせだな。エミーリエは」
「それがわかってやってるのよ」
「意地悪」
「どうとでも」
 ちぇ、とクルトが形だけ拗ねて私たちはまだ夜明け前の宮殿の中で小さく笑いあった。

 厩へ行くともう、二頭の馬が用意されていた。花嫁修業の一環で乗馬の練習もあった。その時に乗っていたおとなしいアリシア号に今日は乗るみたい。もう一頭はクルトの幼いときから乗っているポーラ号。私はひょいっといつもの要領でアリシア号に乗るとクルトとポーラ号の後を追った。
 いつしか、私の眠っていた屋敷のある森まで来ていた。
「この森そんなに大きいの?」
 一度休憩に馬に水を飲ませて休憩しているときに私はクルトに聞く。
「一番の手つかずの自然だからね。自然保護区なんだよ。簡単に人は入れない。俺は顔パス」
 ふふん、と偉そうに言うクルトが面白かった。
「顔パスってどれだけ来たの」
「山ほど」
「いたずらしかけてないでしょうね」
「さぁ?」
「さぁ?」 
 私が追求しようとするとクルトは馬に乗って走り出していた。
「ご来光が見れないよ!」
「ちょっと! 待って!」
 私も乗るとクルトの後に続いた。

「セーフ! 見て。エミーリエ! 今から日が昇るよ」
 森を突っ切ったその先に見晴らしのいい丘陵地帯があった。薄紫に染まった空に太陽が顔を出す。
「素敵」
 この魔法のような時間を壊したくなくてそっという。
「もう少し季節が進めば、雲海だって見られるよ」
「雲海?」
「そう。この太陽の下に雲の海がたくさんできるんだ。その頃には結婚できてるかな? ホントおまつり騒ぎだよね」
「一番騒いでいるのどなた?」
「意地悪。さ、ポーラ、そこで休憩していてくれ。アリシア号の綱も結んでおこう」
「ランチまで時間が山程あるわ。何するの?」
「そうか。ランチだったか。朝食でいいんじゃない? おなかすいてないの?」
 クルトが言うとおなかが返事をするようにきゅーくるると鳴る。恥ずかしい。乙女なのに。
 真っ赤な私に向かってクルトは言う。
「健康的ってことだよ。さぁ、体が冷えているだろう? ハーブティーもあるんだ。一緒に飲もう」
「クルトあなたってどこまで優しいの?」
「どこまでも……。エミーリエにはね。ヴィーには当分厳しい兄。きっと二日酔いで済まないよ」
「私もワイン一本は飲めないわ。よく中毒を起こさなかったこと」
 普通の子供ならどうなっていただろうか。ヴィルヘルムの魔力が守っていたに違いない。
 朝食になったランチを広げて食べていると、か細い子猫の声がした。
「今? 猫の鳴き声聞こえなかった」
「いや? あ。あそこにいる」
 そっと木陰でみゃーみゃー鳴いている子猫がいた。
「母猫とはぐれたのかな? こんなところに一匹じゃ危ない」
「そうね。放っておけないわね。おいで。猫ちゃん。新しいママよ」
 そっと近づいて抱き上げる。冷え切った体に危機感を覚える。
「かなりあぶないわ。毛布か何かある?」
「これ」
 クルトから受け取って毛布にくるむ。だけど鳴き声はとまらない。
「おなかがすいているんだろうね。パンくずなら食べられるかな?」
 クルトがそっとちぎったパンのかけらを口元へもっていくとパクっと加えてもぐもぐしていた。
「ねぇ。この子城に連れて行ってはだめ?
「いいよ。わが子の前に子猫の育児か。楽しみだ。エミーリエ、ポーラ号でこの子を抱きしめていてくれる? アリシア号は後ろをついてくるから」
「わかった。この子の命が最優先ね」
「じゃ、戻ろう。朝食はあとで摂ろう」
「ええ。あなたの名前を何にしましょうかね。子猫ちゃん」
 猫を抱えていたのでクルトに引っ張ってもらいながら馬に乗る。こうしてやってきて早々とんぼ返りした私とクルトだった。


あとがき

勝った勝った。阪神が勝った~。逆転劇。高血糖で倒れていたのも吹っ飛びました。そういや、子猫ネタが最近なかったな。あとで、作ろうっと。今、どこで止まっていたか忘れている。今は編集作業をしているので、(今日はできなかった)また見直して執筆したいです。日本シリーズは次、明後日だそうで。スケジュール帳にいれちゃったよ。訂正~。今日は仕事の疲れか昨日の暴飲暴食か一日寝てました。一応買い物にも行ったのですが。食欲もなくて、朝から嘔気が止まらなくて高血糖か薬の副作用で倒れてました。打つと効果はありますが、副作用が勤務できないほどひどくなるので困ってます。とにかく、勝った。絶望的に見てたので八回の攻撃にはびっくり。おかげで目が覚めました。これから、最後の眠り姫の書いてあるところ見ようかな。いつも十時過ぎに終わるので(試合が)今日は余裕があります。森下選手のヒーローインタビューが聞けなかった。でも湯浅選手おかりなさいー。と阪神ネタで終わるあとがきでした。

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